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  • バイオレゾナンスとは? ― 体の「周波数」から健康を見るという考え方

    バイオレゾナンスとは? ― 体の「周波数」から健康を見るという考え方

    バイオレゾナンスは、体がさまざまな周波数にどう反応するかを測り、その違いから体の状態を評価します。

    聞き慣れない言葉なので、どこまでが確かめられた話なのかも分かりにくくなっています。何を測っている手法で、研究はどこまで進んでいるのかを順に整理します。

    バイオレゾナンスとは?

    バイオレゾナンスは、生体と周波数との共鳴・反応を捉え、体の状態を評価する手法です。

    「bio」は生体、「resonance」は共鳴を意味します。

    共鳴とは、同じ周波数を持つもの同士が反応し合う現象です。

    たとえば、同じ高さの音を持つ2本の音叉を並べ、一方を鳴らすと、触れていないもう一方の音叉も振動します。

    同じ周波数では共鳴し、違う周波数では反応しないことを示す音叉の比較図

    バイオレゾナンスでは、この共鳴という現象を生体の評価に応用します。

    バイオレゾナンスの研究は、20世紀前半の「生体と周波数」の研究を背景に発展し、1970年代にドイツで現在につながる機器や測定法が開発されました6。

    そこから長年にわたり、臓器や組織、物質ごとの反応パターンが蓄積され、現在の機器では、それらを基準データとして利用します。

    たとえば「正常な肝臓」に対応づけられた周波数を生体に与え、どの程度共鳴・反応するかを見ます。

    反応が基準に近ければ、その項目は正常に近い状態として評価する。反応がずれていれば、その項目に乱れがある可能性として評価する。

    正常な肝臓の基準周波数を当てたときの反応の違いを示した図

    つまりバイオレゾナンスは、「どの周波数に、どう反応するか」を比較して体の状態を見ています。

    たとえば肝臓だけでなく、腎臓や腸、特定の栄養素や物質など、機器に登録されたさまざまな基準周波数に対する反応を見ていきます。

    そもそも「周波数」とは何か

    周波数とは、振動が1秒間に何回くり返されるかを表す数字です。

    音、光、電波だけでなく、物質をつくる分子や原子にも振動があります。

    そして、その振動のしかたは物質や構造によって異なります。

    物質をつくる分子や原子が振動し、それぞれ異なる周波数を持つことを示した図

    人の体も例外ではありません。

    心臓では電気信号によって拍動が起こり、脳や筋肉でも電気的な活動が続いています。

    そのため医療では、

    • 心臓の電気活動 → 心電図
    • 脳の電気活動 → 脳波
    • 筋肉の電気活動 → 筋電図

    として、体から出る信号を日常的に測定しています。

    つまり、体を「電気的な信号や振動」から見ること自体は、特別な発想ではありません。

    バイオレゾナンスは、ここからさらに、臓器や物質に対応づけられた周波数への反応を利用して、体の状態を評価します。

    一般的な医療と何が違う?

    血液検査、CT・MRI、診察などで異常を見つけ、病名をつけ、薬や手術などで治療する。これが現在の一般的な医療です。

    一方、バイオレゾナンスは、病気になる前の体の乱れを評価し、未病・予防に活かします。

    つまり、

    「病気を見つけて治す」のが一般的な医療。
    「病気になる前に整える」のが、予防・未病の視点を持つバイオレゾナンス。

    バイオレゾナンスでは何を見る?

    バイオレゾナンスが見ようとするのは、病名ではなく、体の傾向です。具体的には、どこに負担がかかっているか、何に反応しやすいか、どの機能が弱りやすいかを見ていきます。

    たとえば、次のような項目が扱われます。

    • 食品や物質への反応
    • 臓器・器官ごとの状態
    • 栄養の過不足
    • 重金属や化学物質など外から入る負担
    • ストレスや自律神経の状態
    • 腸・肝臓・腎臓など、排出に関わる機能の傾向

    つまり、病気を診断するというより、病気になる前の乱れや負担をとらえ、予防や未病の段階で整えるために使うものです。

    なお、何を項目として出すかは機器によって異なります。同じ「バイオレゾナンス」という名前でも、表示される内容がまったく同じとは限りません。

    研究ではどこまで分かっている?

    人を対象にした研究はあります。ただし、結果は一方向ではありません。

    効果を確認できなかった研究があります。アトピー性皮膚炎の子ども32人を対象にした試験では、本物と見分けのつかない偽の機器を使った群と比べて、差は出ませんでした1。患者にも評価者にも、どちらの機器かを伏せて行われた試験です。

    一方、良い結果を報告した研究もあります。うつ病の患者140人を対象にした研究では、バイオレゾナンスを受けた群でうつの評価点が下がっていました2。ただしこの研究では、参加者をくじ引きで振り分けておらず、偽の機器との比較も行われていません。

    診断への応用になると、評価はさらに厳しくなります。食物アレルギーの検査法をまとめた総説は、皮膚の電気抵抗を測るタイプの検査を「証明されていない検査」に分類し、必要のない食事制限につながりうると指摘しています3。

    確認されていないことを、
    確認されたかのように言うのは、
    また別の問題です。

    米国FDAは2022年、バイオレゾナンスをうたう機器を「がん・糖尿病・脳卒中・アルツハイマー病を治療できる」「60秒で全身をスキャンして原因が分かる」として販売していた企業に、警告を出しています4。対象になったのは、特定の企業による具体的な医療上の主張です。バイオレゾナンスという考え方そのものが否定されたわけではありません。

    整理すると、こうなります。研究はゼロではありません。一方で、標準的な医療検査と同じ精度で診断や治療に使えると言えるだけの根拠は、現時点ではそろっていません。同じ「研究がある」でも段が違うことは、何をもって「エビデンスがある」と言うかで整理しています。

    では、なぜこの考え方に注目するのか

    体から読み取れる情報を増やすことに、意味があるからです。

    現代の医学は、血液、画像、組織、遺伝子など、物質として測れる情報を中心に発展してきました。この方向で分かることは、いまも増え続けています。

    一方で、人の体には電気的な活動もあります。心電図も脳波も、そのごく一部を切り取ったものです。

    生体が持つ電気的な情報を、
    いまより広く健康の評価に使えないか。

    バイオレゾナンスは、この問いに向き合っている領域のひとつです。統合医療が、標準的な医療と他の方法をどう組み合わせるかを考える枠組みであるのと同じで、ここでも問われているのは「代わりになるか」ではなく「何を足せるか」です。

    RESONA-LABではどう使っている?

    RESONA-LABは、病気を見つけるための検査ではありません。日々の食事や生活を見直すための材料として使っています。

    レポートは4つの欄に分かれています。不耐性、体内蓄積、解毒機能(腸・肝・腎)、不足栄養素です。

    この4つは、別々の採点ではありません。入ってくるものと、出す力という1つの問いを、別の角度から見たものです。

    結果に出た項目が医学的に何を示すのかは、レポートにも、この記事にも書いていません。書けるのは、しばらく減らしてみて体調がどう変わるかを試す、その順番の手がかりまでです。

    バイオレゾナンスをどう見るか

    整理すると、4つです。

    • 人の体に電気的な活動があること自体は、医学でも扱われている
    • バイオレゾナンスは、それをもっと広く健康の評価に使おうとする考え方
    • いまは研究の途中で、標準的な医学検査と同じ位置づけではない
    • だから、確立した医療と混ぜずに、別の軸として扱う

    確立した検査の代わりではなく、
    別の角度から体を見るための一つの軸。

    参考文献・参考資料

    1. Schöni MH, Nikolaizik WH, Schöni-Affolter F. Efficacy trial of bioresonance in children with atopic dermatitis. Int Arch Allergy Immunol. 1997;112(3):238-246. PubMed 9066509
      1.5〜16.8歳の入院中の小児32人を、実機群と偽機(シャム)群にランダムに割り付けた二重盲検並行群間試験。皮膚症状スコア、かゆみ・睡眠スコア、アレルギーの血球活性化マーカーで評価。両群とも改善したが、バイオレゾナンスによる上乗せの効果は認められなかった
    2. Mureşan D, Salcudean A, Sabău DC, Bodo CR, Gabos Grecu I. Bioresonance therapy may treat depression. J Med Life. 2021;14(2):238-242. PubMed 34104247
      うつ病患者140人を、バイオレゾナンス単独40人・抗うつ薬併用40人・抗うつ薬単独60人の3群に分け、5週間後のハミルトンうつ病評価尺度を比較。3群とも点数は下がり、群間の差は統計的に有意(p=0.0001)。ランダム割り付けではなく、偽機との比較(盲検)も行われていない単施設の研究
    3. Hammond C, Lieberman JA. Unproven Diagnostic Tests for Food Allergy. Immunol Allergy Clin North Am. 2018;38(1):153-163. PubMed 29132671
      食物アレルギーの診断における標準は経口負荷試験で、血清IgE検査と皮膚プリックテストが代替として認められる、としたうえで、IgG検査・電気皮膚検査(electrodermal testing)・細胞毒性検査・誘発中和法・応用キネシオロジーを「大部分が証明されていない」検査に分類し、不要な除去食につながりうると指摘している
    4. U.S. Food and Drug Administration. Warning Letter: RoyalVibe Health Ltd.(2022年11月18日)FDA Warning Letter 639553 / FDA Safety Communication「Do Not Use RoyalVibe Health, CellQuicken, or Well-Being Reality Ultrasound Medical Devices」FDA
      同社の機器が、がん・1型/2型糖尿病・脳卒中・アルツハイマー病などの治療をうたい、60秒で全身をスキャンして原因を特定できるとして販売されていた点を問題とし、510(k)クリアランスまたはPMAを受けていない医療機器にあたると指摘。警告の対象は、この企業の製品と表示された効能
    5. Lewith GT. Can we evaluate electrodermal testing? Complement Ther Med. 2003;11(2):115-117. PubMed 12801498
      電気皮膚検査をアレルギー検査として用いることについて、根拠は限られており、しばしば誤って提示されているとしたうえで、機器ごとの信頼性・妥当性をどう検証すべきかを論じている
    6. Med-Tronik GmbH(MORA機器の製造元)会社案内 https://med-tronik.de/en/our-company/about-us/
      医師 Franz Morell と Erich Rasche が1970年代前半からバイオレゾナンスの手法を検討し、1977年にドイツで MORA-Therapy を開発した、としている。製造元自身による沿革の記述

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。バイオレゾナンス検査の結果は、病気の診断を示すものではありません。症状がある場合や治療を受けている場合は、その指示が優先されます。

  • サラダ油とは?中身・健康面・選び方

    サラダ油とは?中身・健康面・選び方

    「サラダ油は体に悪い」と聞くことがあります。でも、そもそもサラダ油とは何なのでしょうか。実は、特定のひとつの油を指す名前ではありません。

    何からつくられているのか、なぜこれほど家庭に普及したのか。そこから見ていくと、健康面でどう考えればいいのかも分かりやすくなります。

    サラダ油とは何か

    サラダ油は、オリーブ油や米油のように、原料そのものを表した名前ではありません。

    なたね、大豆、とうもろこし、こめぬか、ごまなどからつくられた植物油のうち、一定の基準を満たしたものが「サラダ油」と呼ばれます1。

    サラダ油の原料例(なたね、大豆、とうもろこし、こめぬか、ごま)

    「サラダ油」という植物があるわけではありません。

    実際の商品を見ると、「食用なたね油」「食用大豆油」など、使われている原料はそれぞれ違います。

    なぜサラダ油はこれほど普及したのか

    サラダ油が家庭に広く普及したのは、健康面で特別な油だったからではありません。

    価格を抑えやすく、クセが少なく、さまざまな料理に使いやすかったことが大きな理由です。

    さらに、家庭用の油に使われるなたねは、そのほとんどが輸入です。農林水産省の資料によると、油をしぼるためのなたねは年間200万トン程度が供給されていて、国産はそのうち0.1〜0.2%。主な輸入先はカナダと豪州です2。

    日本の油糧用なたねの供給量と、カナダ・豪州を中心とした輸入先

    海外産だから健康に悪い、という意味ではありません。重要なのは、大量に調達できる原料を使うことで、価格を抑えながら安定して供給しやすいということです。

    複数の植物油を組み合わせた商品もあります。こうした価格・供給・使いやすさのバランスによって、サラダ油は家庭の定番として広く使われるようになりました。

    キャノーラ油とサラダ油は違うのか

    スーパーでは「サラダ油」と並んで「キャノーラ油」もよく見かけます。この2つは、まったく別のものではありません。

    キャノーラ油は、なたねからつくられる油です。なたねの中でも、油の成分を改良した品種がキャノーラと呼ばれています。規格の上では食用なたね油にあたり、基準を満たせばサラダ油としても売られます1。

    サラダ油は大きなカテゴリー。
    キャノーラ油はその中の具体的な油のひとつ。

    健康面では何を見ればいいのか

    健康面で油を見るときは、油の名前ではなく、中身を見ます。

    中身は原料によって変わります。その中身をつくっているのが、脂肪酸です。脂肪酸とは、油をつくっている主な成分のことです。

    脂肪酸は大きく、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。バターや脂身の多い肉に多いのが飽和脂肪酸、植物油や魚に多いのが不飽和脂肪酸です。これまでの研究では、飽和脂肪酸の一部を不飽和脂肪酸に置き換えることが、心臓や血管の健康に有利だと示されています3。

    飽和脂肪酸の一部を不飽和脂肪酸に置き換えることで、心臓や血管の健康に有利とされることを示した図

    米油やオリーブ油と比べるとどうなのか

    では、サラダ油の原料になる油は、米油やオリーブ油と比べてどう違うのでしょうか。

    まずは、健康との関係がよく研究されている脂肪酸の構成を比べてみます。

    なたね油・大豆油・とうもろこし油・米油・オリーブ油の脂肪酸構成比を比べたグラフ

    比べてみると、サラダ油の原料としてよく使われるなたね油は、米油より飽和脂肪酸が少なく、不飽和脂肪酸の割合は高めです。

    一方、大豆油やとうもろこし油は、なたね油やオリーブ油とは脂肪酸のバランスがかなり違います。

    つまり、「サラダ油」という名前だけでは、中身の特徴は分かりません。

    実際に選ぶときは、何の油が使われているか、その原料がどこ産なのかを見ます。

    選ぶときは、裏面を見る

    スーパーで迷ったら、まず商品の裏面を確認します。

    見るのは主に2つです。

    原材料名

    「食用なたね油」「食用大豆油」「食用とうもろこし油」など、実際に何の油が使われているかを確認します。

    原料原産地表示

    表示されている場合は、原料がどこで作られたものかも確認できます。

    健康を意識して選ぶなら、「サラダ油かどうか」ではなく、「何の油で、どこ由来なのか」を見る。

    これだけでも、選び方はかなり変わります。

    参考文献・参考資料

    1. 農林水産省「日本農林規格 食用植物油脂」JAS 0523:2024 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
      「サラダ油」は油の名前ではなく等級名。原料ごとに「なたねサラダ油」「大豆サラダ油」などがある。3.17 食用調合油は「2以上の油を調合した油」、3.8 食用なたね油は「あぶらな又はからしなの種子から採取した油」
    2. 農林水産省 農産局地域作物課「なたねをめぐる状況について」令和8年2月 https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/attach/pdf/soba.natane-15.pdf
      油糧用なたねの供給量は年間200万トン程度で、ほとんどを輸入に依存。国産は3〜4千トン程度(供給量の0.1〜0.2%)。主な輸入先はカナダ及び豪州
    3. 2026 Dietary Guidance to Improve Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. doi:10.1161/CIR.0000000000001435
      飽和脂肪酸の摂取源を多価不飽和脂肪酸に置き換えることが冠動脈疾患リスクの低下と関連する、としている

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  • 亜麻仁油とは?特徴・健康面・使い方

    亜麻仁油とは?特徴・健康面・使い方

    亜麻仁油は、植物からオメガ3を摂るほぼ唯一の選択肢です。ただし魚のオメガ3と同じ扱いはできません。その差がどこから来るのかと、実際の使い方を整理します。

    α-リノレン酸が、桁違いに多い

    脂質1gあたりのα-リノレン酸(ALA)が56.7%。ほかの4種は0.3〜6.8%ですから、比率が2桁違います1。

    α-リノレン酸の割合(脂質1gあたり)
    油 α-リノレン酸
    亜麻仁油 56.7%
    米油 1.2%
    オリーブ油 0.6%
    ごま油 0.3%
    サラダ油(調合油) 6.8%

    ALAは、体の中で作れない必須脂肪酸のひとつです。厚生労働省の食事摂取基準は「n-6系脂肪酸とn-3系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。したがって、これらは必須脂肪酸である」と書いています2。食べ物から入れるしかない、ということです。

    魚のオメガ3とは、同じものではない

    ここが、この記事でいちばん大事なところです。「オメガ3」とひとくくりにされますが、ALAとEPA・DHAは別の物質です。ALAは亜麻仁油などの植物油に、EPAとDHAは魚に多く含まれます。

    体の中でALAからEPA・DHAを作ることはできます。ただし、その効率がはっきり低いことが分かっています。

    ALAからの変換率(ヒトで測られたもの)
    対象 EPAへ DHAへ
    若い女性3 21% 9%
    若い男性4 変換は確認された(割合の算出なし) 検出されず

    出典:Burdge GC ら / British Journal of Nutrition 200234

    男性を対象にした試験では、21日間追跡してもDHAの標識が検出されませんでした。著者は「成人男性がALAをDHAに変換する能力は非常に低いか、存在しない」と書いています4。

    さらに、変換は食事の中身にも左右されます。オメガ6の多い食事では、変換が4〜5割減ると報告されています。

    出典:Gerster H / International Journal for Vitamin and Nutrition Research 19985

    健康アウトカムでも、差が出ている

    血中濃度と病気の関係を調べた大規模な解析でも、ALAとEPA・DHAは同じ結果になっていません6。

    ここから言えるのは、「亜麻仁油を摂れば魚を食べたのと同じことになる」とは言えない、ということです。逆に、ALAに意味がないという話でもありません。必須脂肪酸であることは変わりませんし、植物性の食事でオメガ3を摂る手段としては現実的に他にほぼありません。

    加熱に向かない理由

    熱に弱い多価不飽和脂肪酸が71.2%。5種類のなかで突出しています1。オリーブ油の7.2%と比べると10倍です。

    二重結合が多い脂肪酸ほど酸素と反応しやすく、熱でその反応が速くなります。だから亜麻仁油は、炒め物にも揚げ物にも使いません。

    保存と摂り方

    亜麻仁油の扱い
    どうするか
    使い方 ドレッシング、ヨーグルト、スープや料理の仕上げにかける。火を通さない
    保存 開封後は冷蔵。光と空気で傷むので、遮光容器のまま、しっかり栓をする
    容量 小さい瓶を選ぶ。開けてから時間が経つほど傷む
    使い切る目安 商品ごとの表示に従う。においや味が変わったら使わない

    注意点

    「オメガ3を摂っているから魚は要らない」という置き換えはできません。変換率の話がそのまま効いてきます。魚を食べる習慣があるなら、亜麻仁油はその代わりではなく、別の枠として考えるほうが実態に合います。

    もうひとつ。亜麻仁油は「足す」油であって、「置き換える」油ではありません。炒め物の油を亜麻仁油に替えることはできないので、日常の調理油とは役割が分かれます。

    次に読むなら:

    参考文献・参考資料

    1. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」第3表 脂質1g当たりの脂肪酸成分表。mg/g脂質を%に換算 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 脂質(1-2 機能) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316463.pdf
    3. Burdge GC, Wootton SA. Conversion of alpha-linolenic acid to eicosapentaenoic, docosapentaenoic and docosahexaenoic acids in young women. Br J Nutr. 2002;88(4):411-20. PubMed 12323090
      女性6人に標識したALA 700mgを投与し21日追跡。推定正味変換率は EPA 21%・DPA 6%・DHA 9%
    4. Burdge GC, Jones AE, Wootton SA. Eicosapentaenoic and docosapentaenoic acids are the principal products of alpha-linolenic acid metabolism in young men. Br J Nutr. 2002;88(4):355-63. PubMed 12323085
      男性6人に同じ方法で投与。血漿のどの脂質分画でもDHAの標識が検出されなかった
    5. Gerster H. Can adults adequately convert alpha-linolenic acid (18:3n-3) to eicosapentaenoic acid (20:5n-3) and docosahexaenoic acid (22:6n-3)? Int J Vitam Nutr Res. 1998;68(3):159-73. PubMed 9637947
      飽和脂肪の多い食事を背景にした場合、長鎖代謝物への変換はEPA約6%・DHA約3.8%。n-6系多価不飽和脂肪酸の多い食事では変換が40〜50%減少
    6. Omega-3 polyunsaturated fatty acid biomarkers and risk of type 2 diabetes, cardiovascular disease, cancer, and mortality. Clin Nutr. 2022;41(8):1798-1807. PubMed 35830775

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の商品・製法の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。

  • ごま油とは?特徴・健康面・使い方

    ごま油とは?特徴・健康面・使い方

    ごま油を選ぶときの実際の分かれ目は、香りをつけたいかどうかです。健康目的で語られることもありますが、根拠の厚みはオリーブ油や米油に届きません。何が分かっていて、何が分かっていないかを整理します。

    ごま油には3つの等級がある

    日本農林規格(JAS)は、食用ごま油を「ごまから採取した油」と定義したうえで、3つの等級を置いています1。

    JASの等級(食用ごま油)
    区分 一般状態 酸価
    ごま油 いりごま特有の香味を有し、おおむね清澄 4.0以下
    精製ごま油 清澄で、香味良好 0.20以下
    ごまサラダ油 清澄で、舌触りよく、香味良好 0.15以下

    出典:農林水産省「日本農林規格 食用植物油脂」JAS 0523:20241

    いちばん上の「ごま油」だけ、要件に「いりごま特有の香味」が入っています。これが、いわゆる焙煎ごま油です。酸価の上限が4.0と他の2つより緩いのは、品質が低いからではなく、香りを残すために精製を強くかけていないからです。

    太白ごま油との違い

    店頭で見かける「太白ごま油」は、ごまを煎らずに生のまま搾った油です。九鬼産業は自社の太白純正胡麻油について「ごまを煎らず、そのまま搾る」製法だと説明しています2。焙煎しないので色がほとんどなく、ごま油らしい香りもありません。

    つまり太白ごま油は「香りのないごま油」です。ごま油を選ぶときの実際の分かれ目は、健康成分ではなく、香りを付けたいかどうかです。

    脂肪酸で見ると、標準的な植物油

    ごま油は、脂肪酸の構成で見るかぎり標準的な植物油です。オリーブ油のように、一方へ大きく偏ってはいません。

    中身は、加熱で傷みにくいオレイン酸と、体内で作れないため食事からとる必要があるリノール酸が、ほぼ半々3。魚に多いn-3系脂肪酸はごくわずかで、ごま油はその供給源にはなりません。

    ごま油の特徴は、脂肪酸ではなく別の成分にあります。

    セサミンなどのリグナン

    ごまの成分として名前が挙がるのはセサミンやセサモリンです。リグナンと呼ばれる、ごまに多い成分の仲間です。ただし、ここで扱いに注意が要ります。

    研究の多くは「ごま油」ではなく「ごま」や、そこから取り出した成分を摂った試験です。下に挙げるメタ解析も、介入の中身は「ごまの摂取」であって、調理油としてのごま油ではありません4。

    ヒトで確かめられていること

    読み方を分けます。

    言えること:2型糖尿病の人がごまを摂った試験で、血中脂質の数値が下がりました。

    言えないこと:健康な人が調理でごま油を使って同じことが起きる、とは言えません。対象も介入の形も違います。試験数も10と限られています。

    加熱に向くか

    炒め物に使って問題のない範囲です。熱に弱い脂肪酸の割合は、米油より多く、大豆油より少ない位置にあります3。

    ただし、焙煎ごま油を高温で長く加熱すると香りが飛びます。香りが目的なら、火を止めてから回しかけるほうが活きます。加熱調理をがっつりやるなら、香りのない太白ごま油のほうが向いています。

    ごま油を、どう位置づけるか

    エビデンスの厚みでは、オリーブオイルや米油に届きません。健康のためにごま油を増やす、という使い方には根拠が足りていません。

    そのうえで、ごま油の役割は香りです。これは劣っているという意味ではありません。他の油で代えられない機能を持っている、ということです。ナムル、中華の仕上げ、和え物。ここでごま油の代わりになる油はありません。

    実務的にはこうなります。香りをつけたいときに使う。健康のために量を増やすことは考えない。それで十分です。

    次に読むなら:

    参考文献・参考資料

    1. 農林水産省「日本農林規格 食用植物油脂」JAS 0523:2024(3.7 食用ごま油、表7 食用ごま油の等級ごとの品質基準) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
    2. 九鬼産業株式会社「九鬼太白純正胡麻油」製品ページ(製法の記述) https://www.kuki-info.co.jp/products/sesame_oil/kuki_taihaku.html
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」第3表 脂質1g当たりの脂肪酸成分表。mg/g脂質を%に換算 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
      ごま油はリノール酸40.9%、オレイン酸37.3%、α-リノレン酸0.3%。多価不飽和脂肪酸の割合は、ごま油41.2%、米油33.3%、大豆油55.8%
    4. Vajdi M, et al. Effect of sesame supplementation on body composition and lipid profile in patients with type 2 diabetes: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Nutr Metab Cardiovasc Dis. 2024;34(4):838-849. PubMed 38316576

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  • オリーブオイルとは?特徴・健康面・使い方

    オリーブオイルとは?特徴・健康面・使い方

    オリーブオイルは、食用油のなかで健康アウトカムのデータがいちばん厚い油です。ただし「エキストラバージン」という言葉が何を保証しているかは、あまり知られていません。選ぶときに見る場所から整理します。

    まず、等級の話から

    「エキストラバージン」は、日本の規格には存在しない言葉です。

    日本農林規格(JAS)が定めている食用オリーブ油の等級は2つしかありません。「オリーブ油」と「精製オリーブ油」です1。

    JASの等級(食用オリーブ油)
    区分 一般状態 酸価
    オリーブ油 オリーブ特有の香味を有し、おおむね清澄 2.0以下
    精製オリーブ油 おおむね清澄で、香味良好 0.60以下

    では「エキストラバージン」はどこから来ているかというと、国際オリーブ理事会(IOC)の通商規格です。そこでは、遊離酸度(オレイン酸として100gあたりのグラム数)で区分されています2。

    IOCの区分(遊離酸度)
    区分 遊離酸度
    エキストラバージンオリーブ油 100gあたり0.8g以下
    バージンオリーブ油 100gあたり2.0g以下
    精製オリーブ油 100gあたり0.3g以下

    出典:International Olive Council, Trade Standard 20252

    ここで大事なのは、バージンオリーブ油は、機械的な手段だけで搾った油だという点です。熱や溶剤で中身を変える処理をしていません。だから果実に入っていた香り成分やポリフェノールがそのまま残ります。精製オリーブ油の酸度が低いのは品質が上ということではなく、精製の工程で遊離脂肪酸を取り除いているからです。

    つまり数字の低さで並べても意味がありません。見るのは「バージンかどうか」です。

    脂肪酸は、はっきり偏っている

    脂質1gあたりのオレイン酸が73.1%。5種類の食用油のなかで突出しています。米油が39.1%、ごま油が37.3%ですから、倍近い差です。

    出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編3

    健康アウトカムのデータ

    ほかの食用油と決定的に違うのはここです。血液の数値ではなく、病気そのものの発生を数えた大規模試験があります4。

    ただし、この試験の読み方には2つ条件があります。

    1つめ。調べられたのは「EVOOという油」ではなく、「EVOOを足した地中海食」です。野菜、豆、魚、ナッツを含む食事全体が介入の中身でした。油だけを取り出した効果ではありません。

    2つめ。対象は心血管リスクの高い55〜80歳でした。もともとリスクが低い人に同じ数字が当てはまるとは限りません。

    それでも、食用油でここまでのデータを持つものは、現時点でほかにありません。「いちばん厚い」というのは、そういう意味です。

    加熱してよいのか

    「EVOOは加熱に向かない」とよく言われます。脂肪酸の組成から見ると、これは逆です。

    熱に弱い多価不飽和脂肪酸の割合は、オリーブ油が7.2%。米油33.3%、ごま油41.2%、亜麻仁油71.2%と比べて、5種類のなかでいちばん少ない油です3。酸化のしやすさという点では、むしろ加熱向きの側にいます。

    混同されているのは、別の2つの話です。

    「加熱に向かない」と言われるときの2つの話
    話 中身
    酸化しやすいか 多価不飽和脂肪酸が7.2%と少ない。酸化しにくい側
    風味と成分が残るか 高温では香りとポリフェノールが飛ぶ。高いEVOOを揚げ物に使うのは、その分が無駄になる

    つまり「体に悪くなるから加熱するな」ではなく、「もったいないから生で使うほうが活きる」という話です。炒め物に使って差し支えはありません。

    選ぶときに見る場所

    ラベルで見るところ
    見るもの なぜ
    「エキストラバージン」の表示 機械的に搾っただけの油かどうか。精製オリーブ油とは中身が違う
    遮光された容器 光で傷む。透明な瓶のまま棚に置かない
    使う量と容量が合っているか 開けてからは空気に触れ続ける。使い切れる大きさを選ぶ

    ひとつ注意があります。日本のJASには「エキストラバージン」の等級がないため、この表示は国内の公的基準で担保されたものではありません1。IOCの基準に沿った輸入品かどうかは、商品ごとに確かめるしかないのが実情です。

    どう使えばいいか

    データのいちばん厚い油なので、使う量を増やしたいなら生食から始めるのが現実的です。サラダ、スープの仕上げ、パン。香りが立つ使い方のほうが、量も自然に増えます。

    そして忘れないほうがいいのは、PREDIMEDが調べたのが食事全体だったということです。油を1本替えるより、何の代わりに使うかのほうが先に効きます。

    次に読むなら:

    参考文献・参考資料

    1. 農林水産省「日本農林規格 食用植物油脂」JAS 0523:2024(3.11 食用オリーブ油、表11 食用オリーブ油の等級ごとの品質基準) https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
    2. International Olive Council. Trade Standard Applying to Olive Oils and Olive Pomace Oils(COI/T.15/NC No 3/Rev. 21, 2025) TRADE-STANDARD-REV-21
      遊離酸度はオレイン酸として100g当たりのグラム数で表す。バージンオリーブ油は、果実から機械的または物理的な手段のみで得られた油と定義されている
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」第3表 脂質1g当たりの脂肪酸成分表。mg/g脂質を%に換算 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
    4. Estruch R, et al. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med. 2018;378(25):e34. PubMed 29897866(2013年版は手順の逸脱により撤回、再解析のうえ再出版)

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の商品・製法の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。脂質異常症などで食事の指示を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 米油とは?特徴・健康面・使い方

    米油とは?特徴・健康面・使い方

    米油は、米そのものではなく、精米のときに出る「米ぬか」から作られる油です。クセが少なく、炒め物にも揚げ物にも使えます。

    一方で、健康面ではオリーブ油やなたね油と何が違うのか、店頭の表示だけでは分かりません。ここでは、ほかの油と比べながら整理します。

    米油は何から作られる?

    米油の原料は、玄米を精米するときに出る「米ぬか」です1。

    普段食べている白米をつくる過程で取り除かれる部分から、油を取り出して作られています。

    ほかの油と何が違う?

    オリーブ油は研究実績。
    なたね油は脂肪酸構成。
    米油は国産原料と米ぬか由来成分。

    これが、3つの油を比べるときの大きな違いです。

    • オリーブ油:心臓・血管との関係を調べた研究が多い
    • なたね油:飽和脂肪酸が少なく、n-3系脂肪酸も含む
    • 米油:脂肪酸は中間的で、国産原料の商品が多く、γ-オリザノールなど米ぬか由来成分を含む

    農林水産省も、米油を「国産原料による生産という点で、ほぼ唯一の油」としています3。

    脂肪酸(油をつくっている主な成分)の違いは、下の図を見ると一目で分かります2。

    オリーブ油、なたね油、大豆油、米油の脂肪酸構成比を比較したグラフ

    米油ならではの成分

    農林水産省は、米ぬかとこめ油について3つの成分を挙げています3。

    γ-オリザノール

    米ぬかに特徴的に含まれる成分です。農林水産省は「一般的な植物油には含まれていません」と書いています。米油をほかの植物油と分けている成分が、これです。

    米ぬかに含まれるγ-オリザノールと、脂質・コレステロールとの関係を示した図

    植物ステロール

    コレステロールと似た構造を持ち、腸でのコレステロールの吸収に関係する成分です。植物油には広く含まれますが、農林水産省はこめ油に「とくに豊富に含まれている」としています。

    トコトリエノール

    ビタミンEの仲間で、酸化から守る働きが研究されている成分です。

    では、これらを含む米油を実際に食べた人で、何が確かめられているのか。

    健康面では何が分かっている?

    人を対象にした研究では、米ぬか・米油をとった人で、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪が下がったとする解析があります4。いずれも健康診断の血液検査でおなじみの項目です。

    2024年の解析では、11の比較試験・572人をまとめた結果、これらの血中脂質の改善が報告されました。

    つまり米油は、「なんとなく体によさそう」というだけではなく、血中脂質については人を対象にした研究でも改善が確認されている油です。

    毎日の調理油として使いやすいことに加えて、こうした研究結果があることも、米油が評価される理由のひとつです。

    加熱調理には向いている?

    米油は、炒め物や揚げ物など、普段の加熱調理に使いやすい油です。理由は、加熱への強さ・価格・風味のバランスにあります。

    米油の加熱への強さ、価格、風味のバランスを示した図

    加熱への強さは、熱に弱い種類の脂肪酸をどれだけ含むかで、ある程度決まります。その割合で並べると、米油は大豆油やごま油より少なく、オリーブ油よりは多いという位置です2。亜麻仁油は米油の倍以上を含み、加熱には向きません。

    ただし、熱に弱い脂肪酸が少なければ必ず加熱に強い、というほど単純ではありません。加熱の温度や時間、油の精製のしかたでも変わります。

    「圧搾」は選ぶ基準になる?

    米油のつくり方は、大きく分けると圧搾と溶剤抽出があります。

    圧搾は、米ぬかを物理的に搾って油を取り出す方法です。

    一方、一般的な米油では、米ぬかから効率よく油を取り出すために溶剤を使って抽出し、その後に精製する工程が使われます5。

    違いは、下の図を見ると分かります。

    米油の圧搾と溶剤抽出の製造工程を比較した図

    製法まで気にして選ぶなら、商品表示やメーカー情報で、圧搾か抽出かを確認できます。

    米油をどう見るか

    米油は、脂肪酸だけで突出した油ではありません。

    一方で、国産原料の商品が多いこと、米ぬか由来の成分を含むこと、クセが少なく加熱調理に使いやすいことが重なり、日常使いの油として評価されています。

    オリーブ油のように研究実績が強い油、なたね油のように脂肪酸構成に特徴がある油とは、強みの場所が違います。

    米油は、「毎日使いやすいこと」と「原料・成分まで見て選びやすいこと」が特徴の油です。

    参考文献・参考資料

    1. 農林水産省「日本農林規格 食用植物油脂」JAS 0523:2024 https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_standard/attach/pdf/index-386.pdf
      3.9 食用こめ油を「こめぬかから採取した油であって、食用に適するよう処理したもの」と定義
    2. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」第3表 脂質1g当たりの脂肪酸成分表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
      米ぬか油はオレイン酸391mg・リノール酸321mg・α-リノレン酸12mg/脂質1g。多価不飽和脂肪酸の割合は亜麻仁油71.2%、大豆油55.8%、ごま油41.2%、米油33.3%、オリーブ油7.2%
    3. 農林水産省「米ぬかとこめ油」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/04/functio_nality_07.html
      γ-オリザノール・植物ステロール・トコトリエノールの記述。ヒト試験の結果としてではなく、成分の説明として書かれている。トコトリエノールの抗酸化力については「といわれる」と伝聞の形で書かれている
    4. Park S-y, Kim Y, Park MJ, Kim JY. Rice Bran Consumption Improves Lipid Profiles: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Nutrients. 2024. PMC11723186
      11のランダム化比較試験・572人。評価しているのは血中脂質で、心筋梗塞や脳卒中などの発症は見ていない
    5. 一般社団法人 日本植物油協会「用語集」搾油・圧搾・抽出の項 https://www.oil.or.jp/yougo/
      圧搾は油分を多く含む原料に行う工程だが、圧搾後の原料にはまだ多くの油分が残るため、さらに溶剤抽出で採取する、としている

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の商品・製法の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。脂質異常症などで食事の指示を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 自分の体質に合う食べ方を、どう考えるか

    自分の体質に合う食べ方を、どう考えるか

    同じ牛乳を飲んで、平気な人とお腹を壊す人がいます。同じ酒を飲んで、顔色ひとつ変わらない人と一杯で赤くなる人がいます。この差の一部は、その人の祖先が何千年何を食べてきたかに由来します。

    では、2000年以上米を食べてきた日本列島の集団は、米に適応したのでしょうか。

    先に答えを書きます。牛乳と酒については、食文化が身体を変えた証拠があります。デンプンについては、2024年にようやく強い証拠が出ました。ただし「日本人は米に適応している」と言い切れるデータは、いまのところありません。

    食べ物に対して、人間の身体は本当に変わるのか

    これを扱う考え方に名前がついています。遺伝子―文化共進化。ある食文化が長く続くことで、その食文化に有利な遺伝的特徴が集団の中で増えていく、という現象です。

    言葉だけなら仮説に聞こえます。ただ、少なくとも1つの食品では、実際に何が起きたかまで分かっています。

    牛乳を飲める身体は、後から生まれた

    ほとんどの哺乳類は、離乳すると乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが落ちます。それが標準の経過です。大人になっても分解できる状態のほうが、後から現れた例外です。

    この形質はラクターゼ持続性と呼ばれます。ヨーロッパ系集団ではLCT遺伝子の上流にある -13910 C/T という1か所の違いが、この形質と強く結びついています1。

    そして、時期が分かっています。この変異は新石器時代初期の中央ヨーロッパでは、非常にまれか存在しませんでした1。つまり、農耕と牧畜が始まったあとに広がったものです。

    論文は、共進化の条件をこう書いています。

    新鮮な乳の供給がなければ、ラクターゼ持続性が選択上の利益をもたらすとは考えにくい。このことから、酪農を行う文化においてのみラクターゼ持続性が有利になり、ラクターゼ持続性の集団においてのみ酪農がより有利になるという、遺伝子―文化共進化のモデルが導かれた1

    文化が先か、身体が先か、ではありません。両方が互いを押し上げました。シミュレーションによる推定では、この共進化はおよそ7,500年前、バルカン半島中部から中央ヨーロッパのあいだで始まったとされています1。

    いま、頻度には大きな地域差があります。ヨーロッパでは -13910*T の対立遺伝子頻度がイタリア・トスカーナの8.9%から英国の72.0%まで幅があり、平均は50.8%。アジアでは10%を超えることがまれです3。

    ここで押さえておきたいのは順序です。牛乳を飲めることが人間の「普通」で、飲めないのが「異常」なのではありません。順番は逆でした。大人になって酵素が減ることのほうが、哺乳類として標準的な経過です。

    同じ酒でも、身体は同じ反応をしない

    アルコールは体内で二段階に分解されます。まずアセトアルデヒドに変わり、次に酢酸に変わる。この2段目を担うのが2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)です。

    この酵素の働きが弱い型は、東アジアに集中しています。日本人では、両方の遺伝子が弱いホモ欠損型が1割弱、片方が弱いヘテロ欠損型が3割強。合わせて4割強が、生まれつき処理能力の低い側にいます。

    ヨーロッパ系集団では、この型はほとんど見られません。同じ量の酒を飲んでも、体内に残るアセトアルデヒドの量が違います。

    これは「酒に強い・弱い」という性格の話ではなく、酵素活性の差です。飲み慣れても遺伝子型は変わりません。

    小麦を食べる文化と、グルテンへの反応

    セリアック病は、グルテンに対する免疫反応で小腸の粘膜が傷害される疾患です。発症にはHLA-DQ2またはDQ8という特定の型がほぼ必須とされています。

    世界の頻度には差があります。27万人以上を対象にしたメタ解析では、血清検査陽性の世界全体の頻度が1.4%(95%CI 1.1〜1.7%)、生検で確認されたものが0.7%(0.5〜0.9%)でした4。

    生検で確認されたセリアック病の地域別頻度4
    地域 頻度
    ヨーロッパ・オセアニア 0.8%
    アジア 0.6%
    アフリカ・北米 0.5%
    南米 0.4%

    日本では、さらに低い数字が出ています。島根県で2,055人を対象にした血清スクリーニングでは、抗体陽性は0.19%。ただしこの研究では生検もHLA型判定も行われておらず、陽性だった4人に消化器症状はありませんでした5。

    ここは慎重に書く必要があります。頻度の差は、遺伝的背景だけで決まるものではありません。診断率、検査の普及度、小麦の摂取量、環境要因が同時に効きます。同じ論文が、日本の小麦摂取量は中国の半分程度だと記しています5。

    そして重要なのは、これは「日本人に小麦が合わない」という話ではないということです。むしろ逆で、セリアック病の関連型が少ないぶん、この疾患の頻度は低く出ています。

    あわせて覚えておきたいことがあります。自分でグルテン不耐だと考えている人を盲検で調べた試験では、症状が最も強く出たのはグルテンではなくフルクタンでした。「小麦で不調」の中身は、グルテンとは限りません。

    そして、デンプンを食べる身体

    ここが米の話への橋です。

    口に入れた瞬間からデンプンを分解する酵素が、唾液アミラーゼです。これを作るAMY1という遺伝子は、人によってコピー数が違います。

    2007年、Perryらは高デンプン食の集団のほうがAMY1のコピー数が平均して多いと報告しました6。魅力的な話で、広く引用されました。

    ただし、この研究はその後ずっと揺れていました。コピー数の測定に使われたqPCRの精度が十分でないこと、AMY1のコピー数とBMIの関連が再現しなかったこと、そしてコピー数の増加が農耕の開始より前にさかのぼる可能性が指摘されたことです。

    コピー数が唾液アミラーゼの量をどれだけ説明するかを調べた研究では、説明できたのは分散の11.7%(タンパク量)と13.6%(酵素活性)にとどまりました7。残りは別の要因です。

    決着がついたのは2024年でした。

    つまり、いま言えるのはこうです。人類は、長く食べてきたデンプン食に対して、それを分解する側の遺伝子を増やしてきた可能性が高い。ただしそれは「米」に固有の話ではなく、芋でも麦でもトウモロコシでも起きうる、高デンプン食全般への適応です。

    食文化が選択圧になり遺伝的特徴が増え、消化・代謝の違いが生まれる流れを、牛乳・酒・デンプンの3例で並べた図
    同じ構造が、3つの食品で繰り返されています。文化が先にあり、それが有利・不利を作り、集団の中の頻度が動く。牛乳とデンプンは「増える」方向、酒は東アジアで「弱い型が残った」形です。

    では、日本人は「米」に適応しているのか

    ここまでの材料で、言えることと言えないことを分けます。

    米と日本列島の集団について
    内容
    言えること 日本では長期間、米を中心とした食文化が続いてきた
    人類が高デンプン食に適応してきたことを示す研究がある(2024年 Nature)
    食文化によって消化・代謝能力が変わりうることは、牛乳と酒で実証されている
    言えないこと 日本人が欧米人より米からエネルギーを取り出す効率が高い
    日本人にとって米が生理学的に最適な主食である
    日本人は小麦より米を食べるべきである

    下の3つを直接証明した研究は、現時点でありません。ここは誤魔化さないほうがいいところです。

    2024年の研究が示したのは「農耕集団はコピー数が多い」という集団レベルの傾向であって、日本列島の集団を対象に米との関係を調べたものではありません。そして集団の平均は、目の前の一人の話ではありません。

    必要な栄養素は同じでも、取り方は同じとは限らない

    ここで整理が要ります。よくある誤解を先に外します。

    必須栄養素が民族によって違う、ということはありません。必須アミノ酸も必須脂肪酸も、ビタミンもミネラルも、人間に必要な基本は共通です。

    違うのは、そこへ至る経路のほうです。

    共通するものと、差が出るもの
    中身
    共通 必須アミノ酸、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルの必要性そのもの
    差が出る 消化酵素(ラクターゼ、アミラーゼ)
    代謝酵素の遺伝子多型(ALDH2、薬物代謝酵素)
    免疫の反応しやすさ(HLA型)
    腸内細菌の構成

    つまり、こうなります。必要なものは同じでも、どの食品からどう摂るのが身体にとって負担が少ないかは、全員同じとは限りません。

    「健康にいい食事」は、世界共通なのか

    この問いは、実務に直結します。

    栄養学の研究の多くは、欧米の集団で行われています。その結果を日本人にそのまま当てはめてよいのか。逆に、日本食をすべての人に勧めてよいのか。

    これは医学研究を否定する話ではありません。集団差があると分かっているのだから、それを考慮に入れるほうが科学的だ、という話です。この方向は個別化栄養(precision nutrition)と呼ばれています。

    ただし、ここにも限界があります。800人の食後血糖を46,898食分測った研究では、同じ食事への反応が人によって大きく違っていました。集団差より、同じ集団の中の個人差のほうが大きい場面もあります。

    だから、順番はこうなります。集団の傾向を知る。そのうえで、自分がどこにいるかは別に確かめる。検査はそれぞれ違う問いに答えています。

    今日、確かめられること

    この記事で扱った4つのうち、3つは自分で確かめられます。

    デンプンだけは、自分では測れません。唾液アミラーゼの量もAMY1のコピー数も、日常の検査項目にありません。

    食卓の上だけではなく

    私たちは、食べ物を栄養素の集合として見がちです。たんぱく質、脂質、糖質、ビタミン。

    けれど、牛乳を飲んできた歴史も、穀物を育ててきた歴史も、酒を造ってきた歴史も、文化として残っただけではありませんでした。その一部は、酵素の活性として、遺伝子のコピー数として、いまも身体の中にあります。

    日本人の身体が米を食べるようにできていると、いまの科学だけで断言することはできません。けれど、何千年もの食文化と身体が無関係だったと考える理由も、もうありません。

    私たちが何を食べてきたかという歴史は、食卓の上だけではなく、身体の中にも残っています。

    参考文献・参考資料

    1. Itan Y, Powell A, Beaumont MA, Burger J, Thomas MG. The origins of lactase persistence in Europe. PLoS Comput Biol. 2009;5(8):e1000491. PubMed 19714206
    2. Recurrent evolution and selection shape structural diversity at the amylase locus. Nature. 2024. PubMed 39232174
    3. Genetic aspects of lactase deficiency in indigenous populations(ヨーロッパの -13910*T 対立遺伝子頻度、アジアでの頻度に関する記述) PMC11491482
    4. Singh P, Arora A, Strand TA, et al. Global Prevalence of Celiac Disease: Systematic Review and Meta-analysis. Clin Gastroenterol Hepatol. 2018;16(6):823-836.e2. PubMed 29551598
    5. Fukunaga M, Ishimura N, et al. Celiac disease in non-clinical populations of Japan(Shimane CoHRE study). JGH Open. 2020. PMC7411563
    6. Perry GH, Dominy NJ, Claw KG, et al. Diet and the evolution of human amylase gene copy number variation. Nat Genet. 2007;39(10):1256-1260. PubMed 17828263
    7. Copy number variation of human AMY1 is a minor contributor to variation in salivary amylase expression and activity. Hum Genomics. 2018. PubMed 28219410

    本記事は査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。記載の頻度や割合は集団の推計であり、特定の個人に当てはまるものではありません。特定の食品の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。

  • 健康のための油の選び方 ― 米油・オリーブ油・ごま油・亜麻仁油・サラダ油を比較

    健康のための油の選び方 ― 米油・オリーブ油・ごま油・亜麻仁油・サラダ油を比較

    「油は太りやすいから減らしたほうがいい」とも、「良い油は摂ったほうがいい」とも言われます。では、油は減らすべきなのか、選んで摂るべきなのか。まず、そこから整理します。

    なぜ健康のために油を選ぶのか

    油というと、「脂質が多い」「太りやすい」という印象を持つ人も多いと思います。

    一方で最近は、フィッシュオイルやオメガ3脂肪酸のサプリメントを見かける機会も増えました。

    ドラッグストアの棚に並ぶ、EPA・DHA・オメガ3をうたったサプリメントの商品パッケージ

    なぜ、避けた方がよさそうな「油」が、健康のために摂るものとしても注目されているのでしょうか。

    理由のひとつは、

    油が単なるカロリーではないからです。

    脂質は、細胞をつくったり、体内で作れない脂肪酸を補ったりするために必要な栄養素です。

    そして健康を考えるときは、「どれだけ油を摂るか」だけでなく、

    「どんな脂肪酸を摂るか」

    も大切だと分かってきています。

    出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」脂質1

    油をつくっている主な成分を、脂肪酸といいます。そのひとつが、オメガ3脂肪酸のEPAです。魚に多く含まれています。

    日本人を約10年追跡した研究では、血液中のEPAが少ない人は、多い人に比べて、がんで亡くなるリスクが約2倍でした。

    出典:久山町研究 / Journal of Epidemiology 20172

    この久山町研究は、医師の南雲吉則先生もYouTubeで取り上げています。


    また、油は種類によって健康への影響が違います。

    たとえば、飽和脂肪を不飽和脂肪に置き換えること。つまり、バターや脂身の多い肉に多い脂を、オリーブ油や魚に多い脂へ替えることです。これで心臓や血管の病気が起きにくくなることが、多くの研究で示されています。

    出典:American Heart Association, Dietary Guidance, 20263

    油と健康に関する研究を4つ並べて整理した図解

    油は、健康を考えるうえで無視できない栄養です。

    実際に、脂肪酸の種類によって健康との関係が変わることも分かってきています。

    だからこそ大切なのは、どんな油を選ぶかです。

    次に、油によって何が違うのかを見ていきます。

    油の違いを見るポイント

    油の違いを見る5つのポイント

    まず、家庭でもよく使われる「サラダ油」について

    実は、サラダ油はひとつの油の名前ではありません。

    なたね油、大豆油、コーン油など、一定の基準を満たした植物油が「サラダ油」として販売されています。そのため、商品によって原料も脂肪酸の構成も違います。

    つまり、「サラダ油だから体に悪い」「サラダ油なら全部同じ」と考えるのは正確ではありません。

    健康を意識して選ぶなら、「サラダ油」という名前ではなく、何の油が使われているかを見ることが大切です。

    サラダ油について詳しくはこちら

    では、それぞれの油は何が違うのでしょうか

    サラダ油は、ここまで見てきたように、複数の植物油を含む「カテゴリー」です。

    一方、今回比較する米油・オリーブ油・ごま油・亜麻仁油は、それぞれ異なる原料からつくられています。原料が違えば、油の中身も変わります。

    下のグラフを見ると、同じ植物油でも脂肪酸の構成がかなり違うことが分かります。

    オリーブ油・米油・ごま油・亜麻仁油の脂肪酸構成比

    つまり、健康面で注目される特徴も油によって違います。

    亜麻仁油は、健康目的で特に注目される脂肪酸を多く含みます。オリーブ油は、心血管の健康との関係について多く研究されています。米油やごま油にも、それぞれ特徴的な成分があります。

    どの油が自分に合うかは、健康目的によって変わります。

    それぞれの油の特徴については、各記事で詳しく紹介します。

    健康のための油選び

    油は、原料によって脂肪酸の構成や、健康面で注目される特徴が異なります。

    大切なのは、それぞれの特徴を知ったうえで、自分の健康目的に合わせて選ぶことです。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 脂質 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316463.pdf
      1-2 機能(p.105)および 3-3-2-1 目標量の策定方法(p.108)。目標量は20〜30%エネルギーで、下限の20%は必須脂肪酸の目安量を下回らないように算定されている
    2. Nagata M, Hata J, Hirakawa Y, et al. The ratio of serum eicosapentaenoic acid to arachidonic acid and risk of cancer death in a Japanese community: The Hisayama Study. J Epidemiol. 2017;27(12):578-583. PubMed 28669629
      40歳以上3,098人を平均9.6年追跡(がん死亡121人)。血清EPA/AA比の最低四分位(0.29未満)は最高四分位(0.60超)に対し、がん死亡のハザード比1.93(95%CI 1.15〜3.22、多変量調整後)。部位別では肝がんでのみ関連が見られ、ほかのがんでは見られていない。観察研究。著者の1名はEPA製剤を扱う持田製薬の所属
    3. 2026 Dietary Guidance to Improve Cardiovascular Health: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation. doi:10.1161/CIR.0000000000001435
      飽和脂肪酸の摂取源を多価不飽和脂肪酸に置き換えることが冠動脈疾患リスクの低下と関連し、置き換え先が多価不飽和脂肪酸のときに心血管上の利益が最も大きい、としている。2021年版の更新
    4. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年 脂肪酸成分表編」第3表 脂質1g当たりの脂肪酸成分表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
    5. Estruch R, et al. Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra-Virgin Olive Oil or Nuts. N Engl J Med. 2018;378(25):e34. PubMed 29897866
      7,447人・中央値4.8年。EVOOを加えた地中海食の群で、心筋梗塞・脳卒中・心血管死のハザード比0.69(95%CI 0.53〜0.91)。対象は心血管リスクの高い55〜80歳で、油だけを取り出した試験ではない。2013年版は手順の逸脱により撤回、再解析のうえ再出版

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の商品・製法の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。脂質異常症などで食事の指示を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 健康寿命を延ばすために、どこから手をつけるか

    健康寿命を延ばすために、どこから手をつけるか

    平均寿命と健康寿命の差は、男性8.49年、女性11.63年(令和4年)1。日常生活に制限がある期間です。

    この期間を作っているものには、名前と数字がついています。介護が必要になった主な原因は、認知症16.6%、脳血管疾患16.1%、骨折・転倒13.9%(令和4年・総数)2。

    そして軽い段階と重い段階で、原因の顔ぶれが入れ替わります。ここが、手の打ちどころを決める部分です。

    8.49年と11.63年を、何が作っているか

    健康寿命は「日常生活に制限がない期間の平均」です。令和4年の値は男性72.57年、女性75.45年。平均寿命は男性81.05年、女性87.09年でした1。

    差だけを見ると、抽象的な数字に見えます。ただ、この期間に何が起きているかは、別の統計に出ています。

    段階で、原因が入れ替わる

    国民生活基礎調査は、介護が必要になった主な原因を要介護度別に集計しています。上位3位を並べると、こうなります2。

    現在の要介護度別にみた、介護が必要となった主な原因(令和4年・上位3位)2
    段階 1位 2位 3位
    総数 認知症 16.6% 脳血管疾患 16.1% 骨折・転倒 13.9%
    要支援1 高齢による衰弱 19.5% 関節疾患 18.7% 骨折・転倒 12.2%
    要支援2 関節疾患 19.8% 骨折・転倒 19.6% 高齢による衰弱 15.5%
    要介護1 認知症 26.4% 脳血管疾患 14.5% 骨折・転倒 13.1%
    要介護3 認知症 25.3% 脳血管疾患 19.6% 骨折・転倒 12.8%
    要介護4 脳血管疾患 28.0% 骨折・転倒 18.7% 認知症 14.4%
    要介護5 脳血管疾患 26.3% 認知症 23.1% 骨折・転倒 11.3%
    要介護度別の主な原因。要支援では関節疾患・衰弱・骨折、要介護4・5では脳血管疾患が最多になる
    軽い側では運動器と体力、重い側では血管の病気が前に出ます。骨折・転倒はすべての段階の上位3位に入っています2。

    読み取れることが3つあります。

    1. 軽い側の入口は、病気ではない。要支援1・2の上位に並ぶのは、関節疾患・高齢による衰弱・骨折転倒です。認知症も脳卒中も、上位3位に入っていません。動ける範囲が狭くなるところから始まっています。

    2. 重い側は、血管に寄る。要介護4で28.0%、要介護5で26.3%。脳血管疾患が最多になります。ここは「衰え」ではなく、急に起きる出来事です。

    3. 骨折・転倒は、全段階にある。総数で13.9%。要支援2では19.6%まで上がります。軽い側にも重い側にも顔を出す、唯一の項目です。

    3つに分けると、確かめられる数字がある

    「健康寿命を延ばす」は大きすぎて手がつきません。ただ、上の表は3つに分けられます。運動器・血管・骨。どれも、いま数字で確かめられるものがあります。

    3つと、確かめられる数字
    関わる原因 確かめられるもの
    血管 脳血管疾患(要介護4で28.0%) 家庭血圧の基準は135/85。LDLの管理目標値は区分で変わる
    骨 骨折・転倒(全段階の上位3位) 骨密度。カルシウムは推奨量の65%、ビタミンDは目安量の77%
    運動器・体力 関節疾患・高齢による衰弱(要支援の1・2位) たんぱく質は推奨量の120%だが、1.6g/kgで頭打ち

    血管については、線がはっきりしています。家庭で測ったときの基準は135/85で、診察室の140/90より低く設定されています。診察室でしか測っていないと、家で高い人は見つかりません。

    骨については、血液のカルシウム値では足りているか分かりません。下がりそうになると骨から補われて元に戻るためです。骨の状態が気になるなら、見るのは骨密度のほうです。

    認知症について、いま書けること

    総数で1位、要介護1で26.4%。いちばん多い原因です2。

    ただし、ここで確実な予防法を書くことはできません。分かっていることと、分かっていないことを混ぜないためです。

    この統計から言えるのは、脳血管疾患が要介護4・5の最多であり、認知症と並んで上位にいるということだけです。血管に効く数字は、上の表のとおり自分で確かめられます。それ以上のことは、この記事の範囲を超えます。

    今日、位置を1つ確かめる

    8.49年と11.63年は集団の平均です。自分の分は、まだ決まっていません。

    決まっていないものについて、今日できるのは位置を1つ確かめることです。

    3つとも、道具はほとんど要りません。要支援の入口が「病気」ではなく「動ける範囲が狭くなること」だったのは、逆に言えば、病名がつく前から数えられるということです。

    健診が見ている範囲と、その外側についてはこちらに書いています。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省健康・生活衛生局健康課「健康寿命の令和4年値について」第4回 健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料1-1、令和6年12月24日 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001363069.pdf
    2. 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況、表17「現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/05.pdf

    本記事は公的統計の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。記載の割合は在宅の要支援・要介護者を対象とした調査の結果で、個人の見通しを示すものではありません。特定の検査・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。

  • 予防に手が回らない理由を知って、自分で動く

    予防に手が回らない理由を知って、自分で動く

    日本の国民医療費は48兆915億円(令和5年度)。この統計の定義に、こう書いてあります。「健康の維持・増進を目的とした健康診断、予防接種等に要する費用」は含まない1。

    誰かが隠しているのではありません。国民医療費は「傷病の治療に要した費用」を推計する統計だからです1。定義として正しい。

    ただ、その結果として起きていることがあります。私たちが「医療にいくら使っているか」を話すとき、予防の話は最初から数字に入っていません。

    縮めたいのは、8.49年と11.63年

    健康寿命は「日常生活に制限がない期間の平均」です。令和4年の値は男性72.57年、女性75.45年。同じ年の平均寿命は男性81.05年、女性87.09年でした2。

    平均寿命と健康寿命(令和4年)2
    平均寿命 健康寿命 差
    男性 81.05年 72.57年 8.49年
    女性 87.09年 75.45年 11.63年
    平均寿命と健康寿命の差を示す図。男性は8.49年、女性は11.63年
    差は、日常生活に制限がある期間にあたります。令和4年値は令和元年値と比べて男性で短縮、女性で延伸していますが、いずれも統計的に有意な差は見られなかったとされています2。

    この差をつくっているものには、名前と数字がついています。介護が必要になった原因は、軽い段階と重い段階で顔ぶれが入れ替わります。

    この差を縮めることが、健康日本21(第三次・令和6〜17年度)の目標にも置かれています。目標の書き方は「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」です2。長く生きるだけでなく、動ける期間のほうを伸ばす、ということです。

    お金は、治療のほうへ向いている

    令和5年度の国民医療費は48兆915億円。国内総生産に対する比率は8.08%でした1。

    年齢で分けると、はっきりした形が出ます。

    年齢階級別の国民医療費(令和5年度)1
    年齢 国民医療費 構成割合 一人当たり
    65歳未満 ― 約39.9% 21万8,000円
    65歳以上 28兆8,806億円 60.1% 79万7,200円

    一人当たりで約3.7倍です。これは高齢者が多く使っているという話ではなく、病気は年齢とともに増えるという、当たり前のことが数字に出ているだけです。

    その定義は、正しい

    ここからが構造の話です。国民医療費の定義には、含まないものが明記されています1。

    傷病の治療費に限っているため、(1)正常な妊娠・分娩に要する費用、(2)健康の維持・増進を目的とした健康診断、予防接種等に要する費用、(3)固定した身体障害のために必要とする義眼や義肢等の費用は含まない

    これは合理的な定義です。国民医療費は、公的医療保険が給付する範囲を推計するための統計です。保険は「傷病の治療」に給付すると決まっている。だから統計もその範囲を数える。範囲が曖昧なら、保険財政の見通しが立たなくなります。

    国民皆保険は、この線引きがあるから成り立っています。誰でも、どこでも、同じ自己負担で治療を受けられる。銀歯の材料がJIS規格で決まっているのも、弁当のフタル酸が通知1本で22分の1になったのも、この制度が実際に動いているからです。

    同時に、起きていること

    定義が正しいことと、その定義が生む結果は別です。

    「医療費が48兆円」と言うとき、その48兆円には予防が入っていません。だから「予防にいくら使っているか」は、この統計からは見えません。見えない数字は、並べて比べることも、増減を議論することも難しくなります。

    そして、ここが大事なところです。予防が進むと、48兆円の側が減ります。診察が減り、検査が減り、投薬が減る。一方で、予防そのものはこの統計に現れないので、「何がどれだけ効いたか」は同じ土俵で示しにくい。

    費用が減る側は数字で見えて、増やすべき側は数字で見えにくい。これが、予防が育ちにくい構造の一つです。

    ここまでが公的統計の記述です。「だから予防が育ちにくい」という読み方は、me:LABの解釈です。

    誰かがサボっているわけではない

    この話は「国が予防をやっていない」という話ではありません。数字がそう言っていません。

    特定健診・特定保健指導の実施状況(2023年度)3
    対象者 実施 実施率 前年度比
    特定健診 5,210万人 3,123万人 59.9% +1.8pt
    特定保健指導 519万人 143万人 27.6% +1.1pt

    40〜74歳を対象に、5,210万人分の枠組みが毎年動いています。そして結果も出ています。メタボリックシンドロームの該当者と予備群は、2008年度と比べて17.2%減りました3。実施率も減少率も、毎年少しずつ上がっています。

    ただし、2つの数字のあいだには開きがあります。健診は59.9%まで来て、保健指導は27.6%。見つけるところまでは届いていて、生活を変えるところまでは届ききっていません。

    これも、誰かの怠慢ではないと考えています。健診は「受ける」で完了しますが、保健指導は数か月にわたって続けるものです。仕事の都合も、家庭の事情もある。仕組みの問題というより、一人ひとりの生活の中にどう入るかという問題です。

    では、どこに余白があるのか

    いまの仕組みが見ている範囲を、そのまま書き出すとこうなります。

    特定健診が見ている範囲
    範囲
    対象 40〜74歳3
    頻度 年1回
    項目 決められた基本項目
    見つけるもの 生活習慣病のリスク

    これは弱点ではなく、5,210万人に同じ質で届けるための設計です。対象を広げ、頻度を上げ、項目を増やせば、費用も人手も跳ね上がります。全員に届けることと、一人ひとりに合わせることは、どこかで両立しなくなります。

    だから余白は、ここに残ります。39歳までの期間。年1回のあいだの364日。基本項目に入っていないもの。この3つは、制度が取りこぼしているのではなく、制度が引き受けきれない範囲です。

    そして、この余白を埋められるのは、いまのところ本人しかいません。検査はそれぞれ違う問いに答えていて、ひとつで全部が分かるものはありません。だとすれば、自分がどの問いを持っているのかを決めるところから始まります。

    今日、確かめられること

    数字に戻ります。特定健診の実施率は59.9%。4割の人は受けていません3。

    40〜74歳で公的医療保険に入っているなら、あなたは5,210万人の対象者のうちの1人です。まず確かめられるのはここです。

    • 自分が対象かどうか。40歳以上74歳以下で、医療保険の加入者なら対象です
    • 今年度、受けたかどうか。受けていないなら、加入している保険者(健保組合・協会けんぽ・市町村国保)から案内が来ています
    • 保健指導の対象になったか。なったなら、終わりまでやった人は27.6%です。途中で止まっている側にいないか

    平均寿命と健康寿命の差、男性8.49年・女性11.63年は集団の平均です。自分の分はまだ決まっていません。決まっていないものについて、いま手を動かせる場所は、思っているより具体的にあります。

    入ってくるものと出す力については、こちらに一覧で並べています。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」令和7年10月10日 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/23/dl/R05data.pdf
    2. 厚生労働省健康・生活衛生局健康課「健康寿命の令和4年値について」第4回 健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料1-1、令和6年12月24日 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001363069.pdf
    3. 厚生労働省「2023年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001492019.pdf

    本記事は公的統計の整理と、それに対する編集部の解釈を含みます。個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の制度・機関・職種を批判する意図はありません。