お酒の付き合い方を、体質から決める

日本人のALDH2の型 ホモ欠損型 1割弱 ヘテロ欠損型 3割強 アルコールの処理能力が生まれつき低い側が4割強

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日本人の4割強は、アルコールの処理能力が生まれつき低い側にいます。両方の遺伝子が弱いホモ欠損型が1割弱、片方が弱いヘテロ欠損型が3割強です1。

ヘテロ欠損型の酵素活性は、活性型の約16分の1しかありません1。

そして重要なのはここです。「鍛えられて飲めるようになった」のは、処理が速くなったからではありません。

処理の順番と、詰まる場所

アルコールは、そのまま体から出ていくわけではありません。二段階で作り変えられます。

アルコールがアセトアルデヒドを経て酢酸になる二段階と、ALDH2の働きが弱いと中間で滞ることを示す図
アセトアルデヒドは中間の物質です。ALDH2の働きが弱いと、ここで滞ります1。

アルコール → アセトアルデヒド → 酢酸。この真ん中の物質が、顔の赤み、吐き気、頭痛、眠気を起こします。

これは体が異物を処理するときの構造と同じです。第I相で反応しやすい形に変え、次の段階で処理する。一段階目だけ進んで二段階目が追いつかないと、中間の物質が溜まります。

ALDH2が担っているのが、その二段階目です。

日本人の内訳

厚生労働省のe-ヘルスネットは、日本・中国・韓国などの東アジアの人では、遺伝子の点突然変異により酵素の働きが弱い人が多くみられると説明しています1。

ALDH2の型と、日本人での割合
型 日本人での割合 起きること
ホモ欠損型(2本とも弱い) 1割弱 少量の飲酒で血中アセトアルデヒド濃度が急激に増加。激しいフラッシング反応(顔面紅潮、嘔気、頭痛、眠気)
ヘテロ欠損型(1本が弱い) 3割強 活性型の約1/16の酵素活性。フラッシング反応が起こる
ホモ活性型(2本とも強い) 残り

地域差もあります。e-ヘルスネットは、日本列島の中心部ほどALDH2欠損の頻度が若干高い傾向があるとしています1。

「飲めるようになった」は、強くなったのか

ここが、この記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。

e-ヘルスネットは、ヘテロ欠損者についてこう書いています。職場やサークルで飲酒を鍛えられて、耐性によりフラッシング反応が弱まり、大酒家になるひとも少なくない1。

変わったのは反応のほうです。酵素の活性が16分の1であることは変わりません。赤くならなくなっても、アセトアルデヒドが速く処理されるようになったわけではない。

数字にも表れています。1970年代はアルコール依存症患者の3%がヘテロ欠損者でしたが、現在では13%以上が該当します1。

そしてe-ヘルスネットは、ALDH2欠損者では飲酒による食道や咽頭の発癌リスクが高まると記しています1。

不耐性が、遺伝子で決まっている例

「同じものを口にしても、人によって起きることが違う」。これは感覚の話ではありません。

ALDH2は、その最もはっきりした例です。処理する酵素の働きが、生まれつき16倍違う。同じ量を飲んでも、体の中に残るアセトアルデヒドの量が違います。

乳糖不耐症も同じ構造で、大人になってラクターゼを作り続けるかどうかがDNAの一箇所で決まっています。

そして同じ食品への反応が人によって違う理由には、量、消化吸収、腸内細菌、感じ方という複数の要素があります。ALDH2と乳糖は、そのうち消化吸収の部分がはっきり分かっている例にあたります。

自分がどちら側かを確かめる

遺伝子検査でも分かりますが、その前に手がかりがあります。

飲み始めた頃に、顔が赤くなったかどうか。いま赤くならないかどうかではありません。耐性でフラッシング反応は弱まるので、現在の強さは体質を表しません。

そしてお酒を飲んだ日の睡眠には、寝つきが早くなる一方でレム睡眠が乱れるという入れ替わりが起きています。カフェインの感受性にも大きな個人差があり、日本が上限の目安を示していない理由がそこにあります。

処理能力に個人差がある物質は、「一般的な適量」が自分に当てはまるとは限りません。

入る量より、処理できる量

同じことが、酵素の側全般に言えます。薬物代謝酵素にも、日本人と欧米人で頻度が大きく違う型があります。CYP2C19の働きが弱い型は、欧米で2〜5%、東アジアで13〜23%です。

こうした差がどこから来たのかについては、食文化と身体の関係をまとめています。牛乳やデンプンでも、同じ構造が確かめられています。

この構造は、アルコールだけのものではありません。

異物の処理も、二段階です。第I相で反応しやすい形にして、第II相で別の分子をくっつけて水に溶かす。そして第I相でできる中間代謝物は、元の物質より反応しやすくなっています。アセトアルデヒドと同じ位置にあるものです。

だから「処理を速める」という言い方が実際には分かりにくいのは、どちらの段を速めるかで意味が逆になるからです。ALDH2の話は、その構造がいちばんはっきり見える例になっています。

アルコールについて語られるのは、たいてい「どれだけ飲むか」です。

ただ、体に残るアセトアルデヒドの量を決めているのは、飲んだ量だけではありません。飲んだ量と、処理できる速さの関係です。同じ量でも、酵素活性が16分の1なら、残る量も残る時間も違います。

これは入れる側と出す側を一緒に見るという話の、いちばん分かりやすい実例です。入る量だけを数えても、体の中で何が起きるかは決まりません。

参考文献・参考資料

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「2型アルデヒド脱水素酵素」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/alcohol/ya-007.html

本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。遺伝子型の頻度は集団の推計であり、個人の型を示すものではありません。飲酒量については、体質にかかわらず少ないほど健康リスクは小さくなります。アルコール依存の状態は、意志や体質の問題ではなく、治療の対象として確立した病態です。

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