子どもの食事で、アルミニウムをどう見るか

アルミニウム|小児1〜6歳 43% 暫定耐容週間摂取量に対して、平均でこの比 耐容量

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アルミニウムの摂取量が上限に近づくのは、体重の軽い子どもです。

厚生労働省のマーケットバスケット調査(平成23〜24年度)で、暫定耐容週間摂取量(PTWI)に対する比が最も大きかったのは小児(1〜6歳)で約43%でした1。

そして、ここからが実際に動いた部分です。小児の95パーセンタイル値以上で、PTWI比は100%を超えていました。学童・青年・成人では、99パーセンタイル値でも超えませんでした1。

これを受けて2018年11月30日、菓子・生菓子・パンに使用基準が新設されました。1kgにつきアルミニウムとして0.1g以下です2。

上限そのものが、3回動いている

アルミニウムの上限は、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が設定しています。

暫定耐容週間摂取量(PTWI)の変遷1
年 PTWI 変えた理由
1988年 7 mg/kg体重/週 —
2006年(第67回) 1 mg/kg体重/週 従来のPTWI以下の用量で、生殖系および神経発達に影響を与える可能性を示唆する知見があった
2011年(第74回) 2 mg/kg体重/週 再度議論を行い変更

7分の1に下げて、そのあと2倍に戻しています。同じことがBPAでも起きていて、そちらは2023年にEFSAとドイツBfRが1,000倍違う数字を出しました。

上限の数字は、その時点で何が分かっているかを表しています。物質の性質が変わったわけではありません。

日本人の摂取量を、実際に測った

日本では平成23〜24年度に、加工食品と未加工食品からのアルミニウム摂取量がマーケットバスケット方式で調べられました。食品添加物や残留農薬でも使われている方法で、実際に売られている食品を買ってきて、調理して、測ります1。

アルミニウムの対PTWI比。小児1-6歳の平均は43%だが、95パーセンタイル以上で100%を超える
年齢層ごとの対PTWI比。平均はどの年代もPTWIを下回りましたが、小児(1-6歳)の95パーセンタイル値以上で100%を超えました1。
年齢層ごとの結果1
年齢層 結果
小児(1〜6歳) 平均で対PTWI比 約43%。95パーセンタイル値以上で100%を超えた
学童(7〜14歳) 99パーセンタイル値でも100%を超えなかった
青年(15〜19歳)
成人(20歳以上)

寄与が大きかった食品群は、「穀類」と「砂糖類、菓子類」でした1。

カドミウムで見たのと同じで、平均だけを見ると、上位のほうが見えません。この件では、平均43%と95パーセンタイル100%超のあいだに、対応が必要かどうかの分かれ目がありました。

なぜ菓子パンに入っているのか

入口は、ミョウバンです。硫酸アルミニウムカリウム(カリウムミョウバン)と硫酸アルミニウムアンモニウム(アンモニウムミョウバン)。

資料には、なぜ使われるかまで書かれています。

膨脹剤の一種で、重曹(炭酸水素ナトリウム)に酸剤であるミョウバン等を配合したもの。重曹は、水分がある状態で加熱されると炭酸ガスが発生し、生地を膨らませる作用を持つが、苦みのあるアルカリ性物質(炭酸ナトリウム)が生成する。これを改良するためにベーキングパウダーには酸剤が配合されており、ミョウバンは酸剤の一種である1

味のためです。重曹だけだと苦くなる。それを中和するための酸剤の1つが、ミョウバンでした。

アルミニウムを含む添加物の用途と、対象食品1
用途 主な対象食品
膨脹剤(ベーキングパウダー等) 一部の菓子パン(メロンパン等)、焼菓子(スポンジケーキ等)、揚げ菓子(ドーナツ等)、蒸し菓子(小麦饅頭、蒸しパン)
色止め剤 漬物(ナスの漬物、シソの実漬)
形状安定剤(煮崩れ防止) たこ、いか、くらげ、うになどの魚介類
品質安定剤 栗、芋、豆、ごぼう、れんこんなどの煮物
着色料(アルミニウムレーキ) 食品全般

なお資料は、「大部分のパンは、パン生地を膨脹させるためにパン酵母を使用している」とも注記しています1。食パンのような酵母で膨らませるパンは、この話の対象ではありません。

基準ができるまで

調査結果を受けた対応が、段階的に進みました。

経緯
時期 内容
平成25年6月 審議会が、パン・菓子類へのミョウバンの使用基準改正を検討。あわせて業界に自主的な低減化を通知で依頼1
平成29年3月 厚生労働省が食品安全委員会にリスク評価を要請
平成30年11月30日 官報告示。菓子、生菓子及びパンに新たな基準値。1kgにつきアルミニウムとして0.1g以下2

審議会の資料は、対応の理由をこう書いています。PTWIを超過するおそれがあるのは一部の場合のみだが、①汚染物質では多量摂取者も安全が確保できるよう基準値設定等を行っていること、②コーデックス委員会や諸外国でも見直しが進められていることを踏まえた、と1。

「平均が下回っているから対応しない」とはしなかったということです。

これは弁当のフタル酸で起きたことと、同じ形です。測る → 上位の層で上限に届いていると分かる → 入口を特定する → 基準を作る。

いま、何を見るか

大人については、この記事の数字がそのまま答えになっています。99パーセンタイル値でも上限を超えませんでした。気にする対象ではありません。

小さい子どもについては、見る場所が1つあります。原材料表示の「ミョウバン」という文字です。

膨脹剤には、ミョウバンを使うものと使わないものがあります。表示は「膨脹剤」だけの場合もあれば、「膨脹剤(ミョウバン)」と書かれる場合もあります。

「膨脹剤」は一括名で表示できる14の用途の1つなので、中身の物質名までは表示されないことがあります。表示から判別しきれないからこそ、制度の側で基準が作られたという順番です。

そして2018年の基準ができているので、いま売られている菓子・生菓子・パンは、1kgあたり0.1g以下の範囲にあります。調査当時とは条件が違います。

できることは単純です。菓子パンと焼き菓子が毎日の中心になっていないかを見る。これは添加物全般について言えることと同じで、変えると添加物以外(砂糖、脂質、食物繊維)も同時に動きます。

9種の金属の中で、この項目がどこにいるか

検査の蓄積の欄には、アルミニウムが項目として入っています。他の8種と並べると、位置がはっきりします。

アルミニウムという項目の特徴
状況
上限の数字 ある。PTWI 2 mg/kg体重/週
日本人の摂取量 ある。年齢層別・パーセンタイル別まで
入口 特定されている。ミョウバン(膨脹剤・色止め・形状安定・着色)
規制 ある。2018年に菓子・生菓子・パンへ基準値
皮膚からの入口 日本皮膚科学会のガイドラインは、感作源として化粧品、歯磨き、ベーキングパウダー、医薬品を挙げています3

9種のなかで、いちばん材料がそろっている項目のひとつです。上限も、摂取量も、入口も、規制もあります。そのどれもないものと比べると、位置づけが違います。

そして今回の経緯が示しているのは、平均で見ると見えないものが、体重の軽い層では見えるということでした。同じ食品を食べていても、体重で割ると数字が変わります。

参考文献・参考資料

  1. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会「アルミニウムを含有する添加物への対応について」平成25年6月21日 資料2-1(消費者庁「アルミニウムに関する情報」に掲載) https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/food_additives/aluminium/assets/0000140250.pdf
  2. 硫酸アルミニウムアンモニウム及び硫酸アルミニウムカリウムの使用基準改正(平成30年11月30日官報告示)。菓子、生菓子及びパンについて、1kgにつきアルミニウムとして0.1g以下 https://www.caa.go.jp/policies/policy/standards_evaluation/food_additives/aluminium
  3. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌 2020;130(4):523-567. 表12「種々の金属による病型・症状とその感作源」 https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf

本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品の安全性や危険性を示すものでも、摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。乳幼児の食事については、個別の指示が優先されます。

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