どの検査を受ければいいか、迷わないために

検査ごとに、答えている問いが違う 健康診断 いま異常があるか この検査 出す働きの状態 一つで全部が分かる検査はない

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検査はそれぞれ違う問いに答えています。一つで全部が分かる検査はありません。

健康について調べていると、いくつもの検査が出てきます。健康診断、遺伝子検査、腸内フローラ検査、アレルギー検査。

検査はそれぞれ違う問いに答えています。一つで全部が分かる検査はありません。

知りたいことがはっきりすれば、選ぶものも決まります。逆に、問いを決めずに受けると、結果を受け取ってから「これは何を意味するのか」で止まります。

検査ごとに答えている問いが違うことを示す図。健康診断は今の異常の兆候、遺伝子は生まれ持った傾向、フローラは腸の構成、アレルギーは特定の免疫反応
同じ「検査」でも、見ている対象と時間軸が違います。生まれつきのものが対象なのか、いまの状態が対象なのか。全身を見るのか、特定の部位を見るのか。

健康診断 ── いま、対処が必要な兆候があるか

健康診断は、症状が出る前の段階で、対処できる病気を拾うための仕組みです。40歳から74歳を対象とする特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律で保険者に実施が義務づけられています1。

ここで重要なのは、測っている項目が決まっていることです。測っていない項目については、何も言えません。

そして「異常なし」は健康の証明ではありません。基準範囲は、健康な人を集めて測ったときの中央95%が入る範囲として作られています2。健康な人でも20人に1人は外れる設計です。

この検査が答えている問いの狭さは、別の記事で詳しく整理しました。

遺伝子検査 ── 生まれ持った傾向。生涯変わらない

遺伝情報には、他の検査結果にはない特性があります。日本医学会のガイドラインは、次を挙げています3。

遺伝情報の特性(日本医学会ガイドライン)3
特性 意味すること
生涯変化しない 一度調べれば、結果は変わらない
血縁者間で一部共有されている 自分の結果が、家族の情報にもなる
あいまい性が内在している 下に説明します

3つ目の「あいまい性」について、ガイドラインはこう説明しています。結果の意義の判断が変わりうること、予測される発症の有無・時期・症状・重症度に個人差がありうること、医学の進歩とともに有用性が変わりうること3。

つまり、変わらないのは遺伝情報のほうで、その読み方は変わります。「生涯変わらない結果」と「生涯変わらない意味」は、別のことです。

そして遺伝子が答えているのは、生まれ持った傾向です。いま何が起きているかは、この検査の対象ではありません。

腸内フローラ検査 ── 腸内細菌の構成

便から腸内細菌の構成を調べる検査です。何がどれだけいるかを見ます。

ただし、ここには前提があります。「健康な腸内細菌叢」の定義が、まだ決着していません。正面から検討した2021年の総説は、定義できるかどうか自体が複雑な問いだと結論しています4。

構成は測れます。ただし、その構成が良いのか悪いのかを判定する物差しが、まだありません。この状況は別の記事で整理しました。

アレルギー検査 ── 特定の免疫反応があるか

血液中の特異的IgE抗体を測るか、皮膚に少量つけて反応を見ます。免疫が関わる反応があるかどうかを、医学的に確認するための検査です。

注意が要るのは、IgEが陽性であることと、実際に症状が出ることは別だという点です。だから医療の現場では、実際に少量から食べて確かめる食物経口負荷試験まで行います。

一方、食物に対するIgG抗体を測る検査は、欧州アレルギー・臨床免疫学会のタスクフォースが2008年、食物アレルギーの診断ツールとして推奨しないという立場を示しています5。IgGは、その食品を食べていることを反映する正常な反応でもあるためです。

並べてみる

それぞれが答えている問い
検査 答えている問い 答えていないこと
健康診断 決められた項目に、対処が必要な兆候があるか 測っていない項目のこと
遺伝子検査 生まれ持った傾向はどうか いま何が起きているか
腸内フローラ検査 腸内細菌はどういう構成か その構成が良い状態かどうか
アレルギー検査 特定の免疫反応があるか 免疫が関わらない不調の原因
バイオレゾナンス検査
(RESONA-LAB)
4つの欄がある。食品不耐性(消化難)、体内蓄積、解毒機能、不足ビタミン・ミネラル6 疾病の診断。報告書自身が「本検査は疾病の診断や治療を目的とするものではなく、健康管理の参考情報を提供するもの」と記しています6

並べると、ひとつの検査で全部が分かるものはないことが見えてきます。時間軸も違います。遺伝子は生まれつき、健康診断はいま、フローラは日々変わるもの。

採るものと、待つ時間も違う

答えている問いのほかに、実務的な違いもあります。

検体と、結果が出るまで
検査 採るもの 結果まで
健康診断 血液、尿。採血を伴う 数日〜2週間程度
遺伝子検査 唾液、口腔粘膜 数週間
腸内フローラ検査 便 数週間
アレルギー検査 血液、または皮膚(パッチテスト・プリックテスト) 血液は数日、パッチテストは判定に7日程度
バイオレゾナンス検査 毛髪と口腔粘膜。採血を伴いません 返送から約1週間6

採血の有無は、受けやすさに直結します。ただし採るものが違えば、答えられる問いも違います。血液でしか分からないことは、血液でしか分かりません。

たとえばビタミンD・亜鉛・鉄・葉酸は血液の数値で線が引けますが、カルシウムとマグネシウムは血液では分かりません。骨や細胞内から補われて、血中の値が動かないためです。これは検査の優劣ではなく、栄養素の側の性質です。

知りたいことから決める

だから、順番は逆になります。検査を選んでから何が分かるかを知るのではなく、知りたいことを決めてから、それに答える検査を選ぶ。

知りたいことと、それに答えるもの
知りたいこと 見るもの
いま、治療が必要な病気があるか 健康診断、医療機関の検査
家系に多い病気の傾向があるか 遺伝子検査(遺伝カウンセリングを伴うもの)
この食品で症状が出るのはなぜか アレルギー検査、経口負荷試験
疲れの原因が鉄かどうか ヘモグロビンとフェリチン

「なんとなく体調が悪い」のままだと、どの検査を受けても結果の読み方が決まりません。問いを具体的にするところから始めるほうが、結局は早く進みます。

そして、検査で説明がつかないことは珍しくありません。そのときに次の検査を足すのか、記録して確かめるのかは、また別の判断になります。

参考文献・参考資料

  1. 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第18条・第20条 e-Gov法令検索
  2. 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 ―解説と利用の手引き―」2022年10月版 https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2022/10/kijyunhani20221031.pdf
  3. 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」2022年3月改定 2. 遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性 https://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis_2022.pdf
  4. Shanahan F, Ghosh TS, O’Toole PW. The Healthy Microbiome—What Is the Definition of a Healthy Gut Microbiome? Gastroenterology. 2021;160(2):483-494. doi:10.1053/j.gastro.2020.09.057 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33253682/
  5. Stapel SO, Asero R, Ballmer-Weber BK, et al. Testing for IgG4 against foods is not recommended as a diagnostic tool: EAACI Task Force Report. Allergy. 2008;63(7):793-796. doi:10.1111/j.1398-9995.2008.01705.x https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18489614/
  6. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans

本記事は各検査の位置づけの整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査の受検を勧めるものでも、否定するものでもありません。遺伝学的検査は、遺伝カウンセリングを含む体制のもとで受けることが推奨されています。

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