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  • 甘味料を、どこまで気にすればいいか

    甘味料を、どこまで気にすればいいか

    2023年5月、WHOは「体重コントロールや非感染性疾患のリスク低減の手段として、非糖質甘味料を使用しないことを提案する」と出しました1。ただしこれは条件付き勧告で、根拠の確実性は「低い」と自ら評価しています1。

    そしてもう一つ。このガイドラインは安全性の評価を変えるものではありません。消費者庁の資料に、そう明記されています1。

    日本人が実際に摂っている量は、一日摂取許容量(ADI)の0.002〜0.25%でした1。

    WHOが出したのは、栄養のガイドラインだった

    2023年5月のガイドラインの目的は、資料にこう書かれています。遊離糖の摂取量を減らす手段としてNSS(非糖質甘味料)への関心が高まってきたことを受けた指針である、と1。

    消費者庁の資料は、性格をひとことでまとめています。「つまり、栄養摂取に係るガイドラインであると言える」1。

    対象範囲も限定されています。糖尿病の方は対象としない。そして「既に個別に設定されている安全量(ADI)の更新を意図するものではない」1。

    つまり「甘味料が危ない」と言った文書ではありません。砂糖を減らす手段として甘味料に置き換えることを勧めない、という文書です。

    勧告の強さと、根拠の確実性

    WHOの勧告には強さの段階があり、今回は条件付き勧告です1。

    根拠の確実性については、ガイドライン自身がこう書いています。

    エビデンス全体の確実性について低いと評価され、前向きコホート研究で観察された優先的な健康アウトカムに関してNSS使用の望ましくない効果に基づいているが、これらはエビデンスの確実性がそれぞれ非常に低い又は低いと評価された1

    もとになっているのは観察研究です。そして体重については、「短期的な摂取はグルコース代謝に影響を与えることが示唆されているが、体重減少や維持に長期的に有効かどうかは不明」とされています1。

    「エビデンスがある」と書かれていたときに確かめる三つのうち、ここでは「どれくらいの差なのか」が未確定のまま残っています。

    日本人が実際に摂っている量

    厚生労働省は、市場で売られている加工食品を買って混ぜ、含有量を測る方式で摂取量を推定しています。マーケットバスケット方式です。令和元年度の成人(20歳以上)の結果です1。

    非糖質甘味料の推定一日摂取量と対ADI比(令和元年度・成人20歳以上)1
    甘味料 推定一日摂取量 1人あたりの許容量 対ADI比
    ステビア抽出物 0.579 mg 235 mg 0.25%
    アセスルファムカリウム 1.779 mg 882 mg 0.20%
    スクラロース 0.752 mg 882 mg 0.09%
    サッカリン 0.144 mg 223 mg 0.06%
    アスパルテーム 0.055 mg 2,352 mg 0.002%
    ネオテーム 0.0002 mg 59 mg 0.0003%
    アドバンテーム 0 mg 294 mg 0%
    甘味料4種の対ADI比を並べた図。ステビア抽出物0.25%、アセスルファムK 0.20%、スクラロース0.09%、アスパルテーム0.002%
    1人あたりの一日摂取許容量は、ADIに成人の平均体重58.8kgを掛けて出しています1。いちばん高いステビア抽出物で、許容量の400分の1です。

    生産量から推定する別の方法でも算出されています。こちらは対ADI比で最大1.1%(サッカリンナトリウム)でした1。資料の結論はこうです。「いずれの調査結果においても、推定一日摂取量はADIよりも大幅に低い値であった」1。

    日本の制度は、どう動いたか

    WHOのガイドラインを受けて、日本でも甘味料の規格基準を変える必要があるかが検討されました。2024年11月28日の添加物部会の資料に、結論が書かれています1。

    WHOガイドラインは、NSSの食品添加物としてのリスク評価に変更を生じさせる内容ではなく、あくまでも公衆衛生上の見地から、その摂取方法や栄養学的な取扱いについて指針を示すものである。また、国内におけるNSSの摂取量推計によると、推定一日摂取量はADIよりも大幅に低い値であった。よって、NSSの各食品添加物の規格基準について見直す必要はないと考える1

    基準は変わっていません。変わっていない理由も、2つとも書かれています。

    読者の側に残る問い

    WHOが提案しているのは、甘味料を避けることではなく、甘味料を「砂糖を減らす手段」として当てにしないことです。ガイドラインは、遊離糖を減らすことや、ナトリウム・脂肪に関する他の指針とあわせて検討すべきだとしています1。

    そして原材料名の欄では、甘味料は「/」の右側に、用途名つきで書かれます。「甘味料(アセスルファムK、スクラロース)」のような形です。

    確かめられることは1つです。ふだん飲んでいるものの原材料名を見て、甘味料が何個入っているかを数える。数が分かれば、上の表で自分がどのあたりにいるかの見当がつきます。

    添加物の欄が該当したときの見方は、添加物はどう調べられているかに書いています。

    参考文献・参考資料

    1. 消費者庁 食品衛生基準審議会 添加物部会(令和6年11月28日)資料4「WHOの非糖質甘味料の使用に関するガイドラインと国内における非糖質甘味料の摂取量推計について」 https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_241203_02.pdf(原典:WHO “Use of non-sugar sweeteners: WHO guideline” 2023年5月 https://www.who.int/publications/i/item/9789240073616)

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・成分の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。糖尿病などで食事の指示を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 魚から入る水銀を、種類と量で管理する

    魚から入る水銀を、種類と量で管理する

    日本人が摂っている水銀の88.1%は魚介類から入っています2。そして厚生労働省は、魚種ごとに「1回約80gとして週に何回まで」という目安を出しています1。

    対象は妊婦です。小児と一般の方は含まれていません。

    そして目安に挙がっているのは、ふだんの食卓にあまり出てこない魚のほうです。キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ。ふだんよく食べるマグロは、ほとんどが目安の外にあります1。

    入口が1つに寄っている、めずらしい物質

    厚生労働省は毎年、水銀の一日摂取量調査を行っています。市場で売られている食品を買い、ふつうに調理してから測る方式です。

    1999年から2008年の結果では、魚介類から88.1%(7.18µg/日)、それ以外の食品から11.9%(0.99µg/日)でした2。

    この偏りは、検査に並ぶ9つの金属のなかでは例外的です。ニッケルやアルミニウムのように入口が何本もある金属と違い、水銀は9割近くが1つの入口から入っています。

    入口が1つなら、変える対象も1つで済みます。

    目安は、魚種ごとにgで決まっている

    薬事・食品衛生審議会が出している注意事項に、魚種と量の対応表があります1。1回を約80gとして、何回までかが書かれています。

    妊婦が注意すべき魚介類の種類と摂食量(筋肉)の目安1
    目安 1週間あたり 魚介類
    週に2回まで 160g程度 キダイ、マカジキ、ユメカサゴ、ミナミマグロ、ヨシキリザメ、イシイルカ、クロムツ
    週に1回まで 80g程度 キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチ(メバチマグロ)、エッチュウバイガイ、ツチクジラ、マッコウクジラ
    2週間に1回まで 40g程度 コビレゴンドウ
    2ヶ月に1回まで 10g程度 バンドウイルカ
    1週間あたりの目安を並べた図。週に2回まで160g、週に1回まで80g、2週間に1回40g、2ヶ月に1回10g
    魚種ごとの目安を1週間あたりの量に直したもの。上と下で16倍ひらいています。同じ週に「週に1回」の魚を2種類食べる場合は、それぞれ2分の1にするよう書かれています1。

    そして表に載っていない側も明記されています。マグロのうちキハダ、ビンナガ、メジマグロ(クロマグロの幼魚)、ツナ缶は「通常の摂食で差し支えありません」1。ツナ缶が名指しで外されているのは、ふだんの量を考えるうえで効きます。

    「1回80g」が、実際にどれくらいか

    gで言われても手が止まります。注意事項は、そこも数字で書いています1。

    魚介類の消費形態ごとの一般的な重量1
    形 重量
    寿司、刺身 一貫または一切れ 15g程度
    刺身 一人前 80g程度
    切り身 一切れ 80g程度

    つまり「週に1回まで」は、キンメダイの切り身1切れ、またはメカジキの刺身1人前にあたります。寿司なら5〜6貫です。

    同じ週に2種類食べるときは、割る

    表は魚種ごとに書かれていますが、組み合わせたときの決まりも書かれています1。

    複数の魚種を同じ週に食べる場合1
    組み合わせ 量の扱い
    「週に1回」の魚を2種類 それぞれ2分の1
    「週に1回」の魚を3種類 それぞれ3分の1
    「週に1回」と「週に2回」を1種類ずつ それぞれ2分の1

    食べ過ぎた週があった場合についても書かれています。「ある週に食べ過ぎた場合は次の週に量を減らしましょう」1。1週間で完結させる決まりではありません。

    対象は妊婦。小児が外れている理由

    この注意事項の対象は妊婦と、妊娠している可能性のある方です。目的は胎児の保護と書かれています1。

    小児が対象外である理由も、Q&Aに書かれています。「小児は成人と同様の水銀の排泄機能を有しており、脳への作用も成人と類似している」こと、そして「セイシェル小児発達研究」で子供の神経系の発達にメチル水銀に関連する有害影響が証明されなかったこと2。

    一般の方についても同じです。「通常食べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません」1。

    平均は、耐容量の57%

    数字で位置を確かめられます。食品安全委員会が定めた妊婦の耐容量は2.0µg/kg体重/週。体重50kgなら週100µg、1日あたり14.3µgです2。

    これに対して、平均的な1日の水銀摂取量は8.2µg。比にすると57%です2。

    注意事項の本文にも同じことが書かれています。「本注意事項は、妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません」1。魚を減らす方向の文書ではありません。

    むしろ逆の記述もあります。「魚介類を全く食べない集団では、高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されています」1。

    変えたら、2ヶ月で見る

    入口を変えたあと、どれくらいで体内の量が動くかも書かれています。「体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月」2。

    カドミウムが腎皮質で20〜50年かかるのと比べると、水銀は短いほうです。今週食べる魚を選べば、2ヶ月後には減っている側の量になります。

    やることは1つです。上の表に自分がよく食べる魚が載っているかを確かめる。載っていなければ、この注意事項で変えるものはありません。載っていたら、1回80gの回数を数えるだけです。

    魚以外の入口については、入ってくるものと、出す力に一覧で並べています。

    参考文献・参考資料

    1. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」平成17年11月2日(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf
    2. 厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項のQ&A」平成22年6月1日改訂(問5・問13・問18・問19) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-b.pdf

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 12の栄養素を1つの表で並べて、手のつけ所を決める

    12の栄養素を1つの表で並べて、手のつけ所を決める

    銅は、日本人の摂取量が推奨量を上回っている栄養素です。

    推奨量は30〜49歳で男性0.9mg、女性0.7mg。実際は20歳以上の平均で男性1.18mg、女性1.03mg12。男性131%、女性147%です。

    検査が測る12の栄養素のなかで、この項目は足りていない前提から始める理由がいちばん薄いほうにあります。

    どのあたりにいるか

    銅の推奨量0.9mgに対し、男性の摂取量は1.18mgで上回っている
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    銅の推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 0.8 0.7
    推奨量 30〜64歳 0.9 0.7
    推奨量 65歳以上 0.8 0.7
    実際(20歳以上の平均) 1.18 1.03
    実際(20〜29歳) 1.10 0.91
    耐容上限量(18歳以上) 7 7
    妊婦の付加量 — +0.1
    授乳婦の付加量 — +0.6

    男性で131%、女性で147%です。この媒体で扱った12の栄養素のなかで、上回っている幅がいちばん大きい項目になります。

    12の栄養素を、まとめて並べる

    ここまでの記事の数字を1つの表にします。「足りていない」は、栄養素によって全然違います。

    基準に対する充足率(20歳以上の平均)
    栄養素 男性 女性 方向
    ビタミンA 57% 67% 大きく足りない
    カルシウム 65% 73%
    マグネシウム 69% 81%
    ビタミンD 77% 69%
    カリウム(目標量に対して) 79% 84% やや足りない
    ビタミンC 90% 95%
    亜鉛 95% 95% ほぼ足りている
    鉄(男性・月経なし女性) 107% 120%
    ビタミンE 111% 110% 上回っている
    葉酸 121% 115%
    銅 131% 147%
    ナトリウム(食塩相当量) 143% 140% 減らす側

    1つの表にすると、どこに力を使えばいいかが決まります。12をまとめて心配する必要はありません。

    なお鉄については、月経のある女性だけ推奨量が10.0〜10.5mgに上がり、そこに対しては68〜72%になります。同じ栄養素でも、条件で答えが変わります。

    亜鉛と一緒に見る理由

    この栄養素には、他と違う事情があります。

    亜鉛を多く摂り続けると、銅の吸収が妨げられます。腸で吸収されるときに競合するためです。

    食事から両方を摂っているぶんには問題になりません。問題になるのは、サプリメントで片方だけ大量に摂ったときです。

    「増やすと不利になる場合がある」という項目が、判断の順番に入っているのは、こういう関係があるためです。1つの栄養素を足すことは、その栄養素だけの話ではありません。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    銅の含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    ごま(いり) 1.68 大さじ1(9g)で0.15mg
    アーモンド(乾) 1.17 10粒15gで0.18mg
    かき(養殖、生) 1.04 5個60gで0.62mg
    ぶた 肝臓(生) 0.99 50gで0.50mg
    大豆(国産、乾) 0.96 —
    あおさ(素干し) 0.80 ひとつまみ2gで0.02mg
    糸引き納豆 0.61 1パック45gで0.27mg
    乾しいたけ(乾) 0.60 2枚6gで0.04mg
    にわとり 肝臓(生) 0.32 50gで0.16mg
    アボカド(生) 0.24 1/2個70gで0.17mg

    顔ぶれが、また同じです。ごま、アーモンド、大豆、納豆、かき。マグネシウム、亜鉛、カルシウムで出てきた食品と重なります。

    12の栄養素の供給源を並べると、レバー・ナッツ・豆類・魚・海藻の5つで10に関わっていました。銅もその中に入ります。

    検査結果の「不足」欄に銅が出たら

    集団としては、推奨量を上回っています。

    RESONA-LABの結果報告書は、銅の「解毒への関与」として「抗酸化酵素(SOD)の構成要素」と記しています4。

    SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)が銅と亜鉛を含む酵素であることは確立しています。ただし「銅を増やせば抗酸化が高まる」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    また報告書は、銅の医師コメントを「鉄とのバランスが重要なミネラルです」としています。銅は鉄の利用を助ける側にあり、鉄の話とつながっています。

    今日できること

    この栄養素については、単独で動かす理由が薄いほうです。

    そして、動かす必要のあるカルシウム・マグネシウム・ビタミンA・ビタミンDのために選ぶ食品に、銅も一緒に入っています。

    12を1つずつ埋めようとするのではなく、重なっている食品を置く。この記事のいちばんの結論はそこです。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(微量ミネラル)銅の食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316469.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。銅の代謝に関わる疾患で治療中の方、亜鉛を含むサプリメントを長期に使用している方は、個別の指示が優先されます。

  • 減塩を、どこから始めれば効くか

    減塩を、どこから始めれば効くか

    ナトリウムは、検査が測る12の栄養素のうち唯一、減らす側にあるものです。

    目標量は18歳以上で男性7.5g未満、女性6.5g未満(食塩相当量)。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性10.7g、女性9.1gです12。

    目標量の143%と140%。他の11の栄養素が足りない側にあるなかで、ここだけ方向が逆です。

    3つの線がある

    この栄養素には、性質の違う数字が3つ置かれています。

    ナトリウムの基準(18歳以上、食塩相当量 g/日)
    男性 女性 何のための値か
    推定平均必要量 1.5 1.5 不足しないための量
    目標量 7.5未満 6.5未満 生活習慣病の発症予防
    重症化予防のための量 6.0未満 高血圧およびCKDの重症化予防
    実際(20歳以上の平均) 10.7 9.1 —
    食塩相当量の目標量に対し、男性は7.5g未満に対し10.7g、女性は6.5g未満に対し9.1gで超えている
    目標量と、20歳以上の摂取量の平均値12。

    必要量は1.5g、目標量は7.5g未満、実際は10.7g。必要量の7倍を摂っていることになります。

    この差を見ると、「足りているか」ではなく「どこまで減らせるか」の話だと分かります。

    もう1つの線、6.0g未満

    表の脚注に、こう書かれています。

    高血圧及び慢性腎臓病(CKD)の重症化予防のための食塩相当量の量は、男女とも6.0g/日未満とした1

    目標量(7.5g/6.5g未満)とは別の、もう1段低い線です。対象が違います。目標量は一般の集団の発症予防、6.0gは既に高血圧やCKDがある人の重症化予防。

    同じ物質に複数の線があるとき、どの線が自分に当てはまるかを先に決める必要があります。

    血液では分からない。尿から推定する

    ナトリウムは、血液で摂取量が分からない側です。血中濃度は体が厳しく調節しているためです。

    食事摂取基準は、別の方法を挙げています。24時間尿中ナトリウム排泄量からナトリウム摂取量を推定することができる1。

    入ってきた量ではなく、出ていった量から逆算する。この媒体で何度か出てきた形です。ブロッコリースプラウトの試験が尿中の代謝物を測っているのも、同じ考え方です。

    どこから入っているか

    ナトリウムは、他の栄養素と違って「どの食品に多いか」では話が済みません。調味料と加工の過程で入るためです。

    食事摂取基準は、日本人の食塩摂取の主な供給源として、しょうゆ・みそ・食塩といった調味料と、漬物・魚介加工品などを挙げています。

    そして加工食品の表示を見ると、栄養成分表示に食塩相当量が必ず記載されています。これは食品表示基準で義務づけられた5項目(熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量)の1つです。

    その欄をどこで見つけて、どう使うかは、消費者庁の動画で確かめられます。


    つまり、この栄養素だけは製品ごとの数字が表示されています。12のうち、買う前に量が分かる唯一の項目です。

    減らすと、他のものも動く

    1つ注意点があります。加工食品を減らすと、食塩以外のものも同時に動きます。

    そしてカリウムは、ナトリウムの排出を助けます。日本人はそちらが目標量に届いていません。

    2つを並べると、方向が決まる
    目標量に対して 方向
    ナトリウム(食塩相当量) 男性143%、女性140% 減らす
    カリウム 男性79%、女性84% 増やす

    いも類・葉の野菜・豆を増やし、調味料と加工食品を減らす。2つの基準が、同じ方向を指しています。

    検査結果の「不足」欄にナトリウムが出たら

    ここは、他の11の栄養素と読み方が変わります。

    日本人の集団としては、不足ではなく過剰の側にあります。必要量1.5gに対して10.7g。

    RESONA-LABの結果報告書は、ナトリウムについて「水分代謝を調整し、腎臓の働きを支える」とし、医師コメントとして「過不足どちらも注意が必要な栄養素です」と記しています4。

    報告書自身が、この栄養素だけ両方向に注意を促しています。実際の集団の状況は、過剰の側です。

    ただし、大量に汗をかいた場合や、下痢・嘔吐が続いた場合は別です。そうした状況は、この記事の平均の話とは別枠になります。

    今日できること

    加工食品を1つ手に取って、栄養成分表示の「食塩相当量」を見る。

    12の栄養素のうち、買う前に数字が分かるのはこれだけです。カップ麺1個、惣菜1パック、パン1個。1食で何gかを知ると、1日10.7gがどこから来ているかが見えます。

    目標量まで減らすには、男性で3.2g、女性で2.6g。1食分の差で埋まる幅です。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)ナトリウムの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
    2. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    3. 消費者庁「食品表示基準」栄養成分表示。熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目が義務表示 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。高血圧・腎臓の疾患で治療中の方、減塩食の指示を受けている方、大量に発汗する環境にいる方は、個別の指示が優先されます。

  • カリウムの2つの基準を、どう使い分けるか

    カリウムの2つの基準を、どう使い分けるか

    カリウムには2つの基準があります。目安量と、目標量です。

    目安量は18歳以上で男性2,500mg、女性2,000mg。目標量は男性3,000mg以上、女性2,600mg以上1。

    日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性2,370mg、女性2,190mg2。目安量は女性のみ超え、目標量は男女とも届いていません。

    目安量と目標量は、別の問いに答えている

    この栄養素をややこしくしているのは、基準が2つあることです。

    2つの基準(18歳以上、mg/日)
    男性 女性 何のための値か
    目安量 2,500 2,000 不足しないための量
    目標量 3,000以上 2,600以上 生活習慣病の発症予防のための量
    実際(20歳以上の平均) 2,370 2,190 —
    カリウムの目標量に対し、男性は3000mgに対し2370mg、女性は2600mgに対し2190mg
    目標量と、20歳以上の摂取量の平均値12。

    「足りているか」の答えは、どちらの基準で見るかで変わります。女性は目安量(2,000mg)は超えていますが、目標量(2,600mg)には届いていません。

    これは検査ごとに答えている問いが違うのと同じ構造です。数字だけを見て「足りている/いない」と言えません。

    ナトリウムと一緒に見る

    カリウムの目標量が置かれている理由は、ナトリウムとの関係にあります。

    カリウムはナトリウムの排出を助けます。そして日本人のナトリウム(食塩相当量)の摂取量は、目標量を大きく超えています。男性10.7g(目標量7.5g未満)、女性9.1g(同6.5g未満)。

    2つを並べると
    目標量に対して
    ナトリウム(食塩相当量) 男性143%、女性140% 超えている
    カリウム 男性79%、女性84% 届いていない

    方向が逆です。片方は減らす側、もう片方は増やす側。

    そしてこの2つを扱っているのは、どちらも腎臓です。RESONA-LABの結果報告書も、カリウムの「解毒への関与」を「ナトリウム排出を助け、腎臓の負担を軽減」としています4。

    血液の値は、摂取量を表していない

    カリウムは、血液で足りているかが分からない側です。

    血中カリウム濃度は、体が厳しく調節しています。血液の値は、調節の結果であって、摂取量ではありません。

    ナトリウムについては、食事摂取基準が24時間尿からの推定という方法を挙げています。カリウムも同様に、血液ではなく尿の側から見る栄養素です。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    カリウムの含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    ほしひじき(乾) 6,400 乾10gで640mg
    乾しいたけ(乾) 2,200 2枚6gで132mg
    大豆(国産、乾) 1,700 —
    アーモンド(乾) 760 10粒15gで114mg
    らっかせい(乾) 740 20粒20gで148mg
    ほうれんそう(生) 690 1食70gで483mg
    糸引き納豆 660 1パック45gで297mg
    アボカド(生) 590 1/2個70gで413mg
    えだまめ(生) 590 1食50gで295mg
    さつまいも(皮なし、生) 480 1本200gで960mg
    ブロッコリー(生) 460 1食70gで322mg
    じゃがいも(皮なし、生) 410 1個100gで410mg
    バナナ(生) 360 1本100gで360mg

    いも類が効きます。含有量では上位ではありませんが、1回に食べる量が大きいためです。さつまいも1本で960mg、目標量の3分の1が入ります。

    100gあたりの数字と、実際に摂れる量は別という話は、ここでもそのまま当てはまります。

    茹でると減る

    1つ、注意点があります。カリウムは水に溶けます。

    腎臓病の食事療法で「茹でこぼす」という手順があるのは、この性質を使ってカリウムを減らすためです。ヒジキの無機ヒ素がゆでこぼしで9割減るのと、同じ原理です。

    ただし方向が逆です。健康な人が目標量に届いていない状況では、減らす工程は不利に働きます。生で食べられるもの、煮汁ごと食べられるものを選ぶほうが、この栄養素については理にかなっています。

    腎臓の機能が低下している場合は、別の話

    はっきり書いておきます。この記事は、腎臓の機能が保たれている人についての話です。

    腎臓の機能が低下すると、カリウムが排泄されにくくなります。そのため制限が指示されることがあります。その場合、この記事の数字は当てはまりません。個別の指示が優先されます。

    今日できること

    いも類か、葉の野菜を1品。さつまいも1本で960mg、ほうれんそう1食で483mg、じゃがいも1個で410mg。

    足りない分(男性で約630mg、女性で約410mg)は、1品で埋まります。

    そしてもう一方の、減らす側も一緒に見ると、方向が決まります。増やすのはカリウム、減らすのは食塩です。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)カリウムの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
    2. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の機能が低下している方、カリウムに影響する薬を使用中の方は、この記事の内容は当てはまりません。個別の指示が優先されます。

  • ビタミンEは、足す必要があるのか

    ビタミンEは、足す必要があるのか

    ビタミンEは、日本人が目安量を上回っている数少ない栄養素です。

    目安量は30〜64歳で男性6.5mg、女性6.0mg。実際は20歳以上の平均で男性7.2mg、女性6.6mg12。男性で111%、女性で110%です。

    そして、この栄養素の基準には注意書きがあります。「α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含まない」2。

    どのあたりにいるか

    ビタミンEの目安量に対し、男性は6.5mgに対し7.2mg、女性は6.0mgに対し6.6mgで上回っている
    30〜64歳の目安量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    ビタミンEの目安量(mg/日、α-トコフェロール)と、実際の摂取量
    男性 女性
    目安量 18〜29歳 6.5 5.0
    目安量 30〜64歳 6.5 6.0
    目安量 65〜74歳 7.5 7.0
    実際(20歳以上の平均) 7.2 6.6
    実際(20〜29歳) 6.4 5.7
    耐容上限量 30〜64歳 800 700

    どの年代でも、おおむね目安量の前後にあります。この栄養素については、埋めるべき差がありません。

    「推奨量」ではなく「目安量」であること

    この栄養素の基準は目安量です。推奨量ではありません。

    2つの指標の違い
    意味 この媒体で扱った例
    推奨量 必要量が推定できるとき、母集団の97〜98%が充足する量として算定されるもの カルシウム、マグネシウム、亜鉛、葉酸、ビタミンA、ビタミンC
    目安量 必要量を推定するだけの根拠がないときに、実際に摂れている量から置かれるもの ビタミンE、ビタミンD、カリウム

    ここが重要です。目安量は「日本人が実際に摂れている量」から置かれています。だから「目安量を上回っている」ことは、足りていることの証明ではありません。基準の作られ方が、そもそもそういう形です。

    同じ目安量のビタミンDでは、逆に基準を下回っています。こちらは日照という別の入口が考慮されているためで、事情が違います。

    「ビタミンE」は、1つの物質ではない

    表の脚注に、こう書かれています。「α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含まない」2。

    ビタミンEと呼ばれる物質は、4種のトコフェロール(α・β・γ・δ)と4種のトコトリエノールの総称です。基準はそのうちα-トコフェロールだけで作られています。

    だから成分表の「ビタミンE」も、この記事の数字も、α-トコフェロールの量です。サプリメントの表示が何を指しているかは、製品によって違います。

    同じ名前でも、測っているものが違うことがあるという話の、分かりやすい例です。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    ビタミンE(α-トコフェロール)の含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    ひまわり油 39.0 大さじ1(12g)で4.7mg
    アーモンド(乾) 30.0 10粒15gで4.5mg
    サフラワー油 27.0 大さじ1(12g)で3.2mg
    らっかせい(乾) 11.0 20粒20gで2.2mg
    うなぎ(養殖、生) 7.4 1/2尾50gで3.7mg
    赤ピーマン(生) 4.3 1/2個60gで2.6mg
    西洋かぼちゃ(生) 3.9 1食80gで3.1mg
    アボカド(生) 3.3 1/2個70gで2.3mg
    ブロッコリー(生) 3.0 1食70gで2.1mg
    ほうれんそう(生) 2.1 1食70gで1.5mg

    上位が油で占められています。そして油は、意識して食べるものではなく、調理に使われるものです。

    これが、この栄養素が目安量を上回っている理由の一部でもあります。日本人の脂質エネルギー比率は28.0%(20歳以上男性)で、油からの寄与が自然に積み上がります。

    上限は、100倍先にある

    耐容上限量は30〜64歳で男性800mg、女性700mgです2。実際の摂取量が7.2mgですから、100倍以上先にあります。

    食事から届く量ではありません。ひまわり油を毎日2リットル飲むような計算になります。

    届くのはサプリメントです。脂溶性ビタミンは体に蓄えられます。足りているのに足す理由があるかという問いが、この栄養素ではとくに効いてきます。

    検査結果の「不足」欄にビタミンEが出たら

    集団としては足りています。むしろ目安量を上回っています。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンEの「解毒への関与」として「活性酸素を除去し、肝臓の負担を軽減」と記しています4。

    ビタミンEが抗酸化作用を持ち、細胞膜を守ることは確立しています。ただし「増やせば肝臓の負担が減る」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    そして、この栄養素については足りていない前提から始める理由がありません。集団の平均は目安量を超えています。

    今日できること

    この栄養素については、動かす必要がない可能性が高いほうです。

    12の栄養素をまとめて「足りていない」と扱うと、本当に足りていないものが埋もれます。足りていないのは、カルシウム・ビタミンA・ビタミンD・マグネシウムのほうです。

    そちらに使う食品を選ぶと、結果としてビタミンEも一緒に入ります。アーモンド10粒で4.5mg。マグネシウム44mg、亜鉛0.5mg、カルシウム38mgも同時に入ります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンEの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。抗凝固薬を使用中の方は、ビタミンEを含むサプリメントについて個別の指示が優先されます。

  • ビタミンCを、どれだけ摂れば足りるのか

    ビタミンCを、どれだけ摂れば足りるのか

    ビタミンCの推奨量は15歳以上で100mg/日(男女とも)。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性90mg、女性95mgです12。

    ほぼ届いています。男性で90%、女性で95%。

    そして、この栄養素には耐容上限量が設定されていません。12の栄養素のうち、上限のない数少ないものです2。

    どのあたりにいるか

    ビタミンCの推奨量100mgに対し、20歳以上は男性90mg・女性95mg、20代は66mg・65mg
    推奨量100mg/日と、実際の摂取量の平均値12。
    ビタミンCの推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量(15歳以上) 100 100
    実際(20歳以上の平均) 90 95
    実際(20〜29歳) 66 65
    実際(70〜79歳) 113 128
    実際(80歳以上) 127 126
    耐容上限量 設定なし
    妊婦の付加量 — +10
    授乳婦の付加量 — +45

    年齢による差が、この媒体で見たなかでいちばん大きい栄養素です。20代で65〜66mg、80歳以上で126〜127mg。約2倍の開きがあります。

    果物と野菜を食べる量の差が、そのまま出ています。

    基準は、壊血病を防ぐ量ではない

    この栄養素の基準には、変わった作られ方がされています。食事摂取基準の表の特記事項に、こう書かれています。

    推定平均必要量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するに足る最小量からではなく、良好なビタミンCの栄養状態の…(維持を目的として算定した)2

    これは珍しい書き方です。多くの栄養素は、欠乏症が起きない量を土台にして基準が作られます。ビタミンCはそうではなく、「良好な栄養状態」を目標にしています。

    つまり100mgに届かなくても、壊血病になるという話ではありません。基準が見ているのは、もっと手前の状態です。

    数字を見るときは、それが何を守るために置かれたかを一緒に見ます。カドミウムの上限が腎臓への影響を指標にしているのと同じで、基準ごとに守っている対象が違います。

    上限がない、ということ

    12の栄養素のうち、耐容上限量が設定されていないのはビタミンCとカリウムです(ナトリウムは目標量という別の形で上限が置かれています)。

    上限の有無
    栄養素 耐容上限量
    ビタミンA 2,700µgRAE
    ビタミンD 100µg
    ビタミンE 男800mg・女650〜700mg
    葉酸 900〜1,000µg(合成葉酸)
    カルシウム 2,500mg
    マグネシウム 350mg(通常の食品以外から)
    亜鉛 男45mg・女35mg
    銅 7mg
    ビタミンC 設定なし
    カリウム 設定なし

    理由は、水に溶けるため体に蓄えられにくく、余った分は尿から出ていくからです。脂溶性のビタミンAが肝臓に蓄積して問題になるのとは、構造が違います。

    ただし「いくらでも摂っていい」という意味ではありません。大量に摂ると下痢などが起きることは知られています。上限が置かれていないのは、健康障害を起こす量の根拠が十分でないためです。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    ビタミンCの含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    赤ピーマン(生) 170 1/2個60gで102mg
    ブロッコリー(生) 140 1食70gで98mg
    いちご(生) 62 5粒75gで47mg
    ネーブル(生) 60 1個130gで78mg
    西洋かぼちゃ(生) 43 1食80gで34mg
    こまつな(生) 39 1食70gで27mg
    ほうれんそう(生) 35 1食70gで25mg
    じゃがいも(皮なし、生) 28 1個100gで28mg
    えだまめ(生) 27 1食50gで14mg

    ブロッコリー1食で98mg。ほぼ1日分です。

    そしてアブラナ科の野菜には、人での無作為化試験で尿中の排泄が動いたという別の報告もあります。ただしそちらは、ビタミンCではなくグルコラファニンについての話です。

    検査結果の「不足」欄にビタミンCが出たら

    集団としては、ほぼ足りています。ただし20代は65〜66mgで、推奨量の65%です。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンCの「解毒への関与」として「有害物質の中和と肝臓酵素の働きを支える」と記しています4。

    ビタミンCが抗酸化作用を持つことは確立しています。ただし「増やせば有害物質が中和される」と人で確かめられた手順は見当たりません。足りない分を埋める理由は、コラーゲン生成と抗酸化という基本的な役割のほうにあります。

    今日できること

    果物か、ブロッコリー・ピーマンのどちらかを1日1回。

    ブロッコリー1食で98mg、赤ピーマン1/2個で102mg、オレンジ1個で78mg。どれか1つで1日分に届きます。

    20代で65mgというのは、こうした食品が食卓にほとんど登場していない、ということです。数えれば分かります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)ビタミンCの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316467.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の疾患で治療中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 葉酸を、自分は足すべきかを見分ける

    葉酸を、自分は足すべきかを見分ける

    葉酸は、集団としては推奨量を上回っています。推奨量240µg/日に対して、20歳以上の平均は男性291µg、女性276µg12。

    ただし、この栄養素には集団の平均では読めない部分があります。

    妊娠を計画している女性については、通常の食事とは別枠の話になります。妊婦の付加量は、中期・後期で+240µg。初期は+0ですが、この時期については別の考え方が置かれています。

    どのあたりにいるか

    葉酸の推奨量240µgに対し、男性291µg、女性276µgで上回っている
    推奨量240µg/日と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    葉酸の推奨量(µg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量(18歳以上) 240 240
    実際(20歳以上の平均) 291 276
    実際(20〜29歳) 240 220
    実際(70〜79歳) 334 333
    耐容上限量 18〜29歳 900 900
    耐容上限量 30〜64歳 1,000 1,000
    妊婦の付加量(推奨量) — 初期+0/中期・後期+240
    授乳婦の付加量(推奨量) — +100

    20代だけは、推奨量ちょうどか、下回っています。男性240µg(ちょうど)、女性220µg(92%)。70代は男女とも333〜334µgです。

    そして20代女性は、妊娠を計画する可能性がいちばん高い層です。集団の平均が足りていることと、この層が足りていることは別の話になります。

    2つの葉酸がある

    この栄養素には、区別が必要な点があります。

    2つの形
    どこにあるか 上限の対象か
    食事性葉酸(ポリグルタミン酸型) 野菜、豆、レバーなど 対象ではない
    合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸) サプリメント、強化食品 対象。900〜1,000µg

    耐容上限量は、通常の食品以外から摂る合成葉酸に対して設定されています2。マグネシウムの上限が「通常の食品以外から350mg」とされているのと、同じ形です。

    吸収率も違います。合成葉酸のほうが、食事性葉酸より効率よく吸収されます。だから同じ数字でも、入ってくる形で意味が変わります。

    妊娠を計画しているなら

    ここが、この栄養素でいちばん扱いが違う部分です。

    食事摂取基準は、妊婦の付加量を初期+0、中期・後期+240µgとしています2。

    初期が+0なのは、必要ないという意味ではありません。この時期については、通常の食事からの葉酸とは別に、合成葉酸の摂取が別枠で扱われています。神経管閉鎖障害のリスク低減を目的としたもので、日本では厚生労働省が2000年に通知を出しています。

    この記事の範囲を超える話なので、これ以上は書きません。妊娠を計画している場合、集団の平均の数字は判断材料になりません。

    血液で測れる。ただし2種類ある

    葉酸は、血液で確かめられる側です。ただし条件つきです。

    2つの測り方
    何を表しているか
    血清葉酸 短期の摂取状況。直近の食事に影響されます
    赤血球葉酸 中長期の指標。赤血球の寿命ぶん(約120日)をならした値になります

    どちらを測ったかで、答えている問いが違います。前日に野菜を多く食べただけで血清葉酸は上がりますが、赤血球葉酸は動きません。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    葉酸の含有量(µg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    にわとり 肝臓(生) 1,300 50gで650µg
    ぶた 肝臓(生) 810 50gで405µg
    えだまめ(生) 320 1食50gで160µg
    乾しいたけ(乾) 270 2枚6gで16µg
    大豆(国産、乾) 260 —
    ブロッコリー(生) 220 1食70gで154µg
    ほうれんそう(生) 210 1食70gで147µg
    アスパラガス(生) 190 3本60gで114µg
    糸引き納豆 120 1パック45gで54µg
    こまつな(生) 110 1食70gで77µg
    いちご(生) 90 5粒75gで68µg

    名前のとおり、葉の野菜と豆に多く入っています。ほうれんそう1食で147µg、推奨量240µgの6割です。

    そしてレバーはここでも桁が違います。鶏レバー50gで650µg。ただしこちらはビタミンAが7,000µgRAE入っていて、そちらの上限(2,700)を超えます。葉酸のためにレバーを毎日、は成り立ちません。

    検査結果の「不足」欄に葉酸が出たら

    集団としては足りています。ただし20代は推奨量ちょうどか、下回っています。

    RESONA-LABの結果報告書は、葉酸の「解毒への関与」として「肝臓のメチル化反応に関与し、解毒酵素をサポート」と記しています4。

    メチル化は、第II相の抱合反応の1つとして実在します。ただし「葉酸を増やせば処理が速くなる」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    そしてこの栄養素は測れます。集団の話より、自分の値のほうが判断材料になります。

    今日できること

    葉の野菜か豆を、1食に1品。ほうれんそう1食で147µg、えだまめ50gで160µg、ブロッコリー1食で154µg。1品で推奨量の6割が入ります。

    そして妊娠を計画している場合は、この記事の数字では足りません。別枠の話になります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)葉酸の食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316467.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。妊娠中・妊娠を計画している方の葉酸の摂取については、この記事の範囲外です。個別の指示が優先されます。

  • 亜鉛が足りているかを、確かめる方法がある

    亜鉛が足りているかを、確かめる方法がある

    亜鉛は、日本人の摂取量が推奨量にほぼ届いている数少ない栄養素です。

    推奨量は30〜49歳で男性9.5mg、女性8.0mg。実際は20歳以上の平均で男性9.0mg、女性7.6mg12。男性で95%、女性で95%です。

    そして、この栄養素は血液で確かめられる側にあります。血清亜鉛値に診療指針があります。集団の平均ではなく、自分の値を知ることができます。

    どのあたりにいるか

    亜鉛の推奨量に対し、男性は9.5mgに対し9.0mg、女性は8.0mgに対し7.6mgでほぼ届いている
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    亜鉛の推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 9.0 7.5
    推奨量 30〜64歳 9.5 8.0
    推奨量 75歳以上 9.0 7.0
    実際(20歳以上の平均) 9.0 7.6
    実際(20〜29歳) 9.1 7.7
    耐容上限量 30〜64歳 45 35

    他の栄養素と並べると、位置がはっきりします。

    推奨量・目安量に対する充足率(20歳以上の平均)
    栄養素 男性 女性
    カルシウム 65% 73%
    ビタミンD 77% 69%
    マグネシウム 69% 81%
    ビタミンA 57% 67%
    亜鉛 95% 95%

    「足りていない」は、栄養素によって全然違います。まとめて心配する必要はありません。

    この栄養素は、血液で測れる

    栄養素には、血液の数値で足りているかが分かるものと、分からないものがあります。

    亜鉛は分かる側です。血清亜鉛値で評価され、診療指針があります。

    条件が1つあります。早朝空腹時の採血です。血清亜鉛には日内変動があり、食事の影響も受けるためです。ばらばらの時間に測ると、比べられません。

    つまり気になるなら測れます。この記事の数字は集団の平均で、自分がどこにいるかは別に確かめられます。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    亜鉛の含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    かき(養殖、生) 14.0 5個60gで8.4mg
    ぶた 肝臓(生) 6.9 50gで3.5mg
    ごま(いり) 5.9 大さじ1(9g)で0.5mg
    大豆(国産、乾) 3.9 —
    アーモンド(乾) 3.6 10粒15gで0.5mg
    にわとり 肝臓(生) 3.3 50gで1.7mg
    プロセスチーズ 3.2 1切れ20gで0.6mg
    カットわかめ(乾) 2.8 乾2gで0.06mg
    うなぎ かば焼 2.7 1/2尾50gで1.4mg
    糸引き納豆 1.9 1パック45gで0.9mg
    鶏卵(全卵、生) 1.1 1個50gで0.6mg

    牡蠣が突出しています。5個で8.4mg、1日の推奨量にほぼ届きます。

    ただしここに並んでいる食品は、日常的に食べる量が多いものではありません。それでも平均で95%に届いているのは、肉・魚・穀類など、1つあたりの含有量は低くても量を食べるものから積み上がっているためです。

    上限は、サプリメントで届く

    耐容上限量は30〜64歳で男性45mg、女性35mgです2。

    実際の摂取量が9.0mgですから、食事から5倍にしないと届きません。牡蠣を毎日300g食べる計算です。

    届くのはサプリメントです。そして亜鉛を多く摂り続けると、銅の吸収が妨げられることが知られています。銅も、検査が測っている12の栄養素の1つです。

    「増やすと不利になる場合がある」という項目が、判断の順番に入っているのは、こういう関係があるためです。

    検査結果の「不足」欄に亜鉛が出たら

    集団としては、ほぼ足りています。そして、この栄養素は測れます。

    RESONA-LABの結果報告書は、亜鉛の「解毒への関与」として「有害金属の排出を助ける」と記しています4。

    この記述の裏づけになる、人での試験は確認できませんでした。汗中の金属の系統的レビューには、皮膚分泌物で亜鉛とヒ素の比が観察されたという記述がありますが、「亜鉛を増やせば有害金属の排出が増える」と言える手順にはなっていません。

    足りているかを確かめる方法があるので、順番は単純です。気になるなら測る。測って足りているなら、この項目で動く必要はありません。

    今日できること

    この栄養素については、まず「足りていない前提」を疑うことです。集団の平均は推奨量の95%です。

    そのうえで、味覚の変化や傷の治りの遅さが続いているなら、「血清亜鉛を測れますか」と聞けます。早朝空腹時という条件がある検査です。

    食事で増やすなら、牡蠣・レバー・ごま・ナッツ。マグネシウムの供給源と重なります。1つ足すと複数が動くのは、ここでも同じです。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(微量ミネラル)亜鉛の食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316469.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。亜鉛を含むサプリメントを長期に多量に使用すると、銅の吸収が妨げられることがあります。治療中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • ビタミンAを、摂りすぎずに埋める

    ビタミンAを、摂りすぎずに埋める

    ビタミンAは、足りない側と、摂りすぎる側の両方に線がある数少ない栄養素です。

    推奨量は30〜49歳で男性900µgRAE、女性700µgRAE。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性512µgRAE、女性471µgRAEです12。男性で約57%、女性で約67%。

    一方で耐容上限量は2,700µgRAE。鶏レバー100gに14,000µgRAE入っています3。1食で上限の5倍です。

    どれだけ足りていないか

    ビタミンAの推奨量に対し、男性は900µgRAEに対し512、女性は700µgRAEに対し471
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    ビタミンAの推奨量(µgRAE/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 850 650
    推奨量 30〜49歳 900 700
    推奨量 50〜64歳 900 700
    実際(20歳以上の平均) 512 471
    実際(20〜29歳) 394 354
    耐容上限量(18歳以上) 2,700

    この栄養素は、上下の幅が狭いのが特徴です。推奨量900に対して上限2,700。3倍しかありません。カルシウムが推奨量750に対して上限2,500(3.3倍)、ビタミンDが目安量9.0に対して上限100(11倍)なのと比べると、余裕が小さい側です。

    上限は、どう作られたか

    食事摂取基準の報告書に、計算の過程が書かれています。

    成人では肝臓へのビタミンAの過剰蓄積による肝臓障害を指標にし、最低健康障害発現量を13,500µgRAE/日とした。不確実性因子を5として耐容上限量は2,700µgRAE/日とした2

    13,500を5で割って2,700。この「5」が不確実性因子です。食品添加物の一日摂取許容量が100で割って作られているのと同じ考え方で、割る数が違います。

    報告書は、過剰摂取による健康障害が報告されているのは「サプリメントを大量に摂取した場合や動物の肝臓を大量に摂取した場合である」としています2。

    野菜からは、過剰にならない

    ここが、この栄養素のいちばん重要な区別です。

    報告書は、こう書いています。プロビタミンA(カロテノイド)からビタミンA(レチノイド)への変換は厳密に調節されており、必要に応じて体内でビタミンAに変換される。つまり、カロテノイドを大量に摂取しても過剰症を生じるレベルまでレチノイドに変換されることはない2。

    そのため耐容上限量はレチノイドに対してのみ定められ、プロビタミンA(カロテノイド)は含まれていません2。

    2つの入り方
    主な食品 上限の対象か
    レチノイド レバー、うなぎ、卵、乳製品 対象。2,700µgRAE
    プロビタミンA(β-カロテンなど) にんじん、かぼちゃ、ほうれんそう 対象ではない

    「にんじんを食べすぎるとビタミンAが過剰になる」ということは起きません。変換のほうが調節されているからです。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり、レチノール活性当量3。

    ビタミンAの含有量(µgRAE/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    鶏レバー(生) 14,000 50gで7,000(上限の2.6倍)
    豚レバー(生) 13,000 50gで6,500
    うなぎ かば焼 1,500 1/2尾50gで750
    にんじん(皮つき、生) 720 1/3本50gで360
    ほうれんそう(生) 350 1食70gで245
    プロセスチーズ 250 1切れ20gで50
    西洋かぼちゃ(生) 210 1食80gで168
    鶏卵(全卵、生) 210 1個50gで105

    レバーだけが、2桁違います。鶏レバー50gで7,000µgRAE。耐容上限量2,700の2.6倍です。

    ただし耐容上限量は毎日その量を続けた場合の基準です。たまに食べることを問題にしているのではありません。報告書も「大量に摂取した場合」と書いています。

    妊娠中は、別に読む必要がある

    報告書は、妊婦について別の計算をしています。

    ビタミンA過剰摂取による胎児奇形の報告をもとに、健康障害非発現量を4,500µgRAE/日、不確実性因子を1.5とすると、付加量も含めた耐容上限量は3,000µgRAE/日となるが、成人と同じ2,700µgRAE/日を参考とすることが望ましい2。

    そして推奨量の付加量は、妊娠初期+0、中期+0、後期のみ+80µgRAEです2。

    妊娠中にレバーを避けるよう言われることがあるのは、この計算が背景にあります。β-カロテンの側は対象ではないので、にんじんやかぼちゃは別の話です。

    検査結果の「不足」欄にビタミンAが出たら

    集団としては足りていません。特に20代は推奨量の4〜5割です。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンAの「解毒への関与」として「腸管バリアを維持し、有害物質の侵入を防ぐ」と記しています4。

    ビタミンAが腸の粘膜の維持に関わることは、報告書も「皮膚や粘膜を守り、免疫を支える」として挙げています2。ただし「増やせば有害物質の侵入が減る」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    足りない分を埋める理由は、そちらではなく、視覚機能・成長・細胞分化・免疫という基本的な役割のほうにあります。

    今日できること

    緑黄色野菜を1品入れる。にんじん1/3本で360µgRAE、ほうれんそう1食で245µgRAE。足りない分(男性で約390µgRAE)の半分から全部が埋まります。

    そしてこちらは、上限を気にしなくていい側です。β-カロテンの変換は調節されています。

    レバーで埋めようとすると、逆の問題が出ます。「足りないなら、いちばん多く入っているものを」という発想が通用しない、数少ない栄養素です。

    埋めるなら、にんじん・かぼちゃ・青菜の側です。こちらはβ-カロテンとして入り、必要な分だけビタミンAに変換されます。だから、この経路では過剰症が問題になりません。

    気をつける対象は2つだけです。動物のレバーを続けて食べること、そしてビタミンAを含むサプリメントを重ねること。裏を返せば、野菜から埋めるぶんには数えなくて済みます。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンAの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。妊娠中・妊娠の可能性のある方、ビタミンA誘導体を含む薬を使用中の方は、個別の指示が優先されます。