カテゴリー: 統合医療

  • バイオレゾナンスとは? ― 体の「周波数」から健康を見るという考え方

    バイオレゾナンスとは? ― 体の「周波数」から健康を見るという考え方

    バイオレゾナンスは、体がさまざまな周波数にどう反応するかを測り、その違いから体の状態を評価します。

    聞き慣れない言葉なので、どこまでが確かめられた話なのかも分かりにくくなっています。何を測っている手法で、研究はどこまで進んでいるのかを順に整理します。

    バイオレゾナンスとは?

    バイオレゾナンスは、生体と周波数との共鳴・反応を捉え、体の状態を評価する手法です。

    「bio」は生体、「resonance」は共鳴を意味します。

    共鳴とは、同じ周波数を持つもの同士が反応し合う現象です。

    たとえば、同じ高さの音を持つ2本の音叉を並べ、一方を鳴らすと、触れていないもう一方の音叉も振動します。

    同じ周波数では共鳴し、違う周波数では反応しないことを示す音叉の比較図

    バイオレゾナンスでは、この共鳴という現象を生体の評価に応用します。

    バイオレゾナンスの研究は、20世紀前半の「生体と周波数」の研究を背景に発展し、1970年代にドイツで現在につながる機器や測定法が開発されました6。

    そこから長年にわたり、臓器や組織、物質ごとの反応パターンが蓄積され、現在の機器では、それらを基準データとして利用します。

    たとえば「正常な肝臓」に対応づけられた周波数を生体に与え、どの程度共鳴・反応するかを見ます。

    反応が基準に近ければ、その項目は正常に近い状態として評価する。反応がずれていれば、その項目に乱れがある可能性として評価する。

    正常な肝臓の基準周波数を当てたときの反応の違いを示した図

    つまりバイオレゾナンスは、「どの周波数に、どう反応するか」を比較して体の状態を見ています。

    たとえば肝臓だけでなく、腎臓や腸、特定の栄養素や物質など、機器に登録されたさまざまな基準周波数に対する反応を見ていきます。

    そもそも「周波数」とは何か

    周波数とは、振動が1秒間に何回くり返されるかを表す数字です。

    音、光、電波だけでなく、物質をつくる分子や原子にも振動があります。

    そして、その振動のしかたは物質や構造によって異なります。

    物質をつくる分子や原子が振動し、それぞれ異なる周波数を持つことを示した図

    人の体も例外ではありません。

    心臓では電気信号によって拍動が起こり、脳や筋肉でも電気的な活動が続いています。

    そのため医療では、

    • 心臓の電気活動 → 心電図
    • 脳の電気活動 → 脳波
    • 筋肉の電気活動 → 筋電図

    として、体から出る信号を日常的に測定しています。

    つまり、体を「電気的な信号や振動」から見ること自体は、特別な発想ではありません。

    バイオレゾナンスは、ここからさらに、臓器や物質に対応づけられた周波数への反応を利用して、体の状態を評価します。

    一般的な医療と何が違う?

    血液検査、CT・MRI、診察などで異常を見つけ、病名をつけ、薬や手術などで治療する。これが現在の一般的な医療です。

    一方、バイオレゾナンスは、病気になる前の体の乱れを評価し、未病・予防に活かします。

    つまり、

    「病気を見つけて治す」のが一般的な医療。
    「病気になる前に整える」のが、予防・未病の視点を持つバイオレゾナンス。

    バイオレゾナンスでは何を見る?

    バイオレゾナンスが見ようとするのは、病名ではなく、体の傾向です。具体的には、どこに負担がかかっているか、何に反応しやすいか、どの機能が弱りやすいかを見ていきます。

    たとえば、次のような項目が扱われます。

    • 食品や物質への反応
    • 臓器・器官ごとの状態
    • 栄養の過不足
    • 重金属や化学物質など外から入る負担
    • ストレスや自律神経の状態
    • 腸・肝臓・腎臓など、排出に関わる機能の傾向

    つまり、病気を診断するというより、病気になる前の乱れや負担をとらえ、予防や未病の段階で整えるために使うものです。

    なお、何を項目として出すかは機器によって異なります。同じ「バイオレゾナンス」という名前でも、表示される内容がまったく同じとは限りません。

    研究ではどこまで分かっている?

    人を対象にした研究はあります。ただし、結果は一方向ではありません。

    効果を確認できなかった研究があります。アトピー性皮膚炎の子ども32人を対象にした試験では、本物と見分けのつかない偽の機器を使った群と比べて、差は出ませんでした1。患者にも評価者にも、どちらの機器かを伏せて行われた試験です。

    一方、良い結果を報告した研究もあります。うつ病の患者140人を対象にした研究では、バイオレゾナンスを受けた群でうつの評価点が下がっていました2。ただしこの研究では、参加者をくじ引きで振り分けておらず、偽の機器との比較も行われていません。

    診断への応用になると、評価はさらに厳しくなります。食物アレルギーの検査法をまとめた総説は、皮膚の電気抵抗を測るタイプの検査を「証明されていない検査」に分類し、必要のない食事制限につながりうると指摘しています3。

    確認されていないことを、
    確認されたかのように言うのは、
    また別の問題です。

    米国FDAは2022年、バイオレゾナンスをうたう機器を「がん・糖尿病・脳卒中・アルツハイマー病を治療できる」「60秒で全身をスキャンして原因が分かる」として販売していた企業に、警告を出しています4。対象になったのは、特定の企業による具体的な医療上の主張です。バイオレゾナンスという考え方そのものが否定されたわけではありません。

    整理すると、こうなります。研究はゼロではありません。一方で、標準的な医療検査と同じ精度で診断や治療に使えると言えるだけの根拠は、現時点ではそろっていません。同じ「研究がある」でも段が違うことは、何をもって「エビデンスがある」と言うかで整理しています。

    では、なぜこの考え方に注目するのか

    体から読み取れる情報を増やすことに、意味があるからです。

    現代の医学は、血液、画像、組織、遺伝子など、物質として測れる情報を中心に発展してきました。この方向で分かることは、いまも増え続けています。

    一方で、人の体には電気的な活動もあります。心電図も脳波も、そのごく一部を切り取ったものです。

    生体が持つ電気的な情報を、
    いまより広く健康の評価に使えないか。

    バイオレゾナンスは、この問いに向き合っている領域のひとつです。統合医療が、標準的な医療と他の方法をどう組み合わせるかを考える枠組みであるのと同じで、ここでも問われているのは「代わりになるか」ではなく「何を足せるか」です。

    RESONA-LABではどう使っている?

    RESONA-LABは、病気を見つけるための検査ではありません。日々の食事や生活を見直すための材料として使っています。

    レポートは4つの欄に分かれています。不耐性、体内蓄積、解毒機能(腸・肝・腎)、不足栄養素です。

    この4つは、別々の採点ではありません。入ってくるものと、出す力という1つの問いを、別の角度から見たものです。

    結果に出た項目が医学的に何を示すのかは、レポートにも、この記事にも書いていません。書けるのは、しばらく減らしてみて体調がどう変わるかを試す、その順番の手がかりまでです。

    バイオレゾナンスをどう見るか

    整理すると、4つです。

    • 人の体に電気的な活動があること自体は、医学でも扱われている
    • バイオレゾナンスは、それをもっと広く健康の評価に使おうとする考え方
    • いまは研究の途中で、標準的な医学検査と同じ位置づけではない
    • だから、確立した医療と混ぜずに、別の軸として扱う

    確立した検査の代わりではなく、
    別の角度から体を見るための一つの軸。

    参考文献・参考資料

    1. Schöni MH, Nikolaizik WH, Schöni-Affolter F. Efficacy trial of bioresonance in children with atopic dermatitis. Int Arch Allergy Immunol. 1997;112(3):238-246. PubMed 9066509
      1.5〜16.8歳の入院中の小児32人を、実機群と偽機(シャム)群にランダムに割り付けた二重盲検並行群間試験。皮膚症状スコア、かゆみ・睡眠スコア、アレルギーの血球活性化マーカーで評価。両群とも改善したが、バイオレゾナンスによる上乗せの効果は認められなかった
    2. Mureşan D, Salcudean A, Sabău DC, Bodo CR, Gabos Grecu I. Bioresonance therapy may treat depression. J Med Life. 2021;14(2):238-242. PubMed 34104247
      うつ病患者140人を、バイオレゾナンス単独40人・抗うつ薬併用40人・抗うつ薬単独60人の3群に分け、5週間後のハミルトンうつ病評価尺度を比較。3群とも点数は下がり、群間の差は統計的に有意(p=0.0001)。ランダム割り付けではなく、偽機との比較(盲検)も行われていない単施設の研究
    3. Hammond C, Lieberman JA. Unproven Diagnostic Tests for Food Allergy. Immunol Allergy Clin North Am. 2018;38(1):153-163. PubMed 29132671
      食物アレルギーの診断における標準は経口負荷試験で、血清IgE検査と皮膚プリックテストが代替として認められる、としたうえで、IgG検査・電気皮膚検査(electrodermal testing)・細胞毒性検査・誘発中和法・応用キネシオロジーを「大部分が証明されていない」検査に分類し、不要な除去食につながりうると指摘している
    4. U.S. Food and Drug Administration. Warning Letter: RoyalVibe Health Ltd.(2022年11月18日)FDA Warning Letter 639553 / FDA Safety Communication「Do Not Use RoyalVibe Health, CellQuicken, or Well-Being Reality Ultrasound Medical Devices」FDA
      同社の機器が、がん・1型/2型糖尿病・脳卒中・アルツハイマー病などの治療をうたい、60秒で全身をスキャンして原因を特定できるとして販売されていた点を問題とし、510(k)クリアランスまたはPMAを受けていない医療機器にあたると指摘。警告の対象は、この企業の製品と表示された効能
    5. Lewith GT. Can we evaluate electrodermal testing? Complement Ther Med. 2003;11(2):115-117. PubMed 12801498
      電気皮膚検査をアレルギー検査として用いることについて、根拠は限られており、しばしば誤って提示されているとしたうえで、機器ごとの信頼性・妥当性をどう検証すべきかを論じている
    6. Med-Tronik GmbH(MORA機器の製造元)会社案内 https://med-tronik.de/en/our-company/about-us/
      医師 Franz Morell と Erich Rasche が1970年代前半からバイオレゾナンスの手法を検討し、1977年にドイツで MORA-Therapy を開発した、としている。製造元自身による沿革の記述

    me:LABは、RESONA-LABとサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています(運営について)。本記事は公的資料と査読済み文献の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。バイオレゾナンス検査の結果は、病気の診断を示すものではありません。症状がある場合や治療を受けている場合は、その指示が優先されます。

  • 「効いた気がする」を、次の判断にどう使うか

    「効いた気がする」を、次の判断にどう使うか

    「それはプラセボ効果でしょう」。この一言には、話を終わらせる働きがあります。ただ、この言葉が指しているものは、そこまで単純ではありません。

    ただ、プラセボ効果という言葉が指しているものは、そこまで単純ではありません。何が起きていて、何が起きていないのか。この整理は、補完的な方法を考えるときにも、標準的な治療を評価するときにも効いてきます。

    まず、期待されているほど強くはない

    プラセボに効果はあります。ただし、期待されているほど大きくはありません。それが分かるのは、効果を疑った側の研究です。

    フロビャルトソンとゲッチェは2001年、New England Journal of Medicine に「Is the Placebo Powerless?(プラセボは無力か)」という研究を発表しました。彼らはプラセボ群と無治療群の両方を含む臨床試験を集めて比較しています。プラセボと実薬ではなく、プラセボと「何もしない」を比べたところが要点です1。

    差は小さく、しかも参加者の多い試験ほど小さくなっていきます。規模の小さい試験で結果が大きく出やすいという、よくある偏りの形です1。

    痛みを扱った27試験で、プラセボによる軽減幅は100mmの視覚的アナログ尺度で6.5mmだったことを示す図
    差が確かめられたのは、痛みの強さのように本人が申告する指標を扱った試験でした。血圧や検査値のように機器で測る指標では、差は確かめられませんでした1。

    著者らの結論は、プラセボが強い臨床効果を持つという証拠は全体として乏しい、というものでした。機器で測る指標や「起きた/起きなかった」の判定には効果が確かめられず、本人が申告する指標と痛みでは小さな利益がありうる。臨床試験の外でプラセボを使う正当性はない1。

    効くのは、痛みのような自分で感じる症状に対して、小さい幅で。それが試験から見えている範囲です。

    100mm中6.5mmを、どう受け取るか

    この6.5mmをどう見るか。

    100mmの物差しで6.5mmの改善は、劇的とは言えません。ただ、慢性的な痛みを抱えている人にとって、無視できる差かというと、そうとも言い切れない。数字の大きさをどう受け取るかは、その人が何を抱えているかによって変わります。

    同時に、この平均値の背後には個人差があります。まったく反応しない人と、はっきり変化する人がいて、平均が6.5mmになっている可能性がある。平均が誰のものでもないという問題は、ここにも当てはまります。

    「気のせい」では説明しきれない実験

    プラセボ効果を「効くと信じているから効く」と説明すると、ひとつ困ることが起きます。信じられない状況では効かないはずだからです。

    カプチュクらは2010年、この前提を確かめる試験を行いました。過敏性腸症候群の患者を対象に、プラセボであることを明かしたうえで投与する群と、無治療群を無作為に比較しています2。

    参加者には、それが不活性な物質であることが伝えられていました。それでも、11日目の途中評価でも21日目の終了時点でも、症状の改善はプラセボを飲んだ群のほうが大きいという結果でした。症状の重症度についても、両時点で有意な結果が観察されています2。

    著者らは、欺瞞なしに投与されたプラセボが過敏性腸症候群の有効な治療になりうるとしつつ、さらなる研究が必要だと述べています2。

    この結果は、まだ完全には説明されていません。治療を受けているという文脈、医療者とのやりとり、日々服用するという行為そのもの。そうした要素が関わっている可能性が議論されていますが、どれがどれだけ寄与しているかは分かっていません。

    ひとつ確かなのは、「信じているから効く」という単純な説明では、この実験の結果を説明できないということです。

    臨床試験にプラセボ群がある理由

    ここまでを踏まえると、なぜ試験でプラセボ対照が使われるのかも整理できます。

    ある治療を受けた人が良くなったとき、その変化には複数の要素が混ざっています。治療そのものの作用、症状が自然に軽くなる経過、測定のタイミングによる見かけの変化、そして治療を受けているという文脈の影響。

    プラセボ群は、このうち「治療そのものの作用」以外をまとめて引き受けます。だから、実薬とプラセボの差が、その治療に固有の効果ということになります。

    逆に言えば、プラセボ群のない研究では、これらが分離できていません。「使った人の◯%が改善」という数字が当てにならないのは、比べる相手がないからです。

    まだ整理されていないこと

    逆向きの現象もあります。プラセボで症状が「出る」ノセボ効果は、食物不耐を調べた試験でも観察されています。

    プラセボ効果の機序については、期待や条件づけといった説明が提案されていますが、確立した統一的な説明はありません。

    また、フロビャルトソンらの研究に対しては、方法論をめぐる議論も続いてきました。異なる病気・異なる測り方の試験を一つにまとめることの妥当性や、プラセボの提示の仕方が試験によって違う点などが論点になっています。この分野は決着していません。

    そして、オープンラベル・プラセボの結果がどこまで一般化できるかも分かっていません。過敏性腸症候群という、主観的な症状が中心で変動も大きい対象で得られた結果です。他の疾患で同じことが起きるかは、まだ確かめられていません。

    「気のせい」という言葉が閉じてしまうもの

    実務的に効いてくる場面を1つ挙げます。検査の結果を受け取ったあとです。

    結果を見て、生活を変える。数週間後に調子がよくなった。このとき変わったのは、変えた内容だけとは限りません。結果を受け取ったこと自体、変えようと決めたこと自体が、同じ向きに働きます。

    だから一度に一つだけ変えることに意味があります。二つ同時に変えれば、どちらが効いたのか分かりません。そしてやめて、戻して、また比べる——1回では偶然と区別がつかない、という手順の理由もここにあります。

    「気のせいだった」のではなく、何が効いたのかが分からない状態です。この二つは、次に何をするかが違ってきます。

    誰かの体験を「プラセボでしょう」と片づけるとき、二つのことが同時に起きています。ひとつは、その方法に固有の効果がないと判断していること。もうひとつは、本人が感じた変化を軽く扱っていることです。

    前者は研究で確かめられます。後者は、確かめる対象が違う。痛みが6.5mm分軽くなったことは、その人にとっては実際に起きたことです。

    プラセボ効果が示しているのは、体験と、その体験を生んだ原因が、切り離して考えられる、ということです。効果があったかどうかと、何が効いたのかは、別々に問えます。

    何かを試して調子が良くなったとき、その両方を分けて考えられるかどうかで、次の判断は変わってきます。

    分けるために、1つだけ確かめられることがあります。いつから良くなったか、日付を思い出せるかどうかです。

    始めた翌日から変わったなら、成分が体内で働く時間より早いことがあります。数週間かけて変わったなら、同じ期間に変えた他のこと(睡眠・食事・季節)も候補に入ります。何と比べているかを自分の中で決めておくと、次に試すときの判断が早くなります。

    参考文献・参考資料

    1. Hróbjartsson A, Gøtzsche PC. Is the placebo powerless? An analysis of clinical trials comparing placebo with no treatment. New England Journal of Medicine. 2001;344(21):1594-1602. doi:10.1056/NEJM200105243442106 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11372012/
    2. Kaptchuk TJ, Friedlander E, Kelley JM, et al. Placebos without deception: a randomized controlled trial in irritable bowel syndrome. PLoS ONE. 2010;5(12):e15591. doi:10.1371/journal.pone.0015591 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3008733/

    本記事は研究状況の整理であり、特定の治療法の推奨や否定、個別の診断・治療に代わるものではありません。

  • 統合医療かどうかは、手法ではなく使い方で決まる

    統合医療かどうかは、手法ではなく使い方で決まる

    「統合医療」は、使う人によって指すものが違う言葉です。公的機関の定義から、何を含み、何を含まないのかを確かめます。

    この言葉は、使う人によって指すものが違います。西洋医学に代わる何か、と受け取る人もいれば、東洋医学のことだと考える人もいる。実際にはどちらとも少し違っていて、この言葉には比較的はっきりした定義があります。

    用語を整理することは、それ自体が目的ではありません。ただ、何を指しているのかが曖昧なままだと、期待するものと実際に受けられるものがずれます。ここでは、公的機関がこの言葉をどう定義しているかを確認しておきます。

    「一緒に使う」か「代わりに使う」か

    米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、この分野の用語を整理した文書を公開しています。そこでの区別は、驚くほど単純です。

    主流でないアプローチを、通常医療と一緒に使う場合、それは「補完的(complementary)」。通常医療の代わりに使う場合は「代替的(alternative)」。分ける基準は、手法の中身ではなく、通常医療との関係です1。

    同じ鍼灸でも、標準的な治療と併用すれば補完的であり、標準治療をやめて代わりに行えば代替的になります。呼び名を決めているのは手法ではなく、標準治療と一緒に使うか、代わりに使うかです。

    そのうえで「統合的ヘルスケア(integrative health)」は、通常医療と補完的アプローチを協調のとれたかたちで結びつけるものとされています。複数の介入を組み合わせること、そして人を全体として捉えるケアを目指すことが強調されています1。

    ここから分かるのは、統合医療が「通常医療を置き換えるもの」としては定義されていない、ということです。定義上、通常医療は前提として含まれています。

    何が含まれるのか

    NCCIHは補完的アプローチを、主にどこから働きかけるかで三つに分けています。ハーブ・ビタミン・サプリメント・プロバイオティクスなどの栄養的なもの、マインドフルネスなどの心理的なもの、マッサージや脊椎マニピュレーションなどの身体的なもの1。

    加えて、心理と身体を組み合わせたもの(ヨガ、太極拳、鍼灸)、心理と栄養を組み合わせたもの(マインドフルな食事)といった複合的な分類も置かれています1。

    この一覧を見て気づくのは、範囲がかなり広いことです。科学的な検討が進んでいるものと、ほとんど検証されていないものが、同じ枠の中に同居しています。「統合医療にはエビデンスがある/ない」という言い方が噛み合わないのは、これが特定の手法を指す言葉ではなく、使い方の呼び名だからです。

    「西洋医学 対 東洋医学」で考えると、何が見えなくなるか

    日本では、この分野が東西の対立として語られることが多くあります。近代医学と伝統医学、部分を診る医学と全体を診る医学、というように。

    この対比が広まった理由は分かります。実際、身体をどう捉えるかについて、体系ごとの違いはあります。ただ、この図式を前提にすると、いくつか見落としが生じます。

    ひとつは、上で見た定義が地理や伝統ではなく、通常医療との関係で線を引いていること。マインドフルネスも脊椎マニピュレーションもサプリメントも、東洋のものではありません。

    もうひとつは、検証のされ方が体系ごとにまとまっているわけではないこと。漢方の中にも、比較的検討が進んでいるものとそうでないものがあります。近代医学の中にも、高い確実性の根拠を欠く介入は多く残っています。確からしさは体系の名前ではなく、一つひとつの方法ごとに違います。

    三つめは、対立図式にすると「どちらを選ぶか」という問いになってしまうこと。定義上、統合医療は選択の問題ではなく、組み合わせ方の問題です。

    期待と実際のあいだ

    日本では、厚生労働省が「統合医療」に関する情報発信事業(eJIM)を運営し、補完・代替療法とどう向き合い利用したらよいのかを考えるための、エビデンスに基づいた情報を紹介しています2。公的機関がこうした情報提供を行っていること自体が、この領域の性質を表しています。すでに使っている人がいる。だから、勧めるのでも禁じるのでもなく、判断できるだけの情報を出す。そういう立場です。

    その立場は、eJIM自身の3分の解説でも確かめられます。


    実際、統合医療に関心を持つ理由は人によってかなり違います。標準治療で十分に改善しない症状がある。副作用の負担が大きい。数値だけでなく生活全体を見てほしい。原因がはっきりしないまま経過している。

    これらはどれも切実な動機で、否定されるべきものではありません。ただ、動機が切実であることと、選んだ方法が効くことは別の話になります。

    何かを試して調子が良くなったとき、それがその方法に固有の効果なのかどうかは、考えてみると意外に切り分けが難しいものです。ここで働きやすいのが、確実性への期待でしょう。標準的な医療で「はっきりしない」と言われた人にとって、明快な説明を提示してくれる場所は魅力的に映ります。ただ、説明が明快であることと、根拠が強いことは関係がありません。むしろ、まだ分かっていない領域ほど、断定的な説明が現れやすいのです。

    統合医療の中にも、そういう語られ方をするものがあります。定義に照らせば通常医療と協調するはずのものが、実際には代わりに使われている場合もあります。

    確かめられそうなこと

    何かを検討するとき、確認しやすい点がいくつかあります。通常医療と併用する前提になっているか。標準的な治療をやめることが条件になっていれば、それは定義上「代替的」であって統合的ではありません。

    主治医と共有できる形になっているか。何を、どれくらい、いつから使っているかを伝えられる状態なら、相互作用や重複を確認できます。主治医に言いにくいと感じるなら、なぜそれを使っているのかが自分の中でも整理できていない可能性があります。

    そして、その手法について何がどこまで調べられているか。同じ「統合医療」の枠にあっても、検証の進み具合はまったく違います。枠ではなく、個々の手法で見るしかありません。

    言葉が広いままだと、判断もできない

    統合医療という言葉は、幅が広い。だからこそ、この言葉のまま賛成も反対もできません。含まれているものが違いすぎるからです。

    この考え方が、日本の診療ガイドラインの側から求められている例もあります。起立性調節障害は身体疾患に分類されたうえで、心理社会的な要因を含めて包括的に評価することが求められています。身体か心かで分けない、という姿勢がガイドラインに書かれている珍しい場面です。

    NCCIHの定義に立ち返れば、この言葉が言っているのは「組み合わせて、協調させる」という一点です。何を組み合わせるかは、そこには含まれていません。中身は、その都度こちらが確かめることになります。

    いま関心を持っている方法があるなら、それは通常医療と並べて使うものとして提示されているでしょうか。それとも、代わりに使うものとして語られているでしょうか。この一点を見るだけでも、置かれている場所は見えてきます。

    この媒体が、どこに立っているか

    この記事の基準は、この媒体自身にも当てはめます。

    me:LABは、バイオレゾナンス検査(RESONA-LAB)とサプリメントを提供する株式会社bio medicalが運営しています。同社の監修医師は、表参道ウェルネス統合医療クリニック院長の森嶌淳友医師です(運営について)。

    だから、この記事で書いた3つの確認点は、そのまま自社に返ってきます。通常医療と併用する前提になっているか。主治医と共有できる形になっているか。何がどこまで調べられているか。

    この媒体で、書いていることと書いていないこと
    立場
    検査結果の医学的解釈 書きません。報告書自身が「疾病の診断や治療を目的とするものではない」と記しています
    標準的な治療の代わり 置きません。服用中の薬を自分の判断で減らさないよう、繰り返し書いています
    書いているもの 公的機関・学会・教科書にある数字と、その出どころ。入口・上限・半減期のように、確かめられる形のもの
    書けないもの 特定の製品が何かを改善するという主張。その形式の根拠が存在しないため

    「統合医療だから良い」も「統合医療だから怪しい」も、この記事の立場ではありません。枠ではなく、個々の手法について、どこまで数字があるかを見る。それだけです。

    確かめ方は2つです。まず、いま使っているものが標準治療と併用なのか、代わりなのか。ここで補完的か代替的かが決まります。呼び名を決めているのは手法ではなく、この関係のほうでした。

    次に、その手法単体について誰を対象に、何と比べて、どれくらいの差なのかを探します。「統合医療」という枠に答えはありません。答えがあるのは、鍼なら鍼、サプリメントならその成分の側です。

    参考文献・参考資料

    1. National Center for Complementary and Integrative Health (NCCIH), National Institutes of Health. Complementary, Alternative, or Integrative Health: What’s In a Name? 2021年4月更新. https://www.nccih.nih.gov/health/complementary-alternative-or-integrative-health-whats-in-a-name
    2. 厚生労働省『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』(eJIM)https://www.ejim.mhlw.go.jp/

    本記事は用語の整理であり、特定の療法の推奨や否定、個別の診断・治療に代わるものではありません。