汗で出すことに、どこまで期待できるか

汗に出る金属 出ること 観察されている 出どころ 血漿と皮膚の層 2012年の系統的レビュー。ヒ素・カドミウム・鉛・水銀

執筆者:

カテゴリ:

汗に金属が出ることは、複数の研究で観察されています。ヒ素、カドミウム、鉛、水銀は皮膚を通じてかなりの量が排泄されうる。排泄速度は24時間で尿からの排泄に匹敵するか、上回ると報告された——2012年の系統的レビューの記述です1。

ただし同じレビューが、その汗の出どころについても書いています。「汗には、血漿由来の金属だけでなく、明らかに皮膚の層に由来するものも含まれる」1。

つまり汗に出た金属の一部は、体の中から出てきたものではありません。肌に付いていたものです。だから、汗をかいたら洗い流すことに意味があります。

レビューが実際に見つけたこと

カナダの研究グループが、ヒ素・カドミウム・鉛・水銀の汗中濃度を報告した研究を系統的に集めました。122件の記録から24件が統合の対象になっています1。

金属ごとの報告1
金属 報告されていること
ヒ素 曝露のある人では、皮膚からの排泄が非曝露の対照より数倍高かった
カドミウム 血漿より汗のほうが濃度が高かった
鉛 汗中の鉛は高分子量の分子と結合していた。持久的な運動のほうが、強度の高い運動より高い値だった
水銀 サウナを繰り返した症例報告で、値が正常化した

鉛の1/3から1/2が高分子量の分子と結合していたという観察について、著者らは再現が必要だとしています1。

いちばん効くのは、腎臓が弱っている場合

レビューが、この結果の意味をどこに置いているかが重要です。

「これは、腎機能の低下が有害元素の尿中排泄を制限している場合に、特に関心が持たれる」1。

出口が2つあって、片方が細くなっているとき、もう片方の意味が増す——という構造です。腎臓は1日に200リットルを濾過して、1%未満を尿として出しています。そこが働いているなら、皮膚は3番目の出口という位置づけになります。

尿と便という2つの主要な出口に対して、皮膚は補助です。そして経口で入った金属の90〜99%は、そもそも吸収されずに便として通過します。汗が担当できるのは、吸収された残りの側です。

汗の金属は、どこから来たのか

ここが、この記事でいちばん使える部分です。

レビューはこう書いています。「汗には、血漿由来の金属だけでなく、明らかに皮膚の層に由来するものも含まれる。溶接、精錬、電池製造の労働者のように、皮膚曝露が大きい場合は特にそうである」1。

汗の中の金属には、血液から出てきたものと、皮膚に付いていたものの2つの出どころがあることを示す図
汗に金属が検出されても、それが体内から出てきた分なのか、肌に付いていた分なのかは、採取方法では分けられません1。

これは測定の話であると同時に、行動の話でもあります。

皮膚に付いた金属は、そこにとどまっているわけではありません。同じレビューは、鉛が、そしておそらく他の有害元素も、皮膚から吸収されうることを指摘し、職場でシャワーを浴びることを支持すると書いています1。

汗をかいて出したものを、肌の上に残したままにしない。経皮という経路は、物質によっては実際に通ります。

まだ測れていないこと

レビュー自身が、限界をはっきり書いています。

著者らが挙げている限界1
記述
研究の古さ 同定された研究の大半は20年以上前のもの
採取方法 大きく異なっていた
濃度の妥当性 研究環境で測定された汗中濃度は十分に妥当性が検証されていない
変動 体の部位、採取方法、水分状態などによって日ごとに変動した

そして、ばらつきの大きさについて、著者らはこう分析しています。測定値の大きなばらつきは、分析方法の限界から予想される範囲をはるかに超えていた。体内蓄積量の幅、解毒効率に影響する遺伝的多型、生理的状態の違いによるものだろう、と1。

測り方が揃っていないと、研究をまたいで足し合わせられません。マイクロプラスチックで起きていることと、同じ構造がここにもあります。

著者らが求めているもの

結論部分で、著者らは2つのことを書いています。

1つは、「発汗は可能性を持ち、体から有害元素を除去する助けとして検討に値する」。もう1つは、「臨床アウトカムを評価できる規模の、頑健な試験が明確に必要である。そこから治療プロトコルが導かれる」1。

つまり「有望だが、手順はまだ決まっていない」という位置です。「効果がない」でも「効果がある」でもありません。

なお著者らは利益相反がないことを宣言していて、資金はカナダの公的研究機関から出ています1。資金の出どころは、結論の是非とは別に確かめておく情報です。

検査結果に「運動で汗をかく」と書いてあったら

RESONA-LABの結果報告書は、蓄積を防ぐ方法として4つを挙げています。肝機能を高める食事/適度な運動で汗をかく/水分をしっかり摂る/摂取量を意識する2。

この記事で見たとおり、2つめについて分かっているのはここまでです。汗に出ること自体は観察されている。体全体の量を意味のある程度まで下げられるかは、まだ試験されていない。

そのうえで、運動をやめる理由にはなりません。運動には、金属とは関係のない根拠が別にあります。汗の量を目的にする必要がない、というだけです。

そして3つめの「水分をしっかり摂る」は、2つめとつながっています。汗をかけば水分と電解質が出ます。日本に水の目安量はなく、見るのは渇きと尿の色です。

いま確実にできるのは、汗をかいたら洗い流すことと、入口を1つ選んで閉じることです。前者には皮膚吸収という根拠があり、後者には物質ごとの数字があります。

参考文献・参考資料

  1. Sears ME, Kerr KJ, Bray RI. Arsenic, cadmium, lead, and mercury in sweat: a systematic review. Journal of Environmental and Public Health. 2012;2012:184745. doi:10.1155/2012/184745(著者らは利益相反がないことを宣言。カナダ保健研究機構およびカナダ社会科学・人文科学研究会議の助成による) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3312275/
  2. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans

本記事は公開された研究の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の施術・設備・運動法の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。発汗によって有害元素の体内量が臨床的に意味のある程度まで減少するかどうかについて、十分な検証はなされていません。心疾患のある方、妊娠中の方、服薬中の方のサウナ・高強度運動の可否は、個別に決められています。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です