寝る前のコーヒー1杯は、すでに線を超えている

カフェイン|海外が出している目安 1日あたり 400mg 1回あたり 200mg 就寝直前 100mg 日本は目安を示していない。個人差が大きいため

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日本は、カフェインの1日の目安を示していません。感受性の個人差が大きく、健康への影響を正確に評価することが難しいから、というのがその理由です。

数字を出しているのは海外で、健康な成人は1日400mg・1回200mgでほぼ一致しています。コーヒーなら200mLのマグカップで約120mg、3杯強です。

ただし寝る前の1杯は、すでに別の線を超えています。就寝直前の100mgで睡眠障害が起きうる、という報告があります。

日本が数字を出していない理由

農林水産省のカフェインのページには、こう書かれています。「日本では、明確な基準や具体的な摂取量の目安は示していないものの、海外における情報に基づき、農林水産省のほか、以下の機関から情報発信をしています」1。

内閣府食品安全委員会のファクトシートは、もう一歩踏み込んで書いています。「カフェインに対する感受性は個人差が大きいため、健康に及ぼす影響を正確に評価することは難しく、カフェインの一日摂取許容量(ADI)は設定されていません」2。

調べた結果、一つの数字にすると実態から外れるという判断になった、ということです。同じ量で眠れなくなる人と、何ともない人がいます。

同じものを食べても反応が人によって違うのと同じで、集団の平均で線を引いても、その線が自分に当てはまる保証はありません。

海外の数字は、そろっている

一方、海外の機関は具体的な値を出しています。しかも、健康な成人についてはほぼ一致しています1。

各機関が示しているカフェイン摂取量の目安(上限)
機関 健康な成人 妊婦・授乳婦
欧州食品安全機関(EFSA)2015年 1日400mg/1回200mg 1日200mg
米国食品医薬品局(FDA) 1日400mg かかりつけ医に相談
カナダ保健省 1日400mg(18歳以上) 1日300mg
オーストラリア・ニュージーランド食品基準局(FSANZ) 1日400mg/1回200mg(18歳以上) 1日200mg
世界保健機関(WHO)2016年 — 1日300mg以上で摂取量を減らすよう注意喚起

成人の1日400mgは、4つの機関で一致しています。分かれるのは妊婦の値で、200mgと300mgに割れています。18歳未満については、体重1kgあたり2.5〜3mgで示されています1。

400mgは、何杯なのか

ここを、日本の数字で換算します。文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』の値です1。

100mLあたりのカフェイン量。玉露160mg、コーヒー60mg、紅茶30mg、せん茶20mg
浸出液100mLあたりのカフェイン量1。ほうじ茶・ウーロン茶も20mg、番茶は10mgです。玉露は茶葉10gを60℃の湯60mLで2.5分という濃い出し方のため、この値になります。

いちばん濃いのは玉露です。コーヒーの約2.7倍。一度に飲む量は少なくても、「お茶だから軽い」とは言えません。

コーヒーは60mg/100mL。200mLのマグカップで約120mgになります。400mgは3杯強という計算です。

エナジードリンクや眠気覚まし用の飲料は、農林水産省が2026年7月に市販12製品の成分表示を調べたところ、1本あたり50〜170mgでした1。製品によって3倍以上の幅があります。

夜、眠れないのはどの量からか

就寝直前であれば、100mgから睡眠に影響が出ることがあります。1日の総量とは別の話です。

オーストリア保健・食品安全局(AGES)が2017年に公表したエナジードリンクの健康リスク評価は、こう述べています。「就寝直前に、1回当たり100mg(体重70kgの成人の場合:約1.4mg/kg体重)のカフェイン摂取は、一部の成人で睡眠障害を引き起こす可能性がある」2。

カフェイン量の目安。就寝直前100mg、コーヒー1杯120mg、1回の目安200mg、1日の目安400mg
各機関が挙げている量と、コーヒー1杯(200mLのマグカップ)の位置12。1日の上限にはまだ余裕があっても、寝る前の1杯はすでに睡眠に影響しうる量を超えています。

1杯で超えます。1日の総量では余裕があっても、飲んだ時刻のほうで効いてくる、ということです。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)も、「一部のヒトはコーヒー1杯でも睡眠障害を生じることもある」と書いています2。

公的な睡眠指針が見ている「質」は、朝の休養感でした。寝つきや中途覚醒に心当たりがあるなら、杯数より最後の1杯が何時だったかのほうが確かめやすい項目です。

知らないうちに重なる

カフェインが入っているのは、コーヒーと茶だけではありません。農林水産省は、風邪薬・眠気防止薬・酔い止め薬といった市販の医薬品にも含まれていることがあると書いています1。

そのうえで、次の2つを挙げています1。

  • カフェインを含む医薬品を服用するときは、エナジードリンクやコーヒー、お茶と一緒に飲むことを避ける
  • エナジードリンクなどカフェインを多く含む飲料と、アルコールを一緒に摂らない

後者について、米国疾病予防管理センター(CDC)は理由を説明しています。カフェインがアルコールによる機能低下を隠すため、思った以上に飲んでしまう可能性がある。そしてカフェインはアルコールの代謝に影響しないので、血中のアルコール濃度は下がりません1。

お酒を飲んだ日の睡眠にも別のことが起きているので、この2つが重なった日は、翌朝の状態が読みにくくなります。

粉末は、まったく別の話

高純度・高濃度のカフェイン粉末は、飲み物とはまったく別の話です。含まれる量の桁が違います。

米国食品医薬品局(FDA)は、高純度のカフェイン粉末では小さじ1杯にコーヒー28杯分、液体の高濃度製品では半カップでコーヒー20杯分以上のカフェインが含まれると説明しています1。

安全な量と有害な量の差が非常に小さく、台所用の計量器具では正確に量れない。これを理由に、FDAは2018年、粉末や液体の高純度・高濃度カフェインを大量包装で消費者に直接販売することを違法とみなすガイダンスを出しました1。

ドイツでは、ティースプーン2杯(約9g)の高濃度カフェイン粉末を摂取した若い女性が急性中毒で死亡した例が報告されています1。

自分の感受性のほうを見る

この記事で見てきた数字の作られ方は、他の物質と同じ形をしています。

食品添加物の一日摂取許容量は、動物実験で影響が出なかった量を100で割って作られています。カドミウムの耐容週間摂取量は、腎臓への影響を指標に置かれています。上限の数字には、必ず「何を守るために置いたか」があります。

カフェインの場合、日本には上限値が設定されていません。だからこの記事で並べたのは、他国の機関が置いた数字でした。数字を見るときは、誰が、何を守るために置いたかを一緒に見ます。

日本に数字がないのは、決めていないからではなく、一つの数字では合わないという判断の結果でした。

だとすると、使える情報は2つになります。ひとつは、海外機関が示している400mgという枠。もうひとつは、自分がその枠のどこで反応するかです。

コーヒー1杯で眠れなくなる人がいることは、公的な資料にも書かれていました。その場合、正しい上限は400mgではありません。一度に一つだけ変えて、変化を記録する。最後の1杯の時刻を2時間早めてみて、朝の感覚が変わるかを見る。確かめ方はそちらになります。

めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠、下痢や吐き気。これらは農林水産省が過剰摂取の影響として挙げている症状です1。減らして消えるならカフェインが原因で、消えないなら別のものです。そこは自分で切り分けられます。

参考文献・参考資料

  1. 農林水産省「カフェインの過剰摂取について」(作成 2015年12月25日/最終更新 2026年8月28日) https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem/caffeine.html
  2. 内閣府食品安全委員会「ファクトシート 食品中のカフェイン」(作成 2011年3月31日/最終更新 2018年2月23日) https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf

本記事は公的機関の公開資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・飲料・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。カフェインへの感受性には大きな個人差があり、記載の数値がそのまま当てはまるとは限りません。

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