残留農薬の心配を、数字で整理する

残留農薬48項目の対ADI比 2.954 % 最大でこの値。グリホサートは0.010〜0.020% ADI

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残留農薬について、日本では実際にスーパーで食品を買って、調理して、測っています。推定ではありません。

令和4年度の調査では、8地域のスーパーマーケット等で市販された食品を購入し、必要に応じて調理したうえで14の食品群に分け、48種類の農薬等を分析しています1。

結果は、許容一日摂取量に対する割合が0.000〜2.954%。いちばん高かったものでも3%に届きません1。

買って、調理して、測る

この調査の名前は、マーケットバスケット方式といいます。やっていることは、名前のとおりです。

令和4年度 食品中の残留農薬等の一日摂取量調査の方法
内容
対象 48農薬等(農薬、動物用医薬品、飼料添加物)
地域 北海道、宮城県、栃木県、東京都、新潟県、大阪府、高知県、長崎県の8地域
試料 各地域のスーパーマーケット等で市販された食品を購入し、そのまま、あるいは必要に応じて調理した後に分析
分け方 食品摂取量の地域別平均の分量に従って14の食品群に分別し、群ごとに混合均一化
体重 令和元年国民健康・栄養調査の1歳以上の平均体重56.3kgで推計

14の食品群は、米、雑穀・芋、砂糖・菓子、油脂、豆、果実、有色野菜、その他の野菜・漬物・きのこ・海藻、嗜好飲料、魚介、肉・卵、乳、調味料、飲料水です1。

「調理した後」というところが効いています。洗って、皮をむいて、加熱して。実際に口に入る状態で測っています。

結果の並び

残留農薬の対ADI比。最大でも2.954%で、許容一日摂取量に対して大きく下回っていることを示す図
令和4年度調査で定量された農薬等の対ADI比の範囲1。ADIは、一生涯毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される量です。
定量された農薬等の一部(令和4年度)
農薬等 ADI(mg/kg体重/日) 平均一日摂取量(µg/人/日) 対ADI比
グリホサート 1 5.45〜11.08 0.010〜0.020%
ジノテフラン 0.22 3.31〜5.59 0.027〜0.045%
アセタミプリド 0.071 0.23〜1.85 0.006〜0.046%
イミシアホス 0.0005 0.01〜0.83 0.041〜2.954%

報告書は、推定された対ADI比は0.000〜2.954%であり、国民が一生涯に渡って毎日摂取したとしても健康に影響を生じるおそれはないものと考えられるとしています1。

そして、全地域・全食品群で定量されなかった農薬等もあります。そちらは検出限界を下回っていたということです1。

「分かっているもの」と「分かっていないもの」を分ける

ここが、この記事でいちばん持ち帰れる部分です。

体に入ってくるものについて、いま日本ではデータの揃い方に大きな差があります。

入ってくるものと、分かっていることの差
上限の数字 日本人が実際にどれだけ摂っているか
残留農薬 ADIあり 毎年、買って測っている
食品添加物 ADIあり 継続的に推定されている
PFAS 2024年にTDI設定。ただし海外と最大5,300倍の開き データ収集をこれから進める段階
マイクロプラスチック なし 測り方が国際的に揃っていない

「体に悪いものが入ってくる」とひとまとめにすると、この差が消えます。残留農薬は、上限の数字があり、実際の摂取量も測られていて、その結果が公開されている側です。

不安の総量は変わらなくても、どこに手を打てるかは変わります。

それでも残る、入る量の不確かさ

ただし、この調査が答えているのは平均一日摂取量です。

8地域の食品を、地域別平均の分量に従って混ぜた試料を測っています。平均に一致する人が目の前にどれだけいるかは、別の話です。特定の食品に偏って食べている人の値は、この平均には表れません。

そして、上の表で見たとおり、測られていない物質、測り方が決まっていない物質もあります。

調理で減るものもある

この調査が「買って、調理して、測る」方式をとっているのは、調理で量が変わるからです。

実際に測られた例があります。乾燥ヒジキの無機ヒ素は、水戻しで5割、ゆで戻しで8割、ゆでこぼしで9割減りました。鉄・カルシウム・食物繊維は7割以上残ります。

入る量は、食べるかどうかだけで決まるわけではありません。

入る量が読めないぶんは、出す側で決まる

ただし、この物質について言えば読めない部分は小さいほうです。対ADI比0.000〜2.954%という数字は、上限まで距離があることを示しています。

同じ「検出された」でも、距離は桁で違います。添加物は最も高いもので17.2%、カドミウムは平均35%・95パーセンタイルで67%。心配の総量を等分に配る理由はありません。

入ってくるものを全部把握することはできません。測られているものもあれば、これから測るものもあり、測り方が決まっていないものもあります。

その状態で体に残る量を決めているのは、入る量と出る量の差のほうです。

体の出口は尿と便の2つあります。水に溶ける形になったものは腎臓から尿へ。尿から出せないものは、肝臓が胆汁に乗せて便へ送ります。医学の教科書は、胆汁をそうした物質の主要排泄経路と書いていて、そこに出されるものに重金属が挙げられています。

入口の側は、選べる範囲が限られています。出口の側は、毎日動いています。

そして、残留農薬については確かめられることが1つあります。対ADI比の数字は毎年測り直されて公表されています。気になる農薬の名前があるなら、その年の報告書で自分の目で位置を確かめられます。不安の大きさではなく、数字の桁で見られる話です。

参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省「令和4年度 食品中の残留農薬等の一日摂取量調査結果」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/pesticide_residues/assets/001166921.pdf(調査方法 p.1、調査結果 p.2、別表1)

本記事は公的な調査結果の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・農法の優劣を示すものでも、選択を勧めるものでもありません。記載の数値は調査年度の平均一日摂取量であり、個人の摂取量がそのまま当てはまるわけではありません。

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