たばこの煙が、体に入る経路から考える

入ってくる経路 口から 腸→肝臓→全身 吸って 肺→全身 吸入は、肝臓での作り変えを経由しない

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吸って入ったものには、肝臓を通らないという特徴があります。

食品安全委員会のカドミウム健康リスク評価ワーキンググループの報告に、吸入曝露についてこう書かれています。「粉塵や煙として直接体内に入る。肝臓の解毒を経由しないので、腎障害が起こりやすい」1。

口から入ったものは、腸で吸収されたあと肝臓を経由します。そこで第I相・第II相の作り変えを受けます。吸入では、その段階が飛ばされます。

同じ物質でも、入口で扱いが変わる

体が異物を処理する仕組みは、入口によって働き方が変わります。

入口ごとの、肝臓の位置
入口 通る順番 肝臓の作り変え
経口(食べる・飲む) 腸 → 門脈 → 肝臓 → 全身 全身へ回る前に通る
吸入(吸う) 肺 → 全身 通らない
経皮(塗る) 皮膚 → 全身 通らない。ただし角層で止まる物質が多い

経口で入ったものは、全身の血液に回る前に肝臓を通ります。ここで水に溶ける形へ作り変えられ、尿から出せるものは尿へ、出せないものは胆汁に乗って便へ向かいます。

吸入では、この段階がありません。肺から入ったものは、そのまま全身の循環に乗ります。

そして、経口で入った金属の90〜99%は、そもそも吸収されずに便として通過します。吸入では、この「通過するだけ」の分もありません。

たばこのカドミウムには、数字がある

食品安全委員会のワーキンググループ報告は、具体的な数値を挙げています1。

紙巻たばこのカドミウム
量
1本あたりの含有量 1.8〜2.8µg(欧州・メキシコの紙巻たばこの報告)
主流煙に吸入される割合 10〜20%
副流煙に移行する割合 50%
20本あたりの吸入量 2〜4µg

同じ報告は、「タバコ煙の中のカドミウムは高く、喫煙者の血中、尿中カドミウム濃度は同年代の個人より高い」としています1。

経口では腸から肝臓を通って全身へ向かうのに対し、吸入では肺から直接全身へ向かうことを示す図
経口には肝臓という段が入ります。吸入には入りません1。

食事から入る量と比べると

比較できる数字があります。日本人の食品からのカドミウム摂取量は、1日あたり体重1kgにつき0.32µg。体重60kgなら、1日約19µgです。

20本吸って吸入されるのが2〜4µg。量としては、食事から入る分の1〜2割にあたります。

ただし、ここで量だけを比べると読み違えます。2つの点で条件が違います。

同じµgでも、条件が違う
食事から たばこから
肝臓を通るか 通る 通らない
選べるか 主食なので、選べない 選べる

入口の一覧の中で、これは珍しい位置にいます。数字があって、経路がはっきりしていて、しかも減らす選択肢がある。

カドミウムは、水銀のようには減らない

もう1つ、押さえておく違いがあります。物質によって、体から減る速さが違います。

水銀については、厚生労働省が「体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月」と書いています。入口を変えれば、その速さで減っていきます。

カドミウムは違います。同じワーキンググループ報告は、「半減期の長いカドミウムは徐々に蓄積していき、腎機能が極端に低下しない限り、腎臓皮質の蓄積量に比例して尿中に排泄される」と書いています1。

溜まる側の物質です。だから、入口を1つ閉じることの効き方も違ってきます。水銀なら2ヶ月で結果が動く。カドミウムは、これから入る量が変わるという形で効きます。

加熱式たばこについて、いま言えること

日本は加熱式たばこの使用率が高い国です。2018年の国民健康・栄養調査では、習慣的に喫煙している人のうち加熱式たばこを使っている割合は男性30.6%、女性23.6%でした2。

では、金属はどうなのか。2026年7月に発表された系統的レビューが、21件の研究を集めています3。

結果はこうです。調べられている金属はカドミウム、鉛、ニッケル、水銀。報告されている濃度は概して低く、検出限界または定量限界に近いことが多い。カドミウムと鉛が定量限界未満だったとする報告もあれば、分析の感度や採取方法によって微量に検出されたとする報告もあります3。

ただし著者らは、吸煙のパターン、機器の世代、エアロゾールの採取システム、分析手法、報告単位について、既存の文献のあいだに相当な異質性があると書いています3。直接の比較が難しい状態です。

結論はこうです。「IQOSのエアロゾールは、化学組成において従来の紙巻たばこの煙とは実質的に異なり、燃焼に関連する多くの有害物質のレベルは概して低い。しかし、生物学的に活性な化合物を含む、化学的に複雑な混合物であることに変わりはない」3。

この状態は、マイクロプラスチックの評価が測り方の不統一で進んでいないのと、同じ形です。「低い」と「比べられる形で測れている」は別です。

数えられる入口である、ということ

蓄積の入口の中で、この項目には他にない特徴があります。

主食は選べません。空気中のマイクロプラスチックも閉じきれません。缶のBPAは、そもそも国が耐容量を決めていません。

たばこは、本数で数えられます。1本あたりの含有量も、吸入される割合も、数字があります。この1週間に何本吸ったかは、思い出す話ではなく数える話です。

そして、減らした分がそのまま吸入量に反映されます。入口の一覧の中で、いちばん計算が単純な項目がここです。

なお、副流煙に50%が移行するという数字がある以上、これは吸っている本人だけの話ではありません。同じ空間にいる人にも、同じ経路が開いています。

参考文献・参考資料

  1. 香山不二雄ほか「カドミウムの健康リスク評価ワーキンググループ報告」内閣府食品安全委員会 https://www.fsc.go.jp/fsciis/
  2. 厚生労働省「平成30年 国民健康・栄養調査」。習慣的に喫煙している者のうち加熱式たばこを使用している者の割合 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.html
  3. Matei RI, Baroi AM, Fistos T, Fierascu I, Fierascu RC. Beyond the WHO Priority Toxicants: A Systematic Review of Harmful and Potentially Harmful Constituents in IQOS Aerosols. Toxics. 2026;14(7):614.(21件の研究を対象とした系統的レビュー) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC13417897/

本記事は公的機関の資料と公開された研究の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品の安全性や危険性を示すものでも、使用を勧めるものでも、中止を勧めるものでもありません。喫煙の健康影響は金属の曝露に限られるものではなく、この記事はその全体を扱ったものではありません。禁煙については、保険適用の治療があります。

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