「デトックス」の広告を、どう見分けるか

解毒の第II相 材料がある 回る 材料が足りない 滞る くっつける材料が足りなければ、処理は滞る

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体が不要なものを処理する仕組みは実在します。そしてその働きは、材料で決まります。第II相でくっつける材料が足りなければ、処理は滞ります。

つまり「出す力」は、汗や断食で上げるものではありません。足りていれば回り、足りなければ落ちる。断食で「臓器を休ませる」という発想が据わりが悪いのは、材料まで減るからです。

一方、商品や施術の「デトックス」に物質名が書かれていないなら、出たかどうかは誰にも確かめられません。この二つは、同じものを指していません。どこで食い違うのかを見ていきます。

体は、外から入ったものをどう扱っているのか

食べ物や薬、環境中の化学物質など、体の外から入ってきた物質は、まとめて「異物」と呼ばれます。これらの多くは脂に溶けやすい性質を持っていて、そのままでは尿に混ぜて捨てられません。水に溶けにくいものは、腎臓でろ過されても再吸収されてしまいます。

そこで体は、化学的に作り変えてから捨てるという方法をとっています。この作業を担う肝臓と腎臓が実際に何をしているのかは、別に整理しました。この一連の変換は生体内変換(biotransformation)と呼ばれ、大きく二つの段階に分けて説明されるのが一般的です1。

第一相では、分子に手をかけて反応しやすい部分を作ります。第二相では、そこに別の分子をくっつけて水に溶けやすくします。こうして水に馴染む形になったものが、尿や胆汁を通って外へ出ていきます1。

注意したいのは、第一相の生成物が必ずしも無害ではないことです。反応性が高まった中間体が、かえって毒性を持つ場合もあります。「解毒」という言葉から連想される、毒を無毒にする一方向の作業とは、少し様子が違います。処理経路であって、浄化装置ではありません。

「毒素が溜まる」と言うとき、何が想定されているのか

デトックスをうたう情報の多くは、体内に何が溜まっているのかを具体的に述べません。「毒素」「老廃物」といった言葉が使われますが、何という物質で、どこに、どれだけあるのかは示されないことが多いのです。

実際に体内に蓄積し、測定もできる物質は存在します。残留性有機汚染物質と呼ばれる一群や、鉛・カドミウム・水銀・ヒ素といった重金属がそれにあたります。これらは脂肪組織や骨に長くとどまることが知られていて、量を測る方法もあります。

そして、輪郭のない「毒素」と決定的に違う点がもう1つあります。これらには、時間の数字があります。

厚生労働省は水銀について、「体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄されます。その体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月です」と書いています4。だから同じ文書は、妊娠に気づくのが遅れた場合について「妊娠に気づいた段階から水銀の摂取量をコントロールすることで一定の効果が期待される」としています。

ニッケルについても数字があります。経口で入った量のうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は便として出ていきます5。

「溜まる」と「出る」は、物質ごとに速さが分かっているということです。何日で半分になるか、何割が吸収されるか、どこから出ていくか。輪郭のない「毒素」には、この数字がありません。入口ごとの一覧は別に整理しました。

「溜まるものがある」こと自体は事実です。問題は、その具体的な物質の話と、輪郭のない「毒素」の話が、同じ言葉でつながれてしまうところにあります。

デトックス食は、実際に検証されているのか

市販のデトックス食については、これを支持する臨床的な根拠はきわめて乏しい。2015年に発表された総説の結論です2。デトックス食が必要なのか、何を含むのか、効果があるのか、危険はないのかを検討したものです。

市販のデトックス食が肝臓の解毒を高め、残留性有機汚染物質を排出したとする臨床研究はいくつか存在します。ただし著者らによれば、それらは方法論に欠陥があり、標本数も小さいとされます。コリアンダー、海苔、オレストラといった食品に解毒作用を示唆する予備的な知見もありますが、その大半は動物で行われた研究です2。

そして、著者らの知る限り、市販のデトックス食の有効性を評価した無作為化比較試験は行われていません2。

ただし、市販品ではない定量された介入では、人での無作為化試験があります。大気汚染の大きい地域で291人を対象に行われた12週間の試験で、ブロッコリースプラウト飲料を飲んだ群はベンゼン由来の代謝物の尿中排泄が61%増えました。測っているのは尿に出た量で、健康アウトカムではありません。

動物での結果を人に当てはめるときに何が起きるかは別の記事で扱いましたが、ここでも同じことが起きています。仕組みとしてありうる話が、人で確かめられないまま製品の説明になっています。

汗については、意見が割れている

「汗をかいて出す」という考え方は特に広く共有されています。この点は研究のあいだでも評価が分かれていて、片方だけを紹介すると誤解を招きます。

シアーズらは2012年、ヒ素・カドミウム・鉛・水銀の汗中濃度を報告した研究を系統的に集め、122件から24件を選んで統合しました。結果として、曝露や体内蓄積が多い人では、汗の濃度が血漿や尿の濃度を上回ることが一般的であり、皮膚からの1日排泄量が尿からの排泄量に匹敵する、あるいは上回る場合があると報告しています3。

著者らは、発汗は有害元素の排出手段として検討に値するとしつつ、適切な規模の試験を含む研究が、安全で効果的な手順を確立するために必要だと結論しています3。

ただし、この総説自体が指摘しているとおり、対象集団も汗の採取方法も濃度も研究によって大きく異なります。汗に含まれる濃度が高いことと、体全体の負荷を意味のある程度まで下げられることは、別の問題です。汗として出る量には限りがあるので、濃度ではなく総量を見ないと判断できません。

現時点で言えるのは、汗に有害元素が含まれること自体は複数の研究で観察されている、というところまでです。それが健康上の意味を持つ規模なのかについては、まだ答えが出ていません。

そしてもう1つ、同じレビューが書いていることがあります。汗の金属は、血漿由来だけでなく、皮膚の層に由来するものも含まれます。だから「汗に出た」ことは、「体の中から出てきた」ことと同じではありません。

肝臓と腎臓は、休ませるものなのか

デトックスの説明でしばしば見かけるのが、「臓器を休ませる」という表現です。

ただ、肝臓や腎臓は、断食や特定の食事によって作業を止めたり再開したりする器官ではありません。異物の処理は常時進行していて、むしろ栄養状態が悪くなると、第二相でくっつける材料のほうが足りなくなります。何かを控えることが処理能力を高めるのか、下げるのかは、控える内容によって変わります。

この点についても、大規模な検証はほとんど行われていません。「休ませたほうがいい」も「休ませないほうがいい」も、現時点では十分な根拠を伴っていないのです。

言葉を分けてみる

ここまでを踏まえると、「デトックス」という一語が、少なくとも三つの別の話を抱えていることが見えてきます。

「デトックス」という言葉が指しうる三つの水準
水準 内容 現在の位置づけ
生理学的な生体内変換 第一相・第二相を経て異物を水溶性にし排泄する仕組み 確立した知見。ただし常時働いており、外から起動するものではない
特定物質の体内蓄積 重金属や残留性有機汚染物質など、測定可能な物質の負荷 存在は確認されている。減らす方法の有効性は検証途上
商品としてのデトックス デトックス食・飲料・施術など ヒトでの無作為化比較試験は行われていない2

この三つが同じ言葉でつながれているために、確立した生理学の話が、そのまま商品の裏づけとして流用されてしまいます。「肝臓には解毒の仕組みがある」は正しい。しかしそれは、ある製品がその仕組みを高めることの根拠にはなりません。

では、どう考えておくか

「たくさん飲んで出す」も、出どころは同じくらい曖昧です。その数字の出どころを辿ると、意外な経緯が見えてきます。

デトックスをうたう情報に触れたとき、確かめられることは多くありません。それでも、何を出すと言っているのかは探せます。物質名が具体的に書かれているか。どこで測ったのか。比較対象があるのか。

物質名が示されないまま「毒素」とだけ書かれている場合、その主張は検証のしようがない状態にあります。何が減ったかを測れないので、効いたかどうかを誰も確かめられません。検証されていないことと、効果がないことは別ですが、確かめようのない主張は、判断には使えません。

気になる曝露が具体的にある場合──職業上の接触や、住環境の懸念など──は、汎用の「デトックス」ではなく、その物質の測定と評価が先になります。何を減らしたいのかがはっきりしていれば、方法の検討もできます。

そして手をつける順番もあります。仕組みそのものは、物質名まで分かっています。第I相はシトクロムP450による酸化、第II相でグルクロン酸や硫酸をくっつけて水に溶ける形にする。そして水に溶けない物質は、胆汁に乗って便から出ていきます。

入口ごとの数字と、出す側の仕組みは、入ってくるものと、出す力にまとめています。

参考文献・参考資料

  1. Phang-Lyn S, Llerena VA. Biochemistry, Biotransformation. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 最終更新 2023年8月14日. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK544353/
  2. Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686. doi:10.1111/jhn.12286 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25522674/
  3. Sears ME, Kerr KJ, Bray RI. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. Journal of Environmental and Public Health. 2012;2012:184745. doi:10.1155/2012/184745 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3312275/
  4. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」平成17年11月2日(平成22年6月1日改訂)およびQ&A https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-b.pdf
  5. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

本記事は用語と研究状況の整理であり、特定の製品・施術の推奨や否定、個別の診断・治療に代わるものではありません。

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