合わない食品が何十品目も出ても、全部やめてはいけない

合わない食品が何十品目も出たら 全部やめる してはいけない 1〜2品目 外して、戻す やめること自体に、栄養・生活・再開のコストがある

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合わない食品が何十品目も出ても、すべてを一度にやめてはいけません。やめること自体に、栄養・生活・再開のしやすさという三方向のコストがあるためです。

とくに三つめが知られていません。食べない期間が長引くほど、再開のハードルは上がります。

やることは逆で、1品目ずつ、やめて、戻して確かめる。手順は単純です。

この記事は食品の欄だけを扱います。結果全体をどう受け取るかは、別の記事で整理しました。

「不耐性」は、アレルギーとは別のもの

食べ物で起きる不調は、免疫が関わるものと、関わらないものに分かれます。この分かれ方は別の記事で整理しました。

命に関わる反応が起きるのは、免疫が関わる側です。じんましん、唇や喉の腫れ、息苦しさ、繰り返す嘔吐。これらは不耐性ではなく、免疫が関わる側の反応です。この記事の「やめて、戻して確かめる」手順は、そこには使えません。少量から試すという方法そのものが危険になります。

やめることには、コストがある

「合わないなら、やめておけば安全」と考えたくなります。ただ、除去には三方向のコストがあります。

栄養。野菜・果物・魚・肉・穀物にまたがって除くと、そこから摂っていたものが同時に抜けます。何十品目を一度に外すと、残る選択肢はかなり狭くなります。

生活。外食、会食、家族と同じ食卓、旅行。食べられないものが増えるほど、日常の選択肢が減ります。検査値には出ませんが、毎日効いてきます。

戻しにくくなること。食べない期間が長引くほど、再開のハードルは上がります。

確かめられているのはアレルギーの領域で、不耐性そのものではありません。それでも、避け続けることの向きを示す結果ではあります。ピーナッツアレルギーのリスクが高い乳児640名を、生後11か月未満から「食べる群」と「避ける群」に無作為に分けた試験では、5歳時点のアレルギー発症率は避けた群のほうが高くなりました1。

これは乳児のアレルギー発症を防ぐ話で、大人が食品を外して戻す話ではありません。そのまま当てはめることはできません。ただ、避けることが自動的に安全側とは限らない、という考え方が医療の中にあることは知っておく価値があります。

診療の側は「全部やめない」方向へ動いている

もう一つ、除去を実際に運用している診療科の手順があります。金属アレルギーの金属制限食です。

皮膚科では、金属アレルギーが疑われる患者にニッケル・コバルト・クロムを減らした食事を指導することがあります。その運用に、3つの条件が書かれています6。

金属制限食に置かれている条件
条件 理由
2ヶ月続けて無効なら、速やかに中止する 効かない除去を続ける理由がない
厳格すぎる制限は避ける 微量元素欠乏症をきたす可能性がある
必ず医師の指導のもとで行う 制限する対象に必須金属が含まれるため

ここに「期限」があることに注目してください。始めるときに、やめる条件が決まっています。

制限の対象になるのは、豆類、木の実、穀類、チョコレート、ココア、紅茶、貝類、レバー、胚芽6。そのまま鉄・亜鉛・銅の供給源です。減らす対象が、そのまま栄養の供給源になっている。だから期限が要ります。

不耐性の欄に何十品目も並んだときも、構造は同じです。金属の側でも、この順番が決まっています——先に食事を2ヶ月、それで動かなければ次を考える。先に全部を外す、という手順はどこにも出てきません。

日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン2021』は、食物経口負荷試験によって完全除去を回避することを推奨度1として示しています2。食物経口負荷試験とは、医療機関で少量から実際に食べてみて、どこまでなら症状が出ないかを確かめる検査です。

そこで使われるのは、食べるか食べないかの二択ではなく、量の段階です。

食物経口負荷試験で使われる量の段階。少量・中等量・日常摂取量の三段階で確かめる
「食物経口負荷試験の手引き2020」による総負荷量の例。牛乳なら少量1〜3mL、中等量10〜50mL、日常摂取量100〜200mLと段階が置かれています2。

診断がついたアレルギーですら、いま目指されているのは「全部やめない」ことです。

これは不耐性についての推奨ではありません。ただ、確かめる手段があって診断もついている側でさえ完全除去を避ける方向にあるなら、診断のついていない「合わない」に対して、いきなり完全除去から入る理由は見当たりません。

自分の感覚だけでは、犯人を決められない

「この食品で不調になる」という自覚が、実際にその食品によるものかどうか。ここは、思っているより難しいところです。

英国で成人20,000人に尋ねた調査では、食物不耐性を自覚していた人は約20%でした。そのうち希望者に対して、本人にも研究者にも中身が分からない状態で確かめたところ、実際に再現性のある反応が出たのは1.4〜1.8%でした3。

グルテンでも同じことが起きています。自分でグルテンが合わないと考えている人を対象にした試験で、グルテンに特異的な反応が確認できたのは8%でした4。この構造は別の記事で詳しく扱いました。

症状は実際に起きています。難しいのは、そこから原因を一つに名指しするところです。

だから、確かめる手順が要ります。思い当たった食品をそのまま犯人と決めて除去を広げると、症状は残ったまま、食べられるものだけが減ります。

結果に並んだ品目も同じです。そのまま除去リストとして使うのではなく、どれから確かめるかの順番を決める手がかりとして使うほうが、外れが少なくなります。

では、どう確かめるか

この手順には、診療ガイドラインに載っている形があります。低FODMAP食は、続ける食事ではなく、合わないものを見つけるための手順です。期間を決めて減らし、1つずつ戻して比べます。

手順は単純です。

1. いま実際に困っている症状があるか

ここから始めます。症状がなく日常生活で困っていない場合は、結果だけを理由に食生活を一度に大きく変える必要はありません。検査結果に項目が並んでいることと、症状があることは別です。

2. 心当たりのある1〜2品目に絞る

結果に並んだ順ではなく、自分の実感で選びます。同時に複数を変えると、何が効いたのか分からなくなります(一度に一つだけ変える)。

3. やめて、戻して、比べる

外して記録し、そのあと戻して記録します。1回では偶然と区別がつきません。可能なら、もう一度繰り返します。

外す期間に決まった正解はありません。日をまたいで出る症状なら2週間ほどが実務的な目安になりますが、大事なのは長さより、戻したときに症状が返ってくるかどうかまで見ることです。やめて楽になっただけでは、その食品のせいだと決められません。

見るのは三つです。量(少しなら平気か、たくさんだと出るか)、時間差(食べてすぐか、翌日か)、再現性(毎回同じことが起きるか)。この三つが揃うと、対応関係の確からしさが上がります。

4. 記録は日付と時刻で残す

「なんとなく調子が悪い」では比べられません。何を、いつ、どれだけ食べて、いつ、どんな症状が出たか。検査値が動いていないとき、記録できるのは症状のほうだけです。

自分で試さないほうがいい場合

次に当てはまる場合は、この手順を自分で行わないでください。

自己判断で除去・再開を行わないほうがよい場合
状況 理由
じんましん、唇や喉の腫れ、息苦しさ、繰り返す嘔吐がある 免疫が関わる反応の可能性。再開時に強い反応が出ることがある
子どもの食事 除去が成長と栄養に影響しうる。医師・管理栄養士と決める
妊娠中・授乳中 必要量が変わる時期にあたる
すでに食べられる食品が少ない さらに外すと栄養の幅が確保できない
体重が意図せず減っている、発熱が続く、血便がある 食品とは別の原因を先に確かめる必要がある

免疫が関わる側は、別の枠になる

「合わない」の中身が免疫の側なら、確かめ方も対応も変わります。検査ごとに答えている問いが違うのは、ここでも同じです。

食品との関係を確かめる主な方法
調べたいこと 方法
免疫が関わるアレルギーか 特異的IgE検査、皮膚プリックテスト
どこまでなら食べられるか 食物経口負荷試験
乳糖を分解できているか 呼気水素試験
セリアック病か 血液の抗体検査、内視鏡

一方、食物に対するIgG抗体を測る検査を見かけることがありますが、欧州アレルギー・臨床免疫学会のタスクフォースは2008年、これを食物アレルギーの診断ツールとして推奨しないという立場を示しています5。IgGは、その食品を食べていることを反映する正常な反応でもあるためです。

減らすのではなく、絞る

検査結果に多くの品目が並ぶと、選択肢が減ったように感じます。ただ、そこに書かれているのは「食べてはいけないもの」の一覧ではありません。

実際に困っている症状があるなら、確かめる対象は1つか2つで足ります。症状がなければ、結果だけを理由に食生活を一度に大きく変える必要はありません。乳糖不耐症のように機序がはっきりしている例でも、量によって出方が変わります。

食べられるものを減らす方向ではなく、対象を絞る方向へ。結果の使い方としては、そちらのほうが手戻りがありません。

参考文献・参考資料

  1. Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. New England Journal of Medicine. 2015;372(9):803-813. doi:10.1056/NEJMoa1414850 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25705822/
  2. 海老澤元宏. ガイドラインのワンポイント解説「食物アレルギー診療ガイドライン2021 小児〜成人まで」. アレルギー. 2022;71(10):1195-1200. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/71/10/71_1195/_pdf/-char/ja ガイドライン本体:日本小児アレルギー学会『食物アレルギー診療ガイドライン2021』協和企画, 2021年(Minds)
  3. Young E, Stoneham MD, Petruckevitch A, Barton J, Rona R. A population study of food intolerance. Lancet. 1994;343(8906):1127-1130. doi:10.1016/s0140-6736(94)90234-8 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7910231/
  4. Biesiekierski JR, Peters SL, Newnham ED, Rosella O, Muir JG, Gibson PR. No effects of gluten in patients with self-reported non-celiac gluten sensitivity after dietary reduction of fermentable, poorly absorbed, short-chain carbohydrates. Gastroenterology. 2013;145(2):320-328.e3. doi:10.1053/j.gastro.2013.04.051 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23648697/
  5. Stapel SO, Asero R, Ballmer-Weber BK, et al. Testing for IgG4 against foods is not recommended as a diagnostic tool: EAACI Task Force Report. Allergy. 2008;63(7):793-796. doi:10.1111/j.1398-9995.2008.01705.x https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18489614/
  6. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

本記事は検査結果の扱い方と、確かめ方の手順を整理したものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・サプリメントの効果を示すものでもありません。

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