日焼け止めを、成分で選び分ける

日焼け止めの成分 散乱剤 角層の外層まで 吸収剤 血中で検出 種類によって、体への入り方が逆

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日焼け止めの成分は、種類によって体への入り方が逆です。

酸化チタン・酸化亜鉛(紫外線散乱剤)は、健康な皮膚でも傷んだ皮膚でも、角層の外層より奥へは到達せず、全身の循環にも達しなかった——これが、ヒトと動物の研究の大半が示している結果です1。

一方、紫外線吸収剤は血中に出ます。米国FDAの試験で、オキシベンゾンの最大血漿中濃度は258.1 ng/mL。FDAが基準に置いている0.5 ng/mLの、500倍を超えています2。

だから確かめる場所は決まっています。パッケージの成分表示の、どちらが書いてあるか。

0.5 ng/mL は、「危険の線」ではない

先に、この数字の意味をはっきりさせます。0.5 ng/mLを超えたことは、害があるという意味ではありません。

FDAがこの値を置いた理由は、単回投与後の血漿中濃度がこれ以下であれば、おおよその発がんリスクが10万人に1人未満であることを示す基準として選ばれたからです。これを下回れば、追加の安全性試験の一部を免除できる可能性がある——そういう線です2。

つまり超えたことが意味するのは、「追加の安全性試験が必要になる」ということです。危険だと分かったのではありません。調べる必要がある状態と、調べて問題が見つかった状態は別です。

FDAが実際にやった試験

2019年1月から2月に、48人の健康な成人を対象に行われた無作為化試験です2。

試験の条件
内容
参加者 48人(平均38.7歳、女性24人)。44人が完了
製剤 ローション/エアロゾールスプレー/非エアロゾールスプレー/ポンプスプレーの4種
塗布量 2 mg/cm²を体表面積の75%に
回数 1日目に1回、2〜4日目に2時間おきに4回
採血 21日間で34回

結果です。6成分すべての最大血漿中濃度が0.5 ng/mLを超え、しかも1日目の1回の塗布ですでに超えていました2。

日焼け止めの有効成分の最大血漿中濃度。オキシベンゾン258.1 ng/mLに対し、FDAの閾値は0.5 ng/mL
ローション使用時の最大血漿中濃度(幾何平均)。オキシベンゾンだけが桁違いに高くなっています2。
最大血漿中濃度(幾何平均、ng/mL)2
成分 ローション エアロゾール ポンプ
オキシベンゾン 258.1 180.1 —
ホモサレート — 23.1 13.9
オクトクリレン 7.8 6.6 —
オクチノキサート — — 5.2
アボベンゾン 7.1 3.5 3.3
オクチサレート — 5.1 4.6

オキシベンゾンだけが、桁が違います。他の5成分が数ng/mLから23ng/mLの範囲にあるのに対し、258.1。

なお、最も多かった有害事象は発疹で、14人に出ています2。

散乱剤のほうは、逆の結果が出ている

酸化チタンについては、まとまったレビューがあります1。

結論はこうです。ヒトまたは動物で行われた研究の大半が、ナノ酸化チタンは角層の外層より奥の生きた細胞まで浸透せず、全身の循環にも達しなかったことを示している。健康な皮膚でも、傷んだ皮膚でも同じだった。

そしてEUの消費者安全科学委員会(SCCS)は、ナノ酸化チタンを皮膚感作性なし、刺激性は軽度またはなしとし、経皮曝露後の発がん性・変異原性・生殖毒性を示す根拠はないと結論しています。日焼け止めに25%までの濃度で使う場合、皮膚に塗る限り健康リスクはないとされています1。

リップクリームに含まれる分を口から摂ってしまう場合についても、経口曝露後の吸収と毒性は限定的で、健康影響は予想されないとされています1。

ただし、このレビューには利益相反があります。著者の1人は化粧品企業の所属で、資金提供も同社から出ています。誰が資金を出したかは、結論の是非とは別に、確かめておく情報です。SCCSの判断そのものは、独立した規制機関のものです。

ただし、皮膚ではなく肺の話が残る

SCCSが1つだけ、はっきりと推奨していないことがあります。

「消費者の肺が吸入により曝露されうる製剤(スプレー製品およびパウダー)へのナノ酸化チタンの使用を推奨しない」1。動物で肺の炎症が報告されているためです。EUの化粧品規則は2016年に、肺への曝露につながりうる製品を除いてナノ酸化チタンをUVフィルターとして認可しました1。

ここは、皮膚から入るかどうかとは別の経路の話です。塗るぶんには問題ないとされているものが、吸い込む形になると評価が変わる。

この構造は金属の入口を見るときと同じです。同じ物質でも、経口・経皮・経気道で扱いが分かれます。

成分表示の、どこを見るか

日本の化粧品は全成分表示が義務づけられているので、見れば分かります。

表示名称と、どちらか
表示名称 種類
酸化チタン、酸化亜鉛 散乱剤(無機)
オキシベンゾン-3 吸収剤(有機)
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 吸収剤(=オクチノキサート)
t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 吸収剤(=アボベンゾン)
オクトクリレン、サリチル酸エチルヘキシル、ホモサレート 吸収剤

「ノンケミカル」「紫外線吸収剤不使用」と書かれているものは、散乱剤だけで作られています。

そしてスプレータイプを選ぶなら、散乱剤ではなく吸収剤のほうに理由があります。SCCSの推奨がナノ酸化チタンのスプレーに向けられているためです。逆に塗るタイプなら、散乱剤の側に浸透の報告がありません。

日焼け止めをやめる、という選択肢はあるか

ここははっきり書いておきます。FDAの論文自身が、結論の最後にこう書いています。

These findings do not indicate that individuals should refrain from the use of sunscreen.
(これらの知見は、個人が日焼け止めの使用を控えるべきであることを示すものではない)2

紫外線が皮膚がんと日焼けを起こすことは確立していて、酸化チタンのUVフィルターとしての有効性もそこで評価されています1。入る量をゼロにするために塗らない、という判断は、別のリスクを取る判断です。

数字を見るときは、何と比べているかを一緒に見ます。ここで比べる相手は「塗らなかった場合」であって、「何も起きない状態」ではありません。

入口の中で、この項目がどこにいるか

検査の蓄積の欄には、入口の1つとして化粧品・日焼け止めが挙げられています。ここまでを踏まえると、位置づけがはっきりします。

入口としての位置
分かっていること
散乱剤(酸化チタン・酸化亜鉛) 塗る形では、角層より奥へ入ったという報告が大半ではない
吸収剤(オキシベンゾンほか) 血中に出る。量も測られている。追加の安全性試験は進行中
スプレー・パウダー 肺への吸入という別経路。EUは推奨していない

つまり「化粧品から金属が入る」という懸念の向きと、実際に体内で測られている成分は、一致していません。入っていることが数字で確かめられているのは、金属ではなく有機の吸収剤のほうです。

これは入口ごとに、公的な基準や調査の細かさがまったく違うという話の、もう1つの例になります。心配の総量を、入口に等分に配る理由はありません。

参考文献・参考資料

  1. Dréno B, Alexis A, Chuberre B, Marinovich M. Safety of titanium dioxide nanoparticles in cosmetics. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology. 2019;33(Suppl 7):34-46. doi:10.1111/jdv.15943(著者の1人は化粧品企業に所属し、同社から資金提供を受けています。引用した欧州消費者安全科学委員会(SCCS)の判断は、独立した規制機関によるものです) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31588611/
  2. Matta MK, Florian J, Zusterzeel R, et al. Effect of Sunscreen Application on Plasma Concentration of Sunscreen Active Ingredients: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2020;323(3):256-267. doi:10.1001/jama.2019.20747(米国FDA 医薬品評価研究センターによる試験。ClinicalTrials.gov: NCT03582215) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31961417/

本記事は公開された研究と規制機関の判断の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品の効果・安全性を示すものでも、使用を勧めるものでも、中止を勧めるものでもありません。血漿中濃度が測定されたことは、健康影響が確認されたことを意味しません。皮膚の疾患で治療中の方、乳幼児に使用する場合は、個別の指示が優先されます。

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