「溜まっている」より先に、これから入る量を見る

体内で半分になるまでの時間 水銀 約2ヶ月 鉛(血液) 約1ヶ月 カドミウム 20〜50年 どこに溜まるかで、出ていく速さが変わる

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「溜まる」と言うとき、どこに溜まるかで、出ていく速さが100倍以上変わります。

水銀は、体内の量が半分になるまで約2ヶ月1。カドミウムは、腎皮質での生物学的半減期が20〜50年と推定されています2。

違いは、金属の毒性ではありません。体のどこに置かれるかです。

同じ「蓄積」でも、時間の桁が違う

検査の蓄積の欄には9つの金属が並びますが、この欄の中で、時間の性質がまったく違うものが混ざっています。

水銀の半減期は約2ヶ月、鉛は血液で28〜36日、カドミウムは腎皮質で20〜50年と対数目盛りで示した図
半減期を並べると、対数目盛りでないと同じ図に載りません123。
物質ごとの、溜まる場所と半減期
物質 主に溜まる場所 半減期
水銀 — 体内の量が半分になるまで約2ヶ月1
鉛 血液・軟部組織のあと、骨へ緩慢に再分布 血中・軟部組織で約28〜36日。骨ではずっと長い3
カドミウム 腎皮質(体内負荷量の1/3)、肝臓・筋肉(1/4) 腎皮質で20〜50年2

カドミウムについて、資料はさらにこう書いています。「脳、脂肪組織、骨への蓄積は、非常に少ない」2。行き先が、かなりはっきり決まっています。

腎臓の「回収する」働きが、逆に出る

カドミウムが腎皮質に留まる理由が、資料に書かれています。

(カドミウムは)近位尿細管で再吸収されて腎皮質に蓄積。非常に微量のカドミウムが尿から少しづつ排泄される2

腎臓は1日に200リットルを濾過して、そのほとんどを回収しています。尿として出ていくのは1%未満。この「回収する」働きが、カドミウムでは留まる方向に働きます。

そしてカドミウムの耐容週間摂取量は、その腎皮質への影響を指標に設定されています。溜まる場所と、影響が出る場所が同じです。

年齢で、数字が変わる

この分野には、年齢によって値が変わるものがいくつかあります。

年齢による違い
物質 違い
鉛 食事中の鉛の吸収率は成人で約10%、幼児・小児で50%。生体内に留まる比率も成人より小児で高い3
カドミウム 日本人の腎皮質の蓄積量は50〜60歳をピークとし、それ以降は減少。一方、肝臓では年齢依存的に増加2
アルミニウム 上限が体重あたりで決まるため、体重の軽い小児で比が上がる

鉛の吸収率が成人の5倍というのは、大きな差です。同じ量が口に入っても、体に入る量が5倍違うということになります。

一方でカドミウムについては、「胎盤をほとんど通過しないため、胎児や新生児の負荷量は無視できる」とされています2。物質ごとに、話が違います。

入口によっても、入る量が違う

もう1つ、経路ごとの差があります。

経路と、入り方
経路 分かっていること
経口 鉛は成人で約10%、小児で50%が吸収される3。ニッケルは1〜10%で、90〜99%は便として通過
経皮 鉛の経皮吸収はほとんどない3。酸化チタンも角層の外層より奥へは行かない
吸入 肝臓の作り変えを経由せず、直接全身へ

「体に入ってくる」は、経路と物質の組み合わせで、まったく違う話になります。

だから、入口を閉じたときの効き方も違う

ここが、この記事の実用的な結論です。

入口を1つ選んで閉じるという手順は同じでも、結果が見えるまでの時間が物質によって違います。

入口を閉じたときに、何が起きるか
物質 起きること
水銀 2ヶ月で、体内の量が半分に近づきます。厚労省が、妊娠に気づいた段階から摂取量をコントロールすることで「一定の効果が期待される」としているのはこのためです1
鉛 血液の側は1ヶ月ほどで動きますが、骨に移った分は、その速さでは動きません
カドミウム すでに溜まった分は、減るのを待てる時間ではありません。効くのは、これから入る量のほうです

つまり「デトックス」で減らせるかどうか以前に、物質ごとに減る速さが決まっています。

汗については、尿に匹敵する排泄が報告されている一方で、測り方が確立していません。食べもので排泄が動いた人の試験もありますが、測っているのは尿に出た量です。どちらも、この半減期の枠組みの中で意味を持ちます。

「溜まっている」より、「これから入る量」

結果に蓄積の欄があると、視線はすでに溜まっている量に向きます。

ただ、ここまで見たとおり、すでに溜まった分に対してできることは、物質によってかなり限られています。カドミウムの20〜50年という数字は、そういう意味です。

対して、これから入る量は、今日から変えられます。

調理で9割減らせるものがあります。本数で数えられる入口があります。最初の数分を流すだけで変わるものがあります。鏡で見れば分かる入口があります。

時間の向きが違います。溜まった分は過去の結果で、入る量はこれからの選択です。

参考文献・参考資料

  1. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」Q&A(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-b.pdf
  2. 内閣府食品安全委員会「食品から摂取されるカドミウムの健康影響評価」(2008年7月3日)。ヒトにおけるカドミウムの動態 https://www.fsc.go.jp/hyouka/hy/hy-iinkai240-cadmium.pdf
  3. 厚生労働省 薬事・食品衛生審議会「鉛の毒性に関する知見について」資料12(平成18年6月13日) https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/06/dl/s0613-7l.pdf

本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・食事法・施術の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。記載した半減期は推定値であり、条件によって異なります。

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