「腸活」で本当にやるべきことを、4つに分ける

「腸活」に混ざっている目的 確かめやすい 便通・張り 確かめにくい 菌のバランス 確かめられる度合いが、目的ごとにまったく違う

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「腸活」は4つの別々の目的が混ざった言葉です。便通、お腹の張り、菌のバランス、肌や免疫。どれも「腸活」と呼ばれますが、確かめられる度合いがまったく違います。

いちばん確かなのは食物繊維で、日本人は目標量に届いていません。いちばん曖昧なのが「菌のバランス」で、そもそも良い状態の定義が決まっていません。

この4つを分けると、自分がどれをやろうとしているのかが決まります。

分けると、今日から手をつけられるものと、まだ誰にも分からないものが、はっきり分かれます。

4つに分けてみる

「腸活」で目指されていることと、確かめられる度合い
目的 いまの状況
便通をよくする 公的な目標量があり、診断基準もある
お腹の張りを減らす 測ると、感覚と実際の量が一致しないことがある
菌のバランスを良くする 「良い状態」の定義が、まだ決着していない
肌・免疫・全身の健康 確かめられている範囲が限られる

便通 ── いちばんはっきりしている

そしてここは、便通が「快適さ」を超える場所でもあります。ニッケルの場合、経口で入った量のうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は便として出ていきます2。肝臓が胆汁に出したものも、腸を通って便から出ます。4つのうち、出口の役割を持っているのはここだけです。

4つのうち、数字で目標が置かれているのはここだけです。食物繊維で、30〜64歳の男性22g・女性18g。日本人の実際の摂取量は、その中央値で13.3g/日でした1。

この目標量は理想の量ではなく、実行可能性を考慮して低く設定されたものです。年齢区分ごとの値も、健康利益から見た望ましい量との差も、そちらに整理しました。

つまり足りていない幅がはっきりしている、数少ない栄養素だということです。他の3つには、この形の数字がありません。

便通には、回数だけでなく、いきみ・硬さ・残便感まで見る診断基準があります。回数は6項目のうちの1つにすぎません。

お腹の張り ── 測ると、感覚とずれる

張りは、便通とは別の問題です。そして張っている感じと、実際にお腹の中にある量は、あまり一致しないことが繰り返し報告されています。

姿勢や筋肉の反応、感覚の閾値が関わっています。ガスを減らすことだけを考えると、うまくいきません。

菌のバランス ── 良い状態の定義が、まだない

「良い腸内環境」が何を指すのか、まだ決まっていません。

「健康な腸内細菌叢とは何か」を正面から検討した2021年の総説は、定義できるかどうか自体が難しい問いだと結論しています。判定する物差しが、まだありません。

そして「善玉菌・悪玉菌」という日本で定着した区分も、学術的には批判されています。同じ菌種でも、株が違えば性質が変わり、共存する菌との関係でも働きが変わります。

「菌のバランスを整えた」かどうかを確かめる方法が、いまのところありません。効果がないという意味ではなく、判定する基準がないということです。

肌・免疫・全身 ── 確かめられている範囲は限られる

腸と全身の関係は、研究が活発な領域です。ただし「腸を整えれば免疫力が上がる」という言い方にすると、確かめようがなくなります。「免疫力」という一つの指標が医療にないためです。

何を測れば確かめたことになるのかが決まっていない主張は、効くとも効かないとも言えません。

食物繊維は、サプリメントで置き換えられるのか

同じ量を置き換えても、同じ利益が得られる保証はない。食事摂取基準にはっきり書かれています1。原文はこうです。

目標量の算定に用いられた研究の多くは、通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメント等に由来するものではない。したがって、同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメント等で摂取したときに、ここに記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はない。さらに、食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメント等によって摂取すれば、ここに記されたよりも多くの(大きな)健康利益が期待できるとする根拠はない。

二段構えになっています。置き換えの話が前半、食品から摂れる量を超えて足しても、より大きな利益が期待できる根拠はないというのが後半です。

今日できること

4つのうち、今日から動かせるのは食物繊維の量です。中央値13.3gと25gの差は、およそ12g。これは食品の量に置き換えられます。

ひとつ注意があります。アプリや食事記録で「目標量に届いた」と出ても、それだけでは足りていない可能性があります。

測定法の変更で食物繊維の成分値が変わった。白米0.3gから1.5g、食パン2.3gから4.2g
日本食品標準成分表の七訂と八訂で測定法が変わり、同じ食品の成分値が上がりました(精白米 0.3g→1.5g、食パン 2.3g→4.2g、可食部100gあたり)。食品そのものが変わったわけではありません。一方、目標量は七訂相当の測定法で算定されています1。

報告書は、八訂の成分表で計算する場合は成人では25g/日を目安とするのも一つの方法だとしています1。目標量ではなく25gを見ておけば、この食い違いを気にせずに済みます。

ただし、一度に大きく増やすと張りや不快感が出ます。一度に一つだけ変えるという原則は、ここでも同じです。増やす量も、期間をかけて分けたほうが確かめやすくなります。

血便がある、便が黒い、体重が意図せず減っている、急に排便の習慣が変わってそれが続いている、発熱を伴う腹痛がある。これらは食事の工夫で動く範囲にありません。食物繊維を増やしても、菌を足しても変わりません。

分けると、やることが決まる

「腸活」をひとまとめにすると、何をどこまで期待していいのかが分からなくなります。

分けると、こうなります。便通には公的な目標量と診断基準があり、足りていない幅もはっきりしている。張りは、感覚と量がずれることを知っておく。菌のバランスは、まだ判定する物差しがない。全身の健康は、何を測れば確かめたことになるのかが決まっていない。

そして腸は、肝臓が胆汁に乗せて送り出したものの通り道でもあります。便として出るか、腸に留まるかで、体に残る量が変わります。

確かめられていないことと、効果がないことは別です。ただ、確かめられる場所から手をつけるほうが、手戻りがありません。

参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 炭水化物(食物繊維 pp.134-136) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316464.pdf
  2. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

本記事は公的な基準と研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。食物繊維の必要量は年齢・性別・状態によって異なります。消化器の疾患で治療中の方、食事制限を受けている方は、内容が個別に決められています。この記事の範囲の外です。

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