金属の蓄積に、今日から手を打つ方法

検査に並ぶ9つの金属 毒性の強さ 順ではない 入口の多さ 順に近い 歯科治療・装身具・化粧品・たばこ・魚・水道

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パラジウム、銀、プラチナ、カドミウム、金、水銀、鉛、アルミニウム、ニッケル。検査に並ぶこの9つは、日本人の生活の中で体へ入ってくる入口の順に近い並びです。

有名なのは鉛・水銀・カドミウムの3つですが、残る6つにも根拠があります。パラジウム・銀・プラチナ(白金)・金・アルミニウム・ニッケルは、日本皮膚科学会のガイドラインが、体に入って症状を起こす金属として名指ししている顔ぶれです5。入口は、歯科治療、装身具、眼鏡フレーム、化粧品、たばこ。

そしていちばん使える事実は、こちらです。溜まった量は固定ではありません。厚生労働省は水銀について、「体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月」と書いています4。入口を変えれば、体内の量は動きます。

なぜ、この9つなのか

重金属というと、水俣病やイタイイタイ病の水銀・カドミウム、あるいは鉛が思い浮かびます。金やプラチナが並んでいると、場違いに見えます。

ところが皮膚科の側から見ると、並びが変わります。日本皮膚科学会の『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』は、金属が皮膚からだけでなく「生体内に吸収されることにより」全身に症状を起こす型を「全身型金属アレルギー」として扱い、原因になりうる金属を挙げています5。

検査に並ぶ9つの金属と、学会ガイドラインが挙げている感作源5
金属 ガイドラインが挙げている主な入口
パラジウム 眼鏡フレーム、腕時計、電気製品。歯科金属
銀 装身具、メッキ、貨幣、食器。歯科用
プラチナ(白金) 貴金属装飾品、貴金属回収作業、メッキ。歯科用
金 貴金属装飾品、貴金属回収作業、メッキ。歯科用
水銀 化粧用クリーム(保存剤としてまれに)、消毒剤、乾電池。歯科用(アマルガム。2034年に世界的に廃止)
アルミニウム 化粧品、歯磨き、ベーキングパウダー、医薬品、顔料。食品側は上限も摂取量調査もあり、2018年に基準ができた
ニッケル バックル、腕時計バンド、イヤリング、ネックレス、メッキ、乾電池
カドミウム (皮膚のガイドラインでは汚染金属として扱われる。入口は主食と、たばこ)
鉛 (同上。入口は職業上の取り扱い、古い塗料、古い水道管)

9つのうち7つが、日常の持ち物と口の中に入口を持っています。これが、金やプラチナが並んでいる理由です。

ガイドラインははっきりこう書いています。「歯科金属はパラジウム、金、水銀、錫などを含有することが多く、時にニッケル、クロム、コバルトなども含む」5。日本の保険診療で広く使われてきた銀歯は金銀パラジウム合金で、ガイドラインの付表にも、この合金名がそのまま載っています5。

ここで分かるのは、入口がどこにあるかだけです。症状が出るかどうかは別で、金属アレルギーの診断はパッチテストなどによって皮膚科で行われます。

溜まった量は、固定ではない

「蓄積」という言葉は、一度入ったら出ていかないような印象を与えます。実際は違います。

厚生労働省は、魚介類の水銀についての注意事項の中で、同じ文を3回繰り返しています。「体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄されます。その体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月です」4。

だから同じ文書は、妊娠に気づくのが遅れた場合について、「妊娠に気づいた段階から水銀の摂取量をコントロールすることで一定の効果が期待される」と書いています4。

ただし、この速さは物質によってまったく違います。カドミウムは腎皮質での半減期が20〜50年、鉛は血液で約28〜36日ですが骨に移った分はずっと長い。溜まる場所が違うからです。

入口を変えれば、体内の量は動きます。これが、蓄積の欄を見たときにいちばん効く事実です。溜まっているかどうかを心配するより、どこから入っているかを1つ特定するほうが、実際に量を変えます。

入口は、金属ごとに違う

検査の説明資料は、蓄積の入口として次を挙げています。それぞれ、公的な基準や調査がどこまであるかが違います。

挙げられている入口と、公的な基準・調査の有無
入口 入るもの 公的な基準・調査
大型の魚 メチル水銀 妊婦向けの摂食目安(魚種ごと・g単位)4
水道水 鉛、トリハロメタン類 水質基準。鉛0.01mg/L以下、総トリハロメタン0.1mg/L以下6。浄水器側の表示も法定
主食(米・小麦・大豆) カドミウム 耐容週間摂取量に対して平均35%
歯科治療 パラジウム、銀、金、水銀 JIS規格で組成が決まっている
装身具・眼鏡・腕時計 ニッケル、パラジウム 学会ガイドラインの感作源リスト5
化粧品・日焼け止め 酸化チタン、酸化亜鉛(ナノ粒子) 塗る形では角層より奥へ入ったという報告が大半ではない。EUは25%まで安全としている
たばこ カドミウム、ニッケル 1本に1.8〜2.8µg、20本で2〜4µgの吸入。吸入は肝臓を通らない
缶 ビスフェノールA 溶出は業界自主基準で規格の1/250以下。ただし日本に耐容量はない
プラスチック容器 フタル酸エステル類 2025年6月からポジティブリスト制度が完全施行。物質ごとにTDIもある
プラスチック(微細) マイクロプラスチック 健康リスク評価そのものが未了
撥水加工・フライパン PFAS 日本のTDIは20 ng/kg体重/日
職業上の取り扱い 鉛ほか 鉛中毒予防規則による法定健康診断1

なお鉛については、日本を含む多くの国で、環境や食品からの曝露がこの数十年で大きく減っています。CDCの報告も、環境と食事からの鉛曝露が過去30年で大幅に減少し、集団の血中鉛濃度も相応に下がったことを前提に書かれています2。

並べると分かるのは、基準の細かさが入口によって全然違うことです。魚は魚種ごとにg単位で目安がある。PFASは数字が1つある。プラスチックは評価自体が終わっていません。

鉛と水銀は、実際に医療で測れる

労働衛生の分野では、鉛を扱う作業者に定期的な測定が義務づけられています。鉛中毒予防規則第53条に基づくもので、検査項目には血液中の鉛の量と、尿中のデルタアミノレブリン酸の量が含まれます1。体内に入った鉛の量を、数値で追う仕組みが動いています。

水銀については、厚生労働省が「一般に体内の水銀濃度は毛髪で測定します」と書いています4。同時に、「妊婦であっても毛髪の水銀濃度等を測定することは必要ないと考えています」とも書いています。測る方法が確立していることと、全員が測る必要があることは別だ、という立場です4。

そして同じ文書は、日本人の平均摂取量を示しています。1日あたり8.2µg。妊婦を対象とした耐容量の57%です4。うち88.1%(7.18µg/日)が魚介類からでした。

「出す」より先に、入口を見る

キレート剤は、金属と結合して尿から排出させる薬です。これは中毒と診断がついた場合の治療薬で、診断のないまま使われて死亡した例が報告されています2。

汗については、尿に匹敵する排泄が報告されている一方で、測り方が確立していません。市販の「デトックス」をうたう食品やプログラムについては、そもそも有効性を評価した無作為化比較試験が行われていません3。効くかどうか以前に、確かめられていません。

一方、体が常時行っている処理のほうは、経路が分かっています。医学の教科書は胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない脂溶性物質の主要排泄経路」とし、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています。

魚を、やめないでください

水銀と聞いて最初に浮かぶのが魚です。ここで「では魚をやめよう」と進む前に、公的な注意事項が誰に向けて何を言っているかを見ておく価値があります。

厚生労働省は、魚介類と水銀について注意事項を公表しています。ただしこれは妊婦に向けたものです。同じ文書に、こう書かれています。

今回の注意事項は胎児の健康を保護するためのものです。子供や一般の方々については、通常食べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません。

さらに同じ文書は、「魚介類を全く食べない集団では、高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されています」とも記しています4。

魚を減らせば安全、とは言い切れない。公的な文書自身がそう書いています。

妊娠中の方への目安

妊娠している方、その可能性がある方については、魚種ごとに「1回約80gとして週に何回まで」という目安が示されています。キンメダイやメカジキは週1回まで、キハダ・ビンナガ・ツナ缶は通常どおりで差し支えない、といった区分です4。

そして注意事項自体が、「本注意事項は、妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません」と書いています4。減らすのは特定の魚種を食べる回数で、魚をやめることではありません。

添加物の欄が該当した場合

体内蓄積の欄には、重金属とは別に添加物の項目があります。こちらには、金属とは違う点が二つあります。

ひとつは、体内の添加物の量を測る一般的な臨床検査がないこと。鉛や水銀のように、入口を1つに絞れるという構造にはなっていません。

もうひとつは、摂取量の側が継続して調べられていることです。日本では添加物ごとに一日摂取許容量が設定され、実際の摂取量も推定されています。2006〜2008年度の調査では、許容量に対する割合が最も高かったもので17.2%でした。

できるのは、加工食品の頻度を記録することです。ただしそれを変えると、添加物以外(食塩・脂質・食物繊維)も同時に動きます。何が効いたのかを見るには、そこも踏まえる必要があります。

確かめたいときは、何を伝えるか

気になる曝露に心当たりがある場合は、確かめる価値があります。たとえば、鉛やその化合物を扱う仕事をしている。古い建物の改修に関わっている。輸入品の民間薬や食器を日常的に使っている。

医療機関で伝えるのは、「検査で異常と言われた」ではなく「この曝露に心当たりがあります」のほうです。曝露の内容と期間が分かれば、必要な検査を選んでもらえます。

原因不明の腹痛、手足のしびれ、貧血、集中力の持続的な低下。これらが続いているなら、金属の話とは別の枠です。入口を減らしても動きません。

入口を1つ決めて、2ヶ月待つ

結果には「蓄積による体の影響」として、集中力の低下、疲労感、ホルモンバランスの乱れといった症状が添えられています。読むと当てはまりますが、これらはもともと、一般の人の3割前後が今週経験している症状です。当てはまったことは、原因の特定にはなりません。

使えるのは、そちらではありません。上の入口の表から、自分に当てはまるものを1つ選ぶほうです。

口の中に金属が入っているか。眼鏡フレームや腕時計が肌に当たり続けているか。たばこを吸うか。缶飲料を毎日飲むか。大型の魚を週に何回食べているか。どれも、思い出すのではなく、今日その場で確認できます。

そして選んだ1つを変えたら、2ヶ月です。厚労省が水銀について書いている半減期がその長さで、そのあいだ入口を変えていれば、体内の量は半分に近づく側にあります4。1週間で結果を見ようとすると、何も起きていないように見えます。

出す側についても、経路は分かっています。医学の教科書は胆汁を「腎臓で排泄できない物質の主要排泄経路」とし、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています。そして腸が詰まっていれば、胆汁に出されたものは行き場がありません。入口を1つ閉じることと、出口を動かすことは、同時にできます。

そして、閉じるのでも閉じないのでもなく、減らせる入口もあります。乾燥ヒジキの無機ヒ素は、ゆでこぼしで9割減ります。鉄・カルシウム・食物繊維は7割以上残ります。食べ続けながら減らせます。

なお日本人が許容量にいちばん近づいている金属は、主食から入るカドミウムです。平均で耐容週間摂取量の35%、95パーセンタイルで67%でした。これは主食なので、入口を閉じる対象にはなりません。閉じられる入口と、閉じられない入口を分けることが、最初の作業です。

入口ごとにどこまで数字があるかは、入ってくるものと、出す力に一覧で並べています。

そのうえで、測る前に始める「排出」には、効果が確かめられていないものと、診断なしに使えば命に関わるものが混ざっています。結果を受け取ったあとに確かめる項目のなかで、ここがいちばん実害に近い場所です。

参考文献・参考資料

  1. 鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)第53条(健康診断) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000037/
  2. Centers for Disease Control and Prevention. Deaths associated with hypocalcemia from chelation therapy–Texas, Pennsylvania, and Oregon, 2003-2005. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report. 2006;55(8):204-207. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16511441/
  3. Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686. doi:10.1111/jhn.12286 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25522674/
  4. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌 2020;130(4):523-567.(全身型金属アレルギー、表12「種々の金属による病型・症状とその感作源」、付表5「アレルゲン金属と使用可能な歯科金属との対応表」) https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
  5. 水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)。鉛及びその化合物 0.01mg/L以下、総トリハロメタン 0.1mg/L以下 https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100101/
  6. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」平成17年11月2日(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf パンフレット:これからママになるあなたへ

本記事は公的資料と研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・サプリメント・治療の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。キレート剤を含む医薬品は、医師の診断と処方のもとで使用されるものです。自己判断で入手・使用しないでください。

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