「合わない食品」を、思い込みで増やさないために

「合わない食品」を盲検で調べる 申告した食品 一致しない プラセボ 症状が出る プラセボで最も症状が重かった人が22名いた試験がある

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同じランチを食べて、片方は午後ずっとお腹が張っている。もう片方は何ともない。この差は、体の強さの差ではありません。

「合わない食べ物」を探すときは、原因を食品の側に求めることになります。ただ、本人にも研究者にも中身が分からない状態で確かめた研究を並べると、話はもう少し込み入っています。

自覚と、検査結果は一致しない

自己申告では約20%が食物不耐があると答えたのに対し、二重盲検の食物負荷試験で確認できたのは1.4〜1.8%だったことを示す棒グラフ
英国の7,500世帯規模の住民調査と、そこから93名が進んだ二重盲検プラセボ対照食物負荷試験1。対象は8食品、1994年の調査です。

では、どこでずれるのか。それが分かる試験があります。

「小麦が合わない」の正体を、どう突き止めるか

この対応関係のずれが、きれいに検証された例があります。

自分でグルテンが合わないと考えている人たち(セリアック病は除外済み)を対象に、2013年に、本人にも研究者にも中身が分からないようにした試験が行われました。まず低FODMAP食にすると、参加者全員の消化器症状が一貫して改善しています。ところがその後、グルテンを負荷しても、対照のホエイを負荷しても、同じように症状が悪化しました。グルテンに特異的な反応が見られたのは8%だけです2。

FODMAPは、小腸で吸収されにくく大腸で発酵する糖のまとまりです。小麦、タマネギ、リンゴ、牛乳などに多く含まれます。

2018年の試験はさらに踏み込んでいます。同じ集団に、グルテン・フルクタン・プラセボを盲検で割り付けたところ、症状が最も強く出たのはフルクタンで、グルテンとプラセボのあいだには差がありませんでした3。

個人ごとに最も症状が重かった条件の内訳。グルテン13名、フルクタン24名、プラセボ22名を示す棒グラフ
自己申告のグルテン不耐59名に、グルテン・フルクタン・プラセボを盲検で割り付けた試験3。プラセボで最も症状が重かった人が22名いました。

「出るかもしれない」という予想が、症状を作る

この「プラセボでも症状が出る」現象は、ノセボ効果と呼ばれます。

グルテン負荷を行った二重盲検試験10件(成人1,312名)をまとめた解析では、グルテン不耐を自認する231名のうち、グルテン特異的な症状を示したのは38名(16%)でした。そしてそのうち約40%は、プラセボでも同等かそれ以上の症状を示していました4。

期待は、実際に症状を生みます。プラセボが「気のせい」で片づかないのと同じです。

反応が分かれるのは、不調に限りません。食後に眠くなるかどうかも、同じ食事で人によって違うことが観察されています。

食品ではなく、量の問題であることが多い

もうひとつ、見落とされやすい軸があります。量です。

果糖吸収不良を伴う過敏性腸症候群の患者を対象にした無作為化プラセボ対照試験では、果糖・フルクタンの再負荷で症状が誘発され、その出方は用量に依存していました5。

「合う/合わない」の二択で考えると、少量なら平気だった可能性が見えなくなります。乳糖不耐症で閾値を探るのと同じ考え方が、ここでも使えます。

では、なぜ人によって違うのか

ここまでを踏まえると、個人差を生む要素は少なくとも4つあります。

同じものを食べて反応が分かれる理由
要素 内容
量 閾値は人によって違う。同じ食品でも、食べた量で結果が変わる
消化・吸収の能力 酵素の働きや吸収の効率に個人差がある
腸内細菌 吸収されなかった糖質を何がどう発酵させるかで、発生するガスが変わる
感じ方 同じ刺激でも、それをどれくらい強く感じるかに差がある

4つ目は軽視されやすいのですが、実測されています。不安や過敏性腸症候群に伴う内臓知覚過敏がある人は、消化能力とは独立に、症状が出るリスクが高くなります6。

原因は、食品の中だけにあるわけではありません。「食べると不調」を一つの現象として扱えない理由は、ここにもあります。

自分で確かめるときの、最低条件

研究の設計をそのまま真似することはできませんが、考え方は借りられます。

一度に一つだけ変える。パンとコーヒーを同時にやめれば、どちらが効いたのか分かりません。

やめて終わりにせず、戻して再現するかを見る。改善が偶然や体調の波でないことは、この手順で確かめられます。

ゼロか百かにしない。量を変えて、どこから症状が出るかを見ます。

そして記録する。何を、どれくらい、いつ食べて、いつ症状が出たか。記憶は都合よく編集されます。

除去食を試す枠に入らないもの

体重が意図せず減っている。血便がある。飲み込みにくい。夜間に症状で目が覚める。発熱を伴う。これらは食物不耐の枠に収まりません。除去食で確かめようとすると、原因が別にあるまま時間だけが過ぎます。

また、複数の食品を長期に除去すると栄養が偏ります。確かめる範囲を広げすぎないほうが、結果として早く終わります。

処理の速さにも、差がある

この記事で見てきたのは、量・消化・腸内細菌・感じ方の違いでした。もう1つ、入ったものを処理する酵素の働きにも、遺伝子型による差があります。

ただし確立しているのは薬とアルコールについてで、食品一般に同じように当てはめられる段階ではありません。

犯人が一人とは限らない

候補が何十品目も並んだときは、なおさらです。

除去を実際に運用している診療科には、期限があります。皮膚科が金属制限食を指導するときは「2ヶ月続けて無効であれば速やかに中止する」と決められています。理由は、制限の対象に必須の栄養素が含まれるからです。

1品目ずつ、期限を決めて、やめて戻す。候補が多いほど、この形を崩さないほうが早く終わります。全部を一度に外すと、当たっていても外れていても、同じ結果に見えます。

「あの食品が合わない」という説明は分かりやすい。原因が一つに定まり、対処も決まります。

けれど盲検下で調べると、量・消化・腸内細菌・感じ方が絡み合っていて、さらに「出るかもしれない」という予想までが症状を作っていました。

同じものを食べて平気な人がいるのは、その人が丈夫だからではなく、この4つの組み合わせが違うからです。自分の組み合わせを知るほうが、犯人の名前を一つ決めるより役に立ちます。

参考文献・参考資料

  1. Young E, Stoneham MD, Petruckevitch A, Barton J, Rona R. A population study of food intolerance. The Lancet. 1994;343(8906):1127-1130. doi:10.1016/s0140-6736(94)90234-8 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7910231/
  2. Biesiekierski JR, Peters SL, Newnham ED, Rosella O, Muir JG, Gibson PR. No effects of gluten in patients with self-reported non-celiac gluten sensitivity after dietary reduction of fermentable, poorly absorbed, short-chain carbohydrates. Gastroenterology. 2013;145(2):320-328.e3. doi:10.1053/j.gastro.2013.04.051 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23648697/
  3. Skodje GI, Sarna VK, Minelle IH, et al. Fructan, Rather Than Gluten, Induces Symptoms in Patients With Self-Reported Non-Celiac Gluten Sensitivity. Gastroenterology. 2018;154(3):529-539.e2. doi:10.1053/j.gastro.2017.10.040 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29102613/
  4. Molina-Infante J, Carroccio A. Suspected Nonceliac Gluten Sensitivity Confirmed in Few Patients After Gluten Challenge in Double-Blind, Placebo-Controlled Trials. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2017;15(3):339-348. doi:10.1016/j.cgh.2016.08.007 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27523634/
  5. Shepherd SJ, Parker FC, Muir JG, Gibson PR. Dietary triggers of abdominal symptoms in patients with irritable bowel syndrome: randomized placebo-controlled evidence. Clinical Gastroenterology and Hepatology. 2008;6(7):765-771. doi:10.1016/j.cgh.2008.02.058 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18456565/
  6. Misselwitz B, Butter M, Verbeke K, Fox MR. Update on lactose malabsorption and intolerance: pathogenesis, diagnosis and clinical management. Gut. 2019;68(11):2080-2091. doi:10.1136/gutjnl-2019-318404 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31427404/

本記事は研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。自己判断で複数の食品を長期に除去すると栄養が偏ることがあります。

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