カテゴリー: 栄養・食

  • ビタミンEは、足す必要があるのか

    ビタミンEは、足す必要があるのか

    ビタミンEは、日本人が目安量を上回っている数少ない栄養素です。

    目安量は30〜64歳で男性6.5mg、女性6.0mg。実際は20歳以上の平均で男性7.2mg、女性6.6mg12。男性で111%、女性で110%です。

    そして、この栄養素の基準には注意書きがあります。「α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含まない」2。

    どのあたりにいるか

    ビタミンEの目安量に対し、男性は6.5mgに対し7.2mg、女性は6.0mgに対し6.6mgで上回っている
    30〜64歳の目安量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    ビタミンEの目安量(mg/日、α-トコフェロール)と、実際の摂取量
    男性 女性
    目安量 18〜29歳 6.5 5.0
    目安量 30〜64歳 6.5 6.0
    目安量 65〜74歳 7.5 7.0
    実際(20歳以上の平均) 7.2 6.6
    実際(20〜29歳) 6.4 5.7
    耐容上限量 30〜64歳 800 700

    どの年代でも、おおむね目安量の前後にあります。この栄養素については、埋めるべき差がありません。

    「推奨量」ではなく「目安量」であること

    この栄養素の基準は目安量です。推奨量ではありません。

    2つの指標の違い
    意味 この媒体で扱った例
    推奨量 必要量が推定できるとき、母集団の97〜98%が充足する量として算定されるもの カルシウム、マグネシウム、亜鉛、葉酸、ビタミンA、ビタミンC
    目安量 必要量を推定するだけの根拠がないときに、実際に摂れている量から置かれるもの ビタミンE、ビタミンD、カリウム

    ここが重要です。目安量は「日本人が実際に摂れている量」から置かれています。だから「目安量を上回っている」ことは、足りていることの証明ではありません。基準の作られ方が、そもそもそういう形です。

    同じ目安量のビタミンDでは、逆に基準を下回っています。こちらは日照という別の入口が考慮されているためで、事情が違います。

    「ビタミンE」は、1つの物質ではない

    表の脚注に、こう書かれています。「α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含まない」2。

    ビタミンEと呼ばれる物質は、4種のトコフェロール(α・β・γ・δ)と4種のトコトリエノールの総称です。基準はそのうちα-トコフェロールだけで作られています。

    だから成分表の「ビタミンE」も、この記事の数字も、α-トコフェロールの量です。サプリメントの表示が何を指しているかは、製品によって違います。

    同じ名前でも、測っているものが違うことがあるという話の、分かりやすい例です。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    ビタミンE(α-トコフェロール)の含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    ひまわり油 39.0 大さじ1(12g)で4.7mg
    アーモンド(乾) 30.0 10粒15gで4.5mg
    サフラワー油 27.0 大さじ1(12g)で3.2mg
    らっかせい(乾) 11.0 20粒20gで2.2mg
    うなぎ(養殖、生) 7.4 1/2尾50gで3.7mg
    赤ピーマン(生) 4.3 1/2個60gで2.6mg
    西洋かぼちゃ(生) 3.9 1食80gで3.1mg
    アボカド(生) 3.3 1/2個70gで2.3mg
    ブロッコリー(生) 3.0 1食70gで2.1mg
    ほうれんそう(生) 2.1 1食70gで1.5mg

    上位が油で占められています。そして油は、意識して食べるものではなく、調理に使われるものです。

    これが、この栄養素が目安量を上回っている理由の一部でもあります。日本人の脂質エネルギー比率は28.0%(20歳以上男性)で、油からの寄与が自然に積み上がります。

    上限は、100倍先にある

    耐容上限量は30〜64歳で男性800mg、女性700mgです2。実際の摂取量が7.2mgですから、100倍以上先にあります。

    食事から届く量ではありません。ひまわり油を毎日2リットル飲むような計算になります。

    届くのはサプリメントです。脂溶性ビタミンは体に蓄えられます。足りているのに足す理由があるかという問いが、この栄養素ではとくに効いてきます。

    検査結果の「不足」欄にビタミンEが出たら

    集団としては足りています。むしろ目安量を上回っています。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンEの「解毒への関与」として「活性酸素を除去し、肝臓の負担を軽減」と記しています4。

    ビタミンEが抗酸化作用を持ち、細胞膜を守ることは確立しています。ただし「増やせば肝臓の負担が減る」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    そして、この栄養素については足りていない前提から始める理由がありません。集団の平均は目安量を超えています。

    今日できること

    この栄養素については、動かす必要がない可能性が高いほうです。

    12の栄養素をまとめて「足りていない」と扱うと、本当に足りていないものが埋もれます。足りていないのは、カルシウム・ビタミンA・ビタミンD・マグネシウムのほうです。

    そちらに使う食品を選ぶと、結果としてビタミンEも一緒に入ります。アーモンド10粒で4.5mg。マグネシウム44mg、亜鉛0.5mg、カルシウム38mgも同時に入ります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンEの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。抗凝固薬を使用中の方は、ビタミンEを含むサプリメントについて個別の指示が優先されます。

  • ビタミンCを、どれだけ摂れば足りるのか

    ビタミンCを、どれだけ摂れば足りるのか

    ビタミンCの推奨量は15歳以上で100mg/日(男女とも)。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性90mg、女性95mgです12。

    ほぼ届いています。男性で90%、女性で95%。

    そして、この栄養素には耐容上限量が設定されていません。12の栄養素のうち、上限のない数少ないものです2。

    どのあたりにいるか

    ビタミンCの推奨量100mgに対し、20歳以上は男性90mg・女性95mg、20代は66mg・65mg
    推奨量100mg/日と、実際の摂取量の平均値12。
    ビタミンCの推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量(15歳以上) 100 100
    実際(20歳以上の平均) 90 95
    実際(20〜29歳) 66 65
    実際(70〜79歳) 113 128
    実際(80歳以上) 127 126
    耐容上限量 設定なし
    妊婦の付加量 — +10
    授乳婦の付加量 — +45

    年齢による差が、この媒体で見たなかでいちばん大きい栄養素です。20代で65〜66mg、80歳以上で126〜127mg。約2倍の開きがあります。

    果物と野菜を食べる量の差が、そのまま出ています。

    基準は、壊血病を防ぐ量ではない

    この栄養素の基準には、変わった作られ方がされています。食事摂取基準の表の特記事項に、こう書かれています。

    推定平均必要量は、ビタミンCの欠乏症である壊血病を予防するに足る最小量からではなく、良好なビタミンCの栄養状態の…(維持を目的として算定した)2

    これは珍しい書き方です。多くの栄養素は、欠乏症が起きない量を土台にして基準が作られます。ビタミンCはそうではなく、「良好な栄養状態」を目標にしています。

    つまり100mgに届かなくても、壊血病になるという話ではありません。基準が見ているのは、もっと手前の状態です。

    数字を見るときは、それが何を守るために置かれたかを一緒に見ます。カドミウムの上限が腎臓への影響を指標にしているのと同じで、基準ごとに守っている対象が違います。

    上限がない、ということ

    12の栄養素のうち、耐容上限量が設定されていないのはビタミンCとカリウムです(ナトリウムは目標量という別の形で上限が置かれています)。

    上限の有無
    栄養素 耐容上限量
    ビタミンA 2,700µgRAE
    ビタミンD 100µg
    ビタミンE 男800mg・女650〜700mg
    葉酸 900〜1,000µg(合成葉酸)
    カルシウム 2,500mg
    マグネシウム 350mg(通常の食品以外から)
    亜鉛 男45mg・女35mg
    銅 7mg
    ビタミンC 設定なし
    カリウム 設定なし

    理由は、水に溶けるため体に蓄えられにくく、余った分は尿から出ていくからです。脂溶性のビタミンAが肝臓に蓄積して問題になるのとは、構造が違います。

    ただし「いくらでも摂っていい」という意味ではありません。大量に摂ると下痢などが起きることは知られています。上限が置かれていないのは、健康障害を起こす量の根拠が十分でないためです。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    ビタミンCの含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    赤ピーマン(生) 170 1/2個60gで102mg
    ブロッコリー(生) 140 1食70gで98mg
    いちご(生) 62 5粒75gで47mg
    ネーブル(生) 60 1個130gで78mg
    西洋かぼちゃ(生) 43 1食80gで34mg
    こまつな(生) 39 1食70gで27mg
    ほうれんそう(生) 35 1食70gで25mg
    じゃがいも(皮なし、生) 28 1個100gで28mg
    えだまめ(生) 27 1食50gで14mg

    ブロッコリー1食で98mg。ほぼ1日分です。

    そしてアブラナ科の野菜には、人での無作為化試験で尿中の排泄が動いたという別の報告もあります。ただしそちらは、ビタミンCではなくグルコラファニンについての話です。

    検査結果の「不足」欄にビタミンCが出たら

    集団としては、ほぼ足りています。ただし20代は65〜66mgで、推奨量の65%です。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンCの「解毒への関与」として「有害物質の中和と肝臓酵素の働きを支える」と記しています4。

    ビタミンCが抗酸化作用を持つことは確立しています。ただし「増やせば有害物質が中和される」と人で確かめられた手順は見当たりません。足りない分を埋める理由は、コラーゲン生成と抗酸化という基本的な役割のほうにあります。

    今日できること

    果物か、ブロッコリー・ピーマンのどちらかを1日1回。

    ブロッコリー1食で98mg、赤ピーマン1/2個で102mg、オレンジ1個で78mg。どれか1つで1日分に届きます。

    20代で65mgというのは、こうした食品が食卓にほとんど登場していない、ということです。数えれば分かります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)ビタミンCの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316467.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の疾患で治療中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 葉酸を、自分は足すべきかを見分ける

    葉酸を、自分は足すべきかを見分ける

    葉酸は、集団としては推奨量を上回っています。推奨量240µg/日に対して、20歳以上の平均は男性291µg、女性276µg12。

    ただし、この栄養素には集団の平均では読めない部分があります。

    妊娠を計画している女性については、通常の食事とは別枠の話になります。妊婦の付加量は、中期・後期で+240µg。初期は+0ですが、この時期については別の考え方が置かれています。

    どのあたりにいるか

    葉酸の推奨量240µgに対し、男性291µg、女性276µgで上回っている
    推奨量240µg/日と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    葉酸の推奨量(µg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量(18歳以上) 240 240
    実際(20歳以上の平均) 291 276
    実際(20〜29歳) 240 220
    実際(70〜79歳) 334 333
    耐容上限量 18〜29歳 900 900
    耐容上限量 30〜64歳 1,000 1,000
    妊婦の付加量(推奨量) — 初期+0/中期・後期+240
    授乳婦の付加量(推奨量) — +100

    20代だけは、推奨量ちょうどか、下回っています。男性240µg(ちょうど)、女性220µg(92%)。70代は男女とも333〜334µgです。

    そして20代女性は、妊娠を計画する可能性がいちばん高い層です。集団の平均が足りていることと、この層が足りていることは別の話になります。

    2つの葉酸がある

    この栄養素には、区別が必要な点があります。

    2つの形
    どこにあるか 上限の対象か
    食事性葉酸(ポリグルタミン酸型) 野菜、豆、レバーなど 対象ではない
    合成葉酸(プテロイルモノグルタミン酸) サプリメント、強化食品 対象。900〜1,000µg

    耐容上限量は、通常の食品以外から摂る合成葉酸に対して設定されています2。マグネシウムの上限が「通常の食品以外から350mg」とされているのと、同じ形です。

    吸収率も違います。合成葉酸のほうが、食事性葉酸より効率よく吸収されます。だから同じ数字でも、入ってくる形で意味が変わります。

    妊娠を計画しているなら

    ここが、この栄養素でいちばん扱いが違う部分です。

    食事摂取基準は、妊婦の付加量を初期+0、中期・後期+240µgとしています2。

    初期が+0なのは、必要ないという意味ではありません。この時期については、通常の食事からの葉酸とは別に、合成葉酸の摂取が別枠で扱われています。神経管閉鎖障害のリスク低減を目的としたもので、日本では厚生労働省が2000年に通知を出しています。

    この記事の範囲を超える話なので、これ以上は書きません。妊娠を計画している場合、集団の平均の数字は判断材料になりません。

    血液で測れる。ただし2種類ある

    葉酸は、血液で確かめられる側です。ただし条件つきです。

    2つの測り方
    何を表しているか
    血清葉酸 短期の摂取状況。直近の食事に影響されます
    赤血球葉酸 中長期の指標。赤血球の寿命ぶん(約120日)をならした値になります

    どちらを測ったかで、答えている問いが違います。前日に野菜を多く食べただけで血清葉酸は上がりますが、赤血球葉酸は動きません。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    葉酸の含有量(µg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    にわとり 肝臓(生) 1,300 50gで650µg
    ぶた 肝臓(生) 810 50gで405µg
    えだまめ(生) 320 1食50gで160µg
    乾しいたけ(乾) 270 2枚6gで16µg
    大豆(国産、乾) 260 —
    ブロッコリー(生) 220 1食70gで154µg
    ほうれんそう(生) 210 1食70gで147µg
    アスパラガス(生) 190 3本60gで114µg
    糸引き納豆 120 1パック45gで54µg
    こまつな(生) 110 1食70gで77µg
    いちご(生) 90 5粒75gで68µg

    名前のとおり、葉の野菜と豆に多く入っています。ほうれんそう1食で147µg、推奨量240µgの6割です。

    そしてレバーはここでも桁が違います。鶏レバー50gで650µg。ただしこちらはビタミンAが7,000µgRAE入っていて、そちらの上限(2,700)を超えます。葉酸のためにレバーを毎日、は成り立ちません。

    検査結果の「不足」欄に葉酸が出たら

    集団としては足りています。ただし20代は推奨量ちょうどか、下回っています。

    RESONA-LABの結果報告書は、葉酸の「解毒への関与」として「肝臓のメチル化反応に関与し、解毒酵素をサポート」と記しています4。

    メチル化は、第II相の抱合反応の1つとして実在します。ただし「葉酸を増やせば処理が速くなる」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    そしてこの栄養素は測れます。集団の話より、自分の値のほうが判断材料になります。

    今日できること

    葉の野菜か豆を、1食に1品。ほうれんそう1食で147µg、えだまめ50gで160µg、ブロッコリー1食で154µg。1品で推奨量の6割が入ります。

    そして妊娠を計画している場合は、この記事の数字では足りません。別枠の話になります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(水溶性ビタミン)葉酸の食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316467.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。妊娠中・妊娠を計画している方の葉酸の摂取については、この記事の範囲外です。個別の指示が優先されます。

  • 亜鉛が足りているかを、確かめる方法がある

    亜鉛が足りているかを、確かめる方法がある

    亜鉛は、日本人の摂取量が推奨量にほぼ届いている数少ない栄養素です。

    推奨量は30〜49歳で男性9.5mg、女性8.0mg。実際は20歳以上の平均で男性9.0mg、女性7.6mg12。男性で95%、女性で95%です。

    そして、この栄養素は血液で確かめられる側にあります。血清亜鉛値に診療指針があります。集団の平均ではなく、自分の値を知ることができます。

    どのあたりにいるか

    亜鉛の推奨量に対し、男性は9.5mgに対し9.0mg、女性は8.0mgに対し7.6mgでほぼ届いている
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    亜鉛の推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 9.0 7.5
    推奨量 30〜64歳 9.5 8.0
    推奨量 75歳以上 9.0 7.0
    実際(20歳以上の平均) 9.0 7.6
    実際(20〜29歳) 9.1 7.7
    耐容上限量 30〜64歳 45 35

    他の栄養素と並べると、位置がはっきりします。

    推奨量・目安量に対する充足率(20歳以上の平均)
    栄養素 男性 女性
    カルシウム 65% 73%
    ビタミンD 77% 69%
    マグネシウム 69% 81%
    ビタミンA 57% 67%
    亜鉛 95% 95%

    「足りていない」は、栄養素によって全然違います。まとめて心配する必要はありません。

    この栄養素は、血液で測れる

    栄養素には、血液の数値で足りているかが分かるものと、分からないものがあります。

    亜鉛は分かる側です。血清亜鉛値で評価され、診療指針があります。

    条件が1つあります。早朝空腹時の採血です。血清亜鉛には日内変動があり、食事の影響も受けるためです。ばらばらの時間に測ると、比べられません。

    つまり気になるなら測れます。この記事の数字は集団の平均で、自分がどこにいるかは別に確かめられます。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    亜鉛の含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    かき(養殖、生) 14.0 5個60gで8.4mg
    ぶた 肝臓(生) 6.9 50gで3.5mg
    ごま(いり) 5.9 大さじ1(9g)で0.5mg
    大豆(国産、乾) 3.9 —
    アーモンド(乾) 3.6 10粒15gで0.5mg
    にわとり 肝臓(生) 3.3 50gで1.7mg
    プロセスチーズ 3.2 1切れ20gで0.6mg
    カットわかめ(乾) 2.8 乾2gで0.06mg
    うなぎ かば焼 2.7 1/2尾50gで1.4mg
    糸引き納豆 1.9 1パック45gで0.9mg
    鶏卵(全卵、生) 1.1 1個50gで0.6mg

    牡蠣が突出しています。5個で8.4mg、1日の推奨量にほぼ届きます。

    ただしここに並んでいる食品は、日常的に食べる量が多いものではありません。それでも平均で95%に届いているのは、肉・魚・穀類など、1つあたりの含有量は低くても量を食べるものから積み上がっているためです。

    上限は、サプリメントで届く

    耐容上限量は30〜64歳で男性45mg、女性35mgです2。

    実際の摂取量が9.0mgですから、食事から5倍にしないと届きません。牡蠣を毎日300g食べる計算です。

    届くのはサプリメントです。そして亜鉛を多く摂り続けると、銅の吸収が妨げられることが知られています。銅も、検査が測っている12の栄養素の1つです。

    「増やすと不利になる場合がある」という項目が、判断の順番に入っているのは、こういう関係があるためです。

    検査結果の「不足」欄に亜鉛が出たら

    集団としては、ほぼ足りています。そして、この栄養素は測れます。

    RESONA-LABの結果報告書は、亜鉛の「解毒への関与」として「有害金属の排出を助ける」と記しています4。

    この記述の裏づけになる、人での試験は確認できませんでした。汗中の金属の系統的レビューには、皮膚分泌物で亜鉛とヒ素の比が観察されたという記述がありますが、「亜鉛を増やせば有害金属の排出が増える」と言える手順にはなっていません。

    足りているかを確かめる方法があるので、順番は単純です。気になるなら測る。測って足りているなら、この項目で動く必要はありません。

    今日できること

    この栄養素については、まず「足りていない前提」を疑うことです。集団の平均は推奨量の95%です。

    そのうえで、味覚の変化や傷の治りの遅さが続いているなら、「血清亜鉛を測れますか」と聞けます。早朝空腹時という条件がある検査です。

    食事で増やすなら、牡蠣・レバー・ごま・ナッツ。マグネシウムの供給源と重なります。1つ足すと複数が動くのは、ここでも同じです。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(微量ミネラル)亜鉛の食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316469.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。亜鉛を含むサプリメントを長期に多量に使用すると、銅の吸収が妨げられることがあります。治療中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • ビタミンAを、摂りすぎずに埋める

    ビタミンAを、摂りすぎずに埋める

    ビタミンAは、足りない側と、摂りすぎる側の両方に線がある数少ない栄養素です。

    推奨量は30〜49歳で男性900µgRAE、女性700µgRAE。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性512µgRAE、女性471µgRAEです12。男性で約57%、女性で約67%。

    一方で耐容上限量は2,700µgRAE。鶏レバー100gに14,000µgRAE入っています3。1食で上限の5倍です。

    どれだけ足りていないか

    ビタミンAの推奨量に対し、男性は900µgRAEに対し512、女性は700µgRAEに対し471
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    ビタミンAの推奨量(µgRAE/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 850 650
    推奨量 30〜49歳 900 700
    推奨量 50〜64歳 900 700
    実際(20歳以上の平均) 512 471
    実際(20〜29歳) 394 354
    耐容上限量(18歳以上) 2,700

    この栄養素は、上下の幅が狭いのが特徴です。推奨量900に対して上限2,700。3倍しかありません。カルシウムが推奨量750に対して上限2,500(3.3倍)、ビタミンDが目安量9.0に対して上限100(11倍)なのと比べると、余裕が小さい側です。

    上限は、どう作られたか

    食事摂取基準の報告書に、計算の過程が書かれています。

    成人では肝臓へのビタミンAの過剰蓄積による肝臓障害を指標にし、最低健康障害発現量を13,500µgRAE/日とした。不確実性因子を5として耐容上限量は2,700µgRAE/日とした2

    13,500を5で割って2,700。この「5」が不確実性因子です。食品添加物の一日摂取許容量が100で割って作られているのと同じ考え方で、割る数が違います。

    報告書は、過剰摂取による健康障害が報告されているのは「サプリメントを大量に摂取した場合や動物の肝臓を大量に摂取した場合である」としています2。

    野菜からは、過剰にならない

    ここが、この栄養素のいちばん重要な区別です。

    報告書は、こう書いています。プロビタミンA(カロテノイド)からビタミンA(レチノイド)への変換は厳密に調節されており、必要に応じて体内でビタミンAに変換される。つまり、カロテノイドを大量に摂取しても過剰症を生じるレベルまでレチノイドに変換されることはない2。

    そのため耐容上限量はレチノイドに対してのみ定められ、プロビタミンA(カロテノイド)は含まれていません2。

    2つの入り方
    主な食品 上限の対象か
    レチノイド レバー、うなぎ、卵、乳製品 対象。2,700µgRAE
    プロビタミンA(β-カロテンなど) にんじん、かぼちゃ、ほうれんそう 対象ではない

    「にんじんを食べすぎるとビタミンAが過剰になる」ということは起きません。変換のほうが調節されているからです。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり、レチノール活性当量3。

    ビタミンAの含有量(µgRAE/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    鶏レバー(生) 14,000 50gで7,000(上限の2.6倍)
    豚レバー(生) 13,000 50gで6,500
    うなぎ かば焼 1,500 1/2尾50gで750
    にんじん(皮つき、生) 720 1/3本50gで360
    ほうれんそう(生) 350 1食70gで245
    プロセスチーズ 250 1切れ20gで50
    西洋かぼちゃ(生) 210 1食80gで168
    鶏卵(全卵、生) 210 1個50gで105

    レバーだけが、2桁違います。鶏レバー50gで7,000µgRAE。耐容上限量2,700の2.6倍です。

    ただし耐容上限量は毎日その量を続けた場合の基準です。たまに食べることを問題にしているのではありません。報告書も「大量に摂取した場合」と書いています。

    妊娠中は、別に読む必要がある

    報告書は、妊婦について別の計算をしています。

    ビタミンA過剰摂取による胎児奇形の報告をもとに、健康障害非発現量を4,500µgRAE/日、不確実性因子を1.5とすると、付加量も含めた耐容上限量は3,000µgRAE/日となるが、成人と同じ2,700µgRAE/日を参考とすることが望ましい2。

    そして推奨量の付加量は、妊娠初期+0、中期+0、後期のみ+80µgRAEです2。

    妊娠中にレバーを避けるよう言われることがあるのは、この計算が背景にあります。β-カロテンの側は対象ではないので、にんじんやかぼちゃは別の話です。

    検査結果の「不足」欄にビタミンAが出たら

    集団としては足りていません。特に20代は推奨量の4〜5割です。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンAの「解毒への関与」として「腸管バリアを維持し、有害物質の侵入を防ぐ」と記しています4。

    ビタミンAが腸の粘膜の維持に関わることは、報告書も「皮膚や粘膜を守り、免疫を支える」として挙げています2。ただし「増やせば有害物質の侵入が減る」と人で確かめられた手順は見当たりません。

    足りない分を埋める理由は、そちらではなく、視覚機能・成長・細胞分化・免疫という基本的な役割のほうにあります。

    今日できること

    緑黄色野菜を1品入れる。にんじん1/3本で360µgRAE、ほうれんそう1食で245µgRAE。足りない分(男性で約390µgRAE)の半分から全部が埋まります。

    そしてこちらは、上限を気にしなくていい側です。β-カロテンの変換は調節されています。

    レバーで埋めようとすると、逆の問題が出ます。「足りないなら、いちばん多く入っているものを」という発想が通用しない、数少ない栄養素です。

    埋めるなら、にんじん・かぼちゃ・青菜の側です。こちらはβ-カロテンとして入り、必要な分だけビタミンAに変換されます。だから、この経路では過剰症が問題になりません。

    気をつける対象は2つだけです。動物のレバーを続けて食べること、そしてビタミンAを含むサプリメントを重ねること。裏を返せば、野菜から埋めるぶんには数えなくて済みます。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンAの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。妊娠中・妊娠の可能性のある方、ビタミンA誘導体を含む薬を使用中の方は、個別の指示が優先されます。

  • マグネシウムを、食品とサプリのどちらから足すか

    マグネシウムを、食品とサプリのどちらから足すか

    マグネシウムの推奨量は30〜49歳で男性380mg、女性290mg。日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性261mg、女性234mgです12。

    男性で約69%、女性で約81%。足りていません。

    そして、この栄養素の耐容上限量には変わった書き方がされています。「通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は、成人の場合350mg/日」。食品からの摂取については、上限を設定していません2。

    どれだけ足りていないか

    マグネシウムの推奨量に対し、男性は380mgに対し261mg、女性は290mgに対し234mg
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    マグネシウムの推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 340 280
    推奨量 30〜49歳 380 290
    推奨量 50〜64歳 370 290
    実際(20歳以上の平均) 261 234
    実際(20〜29歳) 229 193
    耐容上限量 通常の食品以外から350mg/日(食品からは設定なし)

    「食品からは上限なし」という書き方

    ここが、この栄養素の特徴です。食事摂取基準の表の脚注に、こう書かれています。

    通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は、成人の場合350mg/日、小児では5mg/kg体重/日とした。それ以外の通常の食品からの摂取の場合、耐容上限量は設定しない2

    理由は、過剰摂取で最初に起きるのが下痢だからです。サプリメントや医薬品として一度に多く摂ると起きますが、食品として摂るぶんには、そこまで届く前に食べきれません。

    「増やすと不利になる場合がある」という話の、分かりやすい例です。同じ栄養素でも、入ってくる形で上限が変わります。

    足りているかは、血液で分からない

    食事摂取基準の報告書は、はっきり書いています。「マグネシウムの不足や欠乏を招く摂取量を推定することは難しい」2。

    必要量の算定も、血液検査からではなく出納試験(出入りを測る方法)から行われています2。研究の設備で行う方法です。

    血液で線が引けるのは、ビタミンD・亜鉛・鉄・葉酸。カルシウムとマグネシウムは、引けない側です。

    だから見るのは、食べた量のほうになります。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    マグネシウムの含有量(mg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    あおさ(素干し) 3,200 ひとつまみ2gで64mg
    ほしひじき(乾) 640 乾10gで64mg
    カットわかめ(乾) 460 乾2gで9mg
    ごま(いり) 360 大さじ1(9g)で32mg
    アーモンド(乾) 290 10粒15gで44mg
    大豆(国産、乾) 200 —
    糸引き納豆 100 1パック45gで45mg
    乾しいたけ(乾) 100 2枚6gで6mg
    木綿豆腐 57 1/2丁150gで86mg
    玄米ごはん 49 茶碗1杯150gで74mg
    そば(ゆで) 27 1食200gで54mg

    ここに出てくる食品を見て、気づくことがあります。海藻、種実、豆、玄米、そば。食物繊維の供給源と、ほとんど同じ顔ぶれです。

    そして12の栄養素の供給源を並べたときに重なっていた「ナッツ・豆類・海藻」が、ここでも上位に来ます。1つの食品を足すと、複数の栄養素が同時に動きます。

    玄米に替えると、どうなるか

    分かりやすい例を1つ。

    ごはん茶碗1杯(150g)の差
    マグネシウム
    玄米ごはん(100gあたり49mg) 74mg
    精白米ごはん(同7mg) 11mg

    1食で63mgの差です。1日3食なら189mg。足りない分(男性で約119mg、女性で約56mg)を上回ります。

    ただし玄米にはもう一方の話もあります。日本人のカドミウム摂取の7割以上が米・小麦・大豆から来ていて、精米すると外側の層は減ります。どちらを取るかは、この記事だけでは決められません。

    検査結果の「不足」欄にマグネシウムが出たら

    集団としては足りていません。特に20代女性は193mgで、推奨量280mgの69%です。

    RESONA-LABの結果報告書は、マグネシウムの「解毒への関与」として「肝臓酵素の働きを助け、毒素排出を促す」、腸については「腸の蠕動を整え、便通を促進」と記しています4。

    後者には、薬としての裏づけがあります。酸化マグネシウムは、便秘に対する薬として処方されています。ただしそれは医薬品としての用量の話で、食品から摂る量とは桁が違います。

    前者(肝臓酵素)については、「マグネシウムを増やせば処理が速くなる」と人で確かめられた手順は見当たりません。足りない分を埋める理由は、そちらではなく、300以上の酵素反応に関わるという基本的な役割のほうにあります。

    今日できること

    ナッツ・豆・海藻・玄米のどれかを、1日1回入れる。

    アーモンド10粒で44mg、納豆1パックで45mg、玄米ごはん1杯で74mg。1品で足りない分の半分から全部が埋まります。

    そして出す側の順番で言えば、これは「上流の材料」にあたります。出口が動いているかを先に見る、という順番は変わりません。

    今日決められるのは、食品から埋めるかサプリメントから埋めるかです。ここだけ、上限の扱いが違います。

    食品由来のマグネシウムに耐容上限量は設定されていません。一方でサプリメントなど通常の食品以外からの摂取には、成人で350mg/日という上限が置かれています。ナッツ・海藻・豆類を1品足すのと、錠剤を足すのとでは、確かめるべきことが変わります。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)マグネシウムの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の機能が低下している方では、マグネシウムが排泄されにくくなります。酸化マグネシウム製剤を含む薬を使用中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • ビタミンDを、食べる以外からも足す

    ビタミンDを、食べる以外からも足す

    ビタミンDの目安量は18歳以上で9.0µg/日、日本人の摂取量は20歳以上の平均で男性6.9µg、女性6.2µgです12。

    男性で77%、女性で69%。足りていません。

    そしてこの栄養素には、他にない事情があります。食べる以外の入口があります。食事摂取基準の表そのものに、こう注記されています。

    日照により皮膚でビタミンDが産生されることを踏まえ、フレイル予防を図る者はもとより、全年齢区分を通じて、日常生活において可能な範囲内での適度な日光浴を心掛けるとともに、ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である2

    どれだけ足りていないか

    ビタミンDの目安量9.0µgに対し、20歳以上の摂取量は男性6.9µg、女性6.2µg、20代はさらに低い
    目安量と、実際の摂取量の平均値12。
    ビタミンDの目安量(µg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    目安量(18歳以上) 9.0 9.0
    実際(20歳以上の平均) 6.9 6.2
    実際(20〜29歳) 4.7 4.3
    実際(70〜79歳) 8.1 7.8
    耐容上限量(18歳以上) 100

    年齢が上がるほど、摂取量も上がっています。20代で4.7µgだったものが、70代では8.1µg。魚を食べる量の差です。

    なお目安量は2020年版の8.5µg/日から9.0µg/日に引き上げられました2。基準のほうが上がったぶん、差は広がっています。

    この栄養素は、血液で確かめられる

    栄養素には、血液の数値で足りているかが分かるものと、分からないものがあります。

    ビタミンDは分かる側です。血中の25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)濃度で評価され、学会の判定指針があります。カルシウムのように骨から補われて血中の値が動かない、という構造にはなっていません。

    つまり、気になるなら測れます。この記事の数字は集団の平均で、自分がどこにいるかは別に確かめられる、ということです。

    入口は、魚に集中している

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    ビタミンDの含有量(µg/100g)
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    しらす干し(半乾燥品) 61.0 大さじ1(5g)で3.1µg
    まいわし 丸干し 50.0 1尾30gで15.0µg
    べにざけ(生) 33.0 1切れ80gで26.4µg
    まいわし(生) 32.0 1尾60gで19.2µg
    うなぎ かば焼 19.0 1/2尾50gで9.5µg
    乾しいたけ(乾) 17.0 2枚6gで1.0µg
    さんま(皮つき、生) 16.0 1尾100gで16.0µg
    きくらげ(乾) 85.0 乾2gで1.7µg
    鶏卵(全卵、生) 3.8 1個50gで1.9µg

    魚の切り身1切れで、1日分を超えます。べにざけ80gで26.4µg、目安量9.0µgの約3倍です。

    一方、きのこは含有量が高くても、食べる量が少ないので届きません。乾しいたけ100gあたり17.0µgでも、2枚では1.0µgです。

    この栄養素は、食品の選び方で桁が変わります。魚を食べない週は、ほぼ入ってきません。

    日光の扱い

    食事摂取基準は、目安量の表に直接こう注記しています。ビタミンDの摂取については、日照時間を考慮に入れることが重要である2。

    他の栄養素の表に、こういう注記はありません。食べた量だけでは決まらない、と基準そのものが書いているのは、この栄養素だけです。

    ここで、もう1つの記事とつながります。日焼け止めについては、紫外線が皮膚がんと日焼けを起こすことが確立していて、FDAも「使用を控えるべきことを示すものではない」と書いています。

    2つは矛盾しません。基準が書いているのは「可能な範囲内での適度な日光浴」で、日焼け止めをやめることではありません。

    上限は、サプリメントでのみ届く

    耐容上限量は18歳以上で100µg/日です2。

    食事から届くかを計算すると、べにざけなら1日300g。毎日は現実的ではありません。

    届くのはサプリメントです。そして、この栄養素は脂溶性で、体に蓄えられます。同じ脂溶性のビタミンAでも、過剰摂取による健康障害が報告されているのはサプリメントを大量に摂った場合と動物の肝臓を大量に摂った場合とされています。

    足すかどうかの前に、足りているかどうか。この栄養素は血液で確かめられるので、順番を守りやすいほうです。

    検査結果の「不足」欄にビタミンDが出たら

    集団としては足りていません。特に20代です。個人の結果は、血中25(OH)Dで確かめられます。

    RESONA-LABの結果報告書は、ビタミンDの「解毒への関与」として「免疫細胞を活性化し、炎症コントロールを支援」と記しています4。

    免疫との関係については研究が続いている領域です。ただし「免疫力」という一つの数値は医療の中に存在しません。足りない分を埋める理由は、骨とカルシウムの吸収という、もっとはっきりした側にあります。

    今日できること

    この1週間で、魚を何回食べたかを数える。

    0回か1回なら、この栄養素はほぼ入ってきていません。切り身1切れで1日分を超えるので、週に2回で目安量に届く計算になります。

    そしてカルシウムも日本人は推奨量の3分の2程度しか摂れていません。この2つは、一緒に見る組み合わせです。片方だけ増やしても、吸収の側が足りなければ働きません。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ビタミン(脂溶性ビタミン)ビタミンDの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316466.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の疾患で治療中の方、カルシウム代謝に関わる薬やビタミンD製剤を使用中の方は、個別の指示が優先されます。

  • カルシウムを、どう埋めれば届くか

    カルシウムを、どう埋めれば届くか

    日本人のカルシウム摂取量は、20歳以上の平均で男性490mg、女性476mgです1。

    推奨量は30〜49歳で男性750mg、女性650mg2。男性で約65%、女性で約73%にとどまっています。

    そして血液検査では足りているか分かりません。骨から補われるので、血中の値は動かないためです。だから見るのは、食べた量のほうになります。

    どれだけ足りていないか

    令和5年の国民健康・栄養調査と、食事摂取基準(2025年版)を並べます。

    カルシウムの推奨量と実際の摂取量。男性は750mgに対し490mg、女性は650mgに対し476mg
    30〜49歳の推奨量と、20歳以上の摂取量の平均値12。
    カルシウムの推奨量(mg/日)と、実際の摂取量
    男性 女性
    推奨量 18〜29歳 800 650
    推奨量 30〜49歳 750 650
    推奨量 50〜64歳 750 650
    実際の摂取量(20歳以上の平均) 490 476
    耐容上限量(18歳以上) 2,500

    20〜29歳ではさらに低く、男性454mg、女性386mgです1。

    これは、この媒体で扱ってきた栄養素の中でも大きい差です。ビタミンEのように目安量を上回っているものもあれば、ここのように3分の1以上足りないものもあります。

    血液で確かめられない理由

    健康診断の血液検査にカルシウムの項目があることがあります。ただしその数値は、足りているかを表していません。

    血中のカルシウム濃度は、狭い範囲に厳しく保たれています。食事から足りなければ、骨から出して血中の濃度を維持します。だから足りていない人でも、血液の値は正常範囲に入ります。

    食事摂取基準も、カルシウムの必要量を血液検査からではなく、体内蓄積量・尿中排泄量・経皮的損失量を積み上げる方法(要因加算法)で算出しています2。

    血液で線が引ける栄養素と、引けない栄養素があります。カルシウムは後者です。

    骨の状態が気になるなら、見るのは骨密度のほうです。血中のカルシウム値ではなく、骨そのものを測る検査で数値が出ます。

    どの食品に、どれだけ入っているか

    日本食品標準成分表(八訂)増補版の値です。可食部100gあたり3。

    カルシウムの含有量(mg/100g)と、1回分のめやす
    食品 100gあたり 1回分のめやす
    ほしひじき(乾、ステンレス釜) 1,000 乾10gで100mg
    プロセスチーズ 630 1切れ20gで126mg
    しらす干し(微乾燥品) 280 大さじ1(5g)で14mg
    アーモンド(乾) 250 10粒15gで38mg
    こまつな(葉、生) 170 1食70gで119mg
    ヨーグルト(全脂無糖) 120 100gで120mg
    普通牛乳 110 コップ1杯200mlで約220mg
    木綿豆腐 93 1/2丁150gで140mg
    糸引き納豆 90 1パック45gで41mg

    100gあたりの数字と、実際に摂れる量は別です。ひじきは含有量が最も高いのに、乾10gでは100mgにしかなりません。牛乳は含有量では下のほうですが、200ml飲めば1回で220mg入ります。

    1つ補足があります。木綿豆腐の値は、凝固剤によって変わります。硫酸カルシウムを使ったものは150mg、塩化マグネシウム(にがり)を使ったものは40mgです3。同じ「木綿豆腐」でも4倍近く違います。

    差を埋めるとしたら

    足りない分は、男性で約260mg、女性で約174mgでした。

    1品足したときに入る量
    足すもの 入る量
    牛乳 コップ1杯(200ml) 約220mg
    ヨーグルト 1カップ(100g) 120mg
    プロセスチーズ 1切れ(20g) 126mg
    木綿豆腐 1/2丁(150g) 140mg
    こまつなのおひたし(70g) 119mg

    1日1品で、ほぼ埋まる幅です。この栄養素については、差が大きいわりに、埋め方は単純です。

    上限は、食事では届かない

    耐容上限量は18歳以上で2,500mg/日です2。

    実際の摂取量が490mgですから、食事から5倍にしないと届きません。現実的ではありません。

    届く可能性があるのは、サプリメントを使ったときです。足すかどうかの前に、足りているかどうかという順番は、ここでも同じです。そしてこの栄養素については、足りていないことが調査ではっきりしています。

    妊娠中・授乳中の付加量は、ゼロ

    意外に知られていない点です。食事摂取基準は、妊婦・授乳婦のカルシウムの付加量を+0としています2。

    妊娠中は腸からの吸収率が上がるため、付加量を設定しない、という考え方です。ただし、もともとの推奨量を満たしていることが前提です。実際の摂取量は推奨量を下回っています。

    検査結果の「不足」欄にカルシウムが出たら

    この記事の数字がそのまま答えになります。日本人の平均は推奨量の65〜73%です。個人の結果を待たなくても、集団として足りていません。

    RESONA-LABの結果報告書は、カルシウムの「解毒への関与」として「重金属の吸収を抑制」と記しています4。

    この記述の裏づけになる、人での試験は確認できませんでした。「カルシウムを増やせば重金属の吸収が減る」と言える手順は、いまのところ見当たりません。

    足りていない分を埋める理由は、そちらではなく骨のほうにあります。調査で3割以上足りていないことが分かっている、というだけで十分な理由です。

    そして蓄積した金属については、入口を閉じるほうが確実です。

    今日できること

    この1週間で、乳製品・小魚・大豆製品・青菜を何回食べたかを数える。

    思い出すのではなく、数える作業です。0回に近いなら、差は200mg以上あります。1日1品で埋まります。

    そしてビタミンDは、カルシウムの吸収を助ける栄養素で、こちらも日本人は目安量に届いていません。2つは別々の話ではありません。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」表3・表4 栄養素等摂取量(1歳以上、男女・年齢階級別) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001338334.pdf
    2. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 ミネラル(多量ミネラル)カルシウムの食事摂取基準 https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf
    3. 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補版」本表 https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html 1回分のめやすは、成分表の値から計算したものです。
    4. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品・サプリメントの効果を示すものでも、摂取を勧めるものでもありません。腎臓の疾患で治療中の方、カルシウム代謝に関わる薬を服用中の方、食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。

  • 「無添加」より確かな、表示の読み方

    「無添加」より確かな、表示の読み方

    原材料名の欄に、「/」(スラッシュ)が入っていることがあります。

    その右側が、食品添加物です。左側が原材料。「/」の代わりに改行で区切られていることも、別の欄になっていることもあります1。

    そして並び順にも意味があります。どちらも、重量の多い順です。

    「無添加」に、ルールができた

    2022年3月30日、消費者庁が「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定しました。2年の経過措置を経て、2024年4月から本格的に適用されています2。

    ガイドラインは、注意が必要な不使用表示を10の類型に分けています2。

    10の類型2
    内容
    類型1 単なる「無添加」の表示
    類型2 食品表示基準に規定されていない用語を使用した表示
    類型3 食品添加物の使用が法令で認められていない食品への表示
    類型4 同一機能・類似機能を持つ食品添加物を使用した食品への表示
    類型5 同一機能・類似機能を持つ原材料を使用した食品への表示
    類型6 健康、安全と関連付ける表示
    類型7 健康、安全以外と関連付ける表示
    類型8 食品添加物の使用が予期されていない食品への表示
    類型9 加工助剤、キャリーオーバーとして使用されている(又は使用されていないことが確認できない)食品への表示
    類型10 過度に強調された表示

    「人工」も「化学」も、制度の用語ではなかった

    類型2の説明が、この記事でいちばん驚く部分かもしれません。

    ガイドラインは、こう書いています2。

    用語についての記述
    用語 記述
    人工・合成 食品表示基準における人工及び合成の用語は、令和2年7月に削除されている
    化学調味料 かつてJAS規格において使用されていたが、平成元年には削除されており、食品表示基準において使用されたことはない
    天然 食品添加物の表示において「天然」又はこれに類する表現の使用を認めていない

    前提として、食品衛生法において、食品添加物には化学的合成品も天然物も含まれており、いずれも使用が認められています。食品表示基準は、化学的合成品と天然物に差を設けず、原則としてすべて表示することにしています2。

    「人工」「合成」「化学」「天然」という区別は、日本の食品表示の制度には存在していません。それでも流通していたのが、この4語でした。

    「無添加だから体にいい」は書けない

    類型6は、はっきりしています。

    食品添加物は、安全性について評価を受け、人の健康を損なうおそれのない場合に限って国において使用を認めていることから、事業者が独自に健康及び安全について科学的な検証を行い、それらの用語と関連付けることは困難であり、実際のものより優良又は有利であると誤認させるおそれがある2

    例として挙げられているのは、「体に良いことの理由として無添加あるいは不使用を表示」「安全であることの理由として無添加あるいは不使用を表示」の2つです。

    これは「体にいい」と書かれているとき、その根拠がどこまで確かめられているかという話と、同じ場所にあります。

    言われてみれば、という類型

    残りの類型にも、実例がついています。

    ガイドラインが挙げている例2
    類型 例 なぜ問題か
    3 清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」 清涼飲料水へのソルビン酸の使用は、そもそも使用基準違反
    4 日持ち向上目的で保存料以外の添加物を使いながら「保存料不使用」 同じ機能の別の添加物を使っている
    5 アミノ酸を含有する抽出物を使いながら、調味料を使っていない旨を表示 同じ機能の原材料で代替している
    8 ミネラルウォーターに「保存料不使用」「着色料不使用」 同種の製品で一般に使われておらず、消費者が使用を予期していない
    9 原材料の一部に保存料を使いながら、最終製品に「保存料不使用」 原材料の製造・加工の過程まで確認する必要がある

    類型3と8は、そもそも入っていないものを「入っていない」と書く表示です。

    では、何を見るか

    「無添加」が手がかりにならないなら、代わりの手がかりが要ります。それが一括表示です。

    原材料名欄でスラッシュの左が原材料、右が添加物で、それぞれ重量の多い順に並ぶことを示す図
    「/」の左が原材料、右が添加物。どちらも重量の多い順です1。

    消費者庁の資料に、表示例が載っています1。

    砂糖(国内製造)、濃縮果汁(ももを含む)、植物油脂/ゲル化剤(ペクチン)、酸味料、香料、着色料(紅麹)

    「/」の左が原材料、右が添加物。4つ入っていることが、数えれば分かります。

    実際のパッケージでどう見分けるかは、農林水産省の解説が4分でたどっています。


    用途名が併記されるもの

    次の8つの用途については、用途名が物質名と一緒に表示されます1。

    甘味料/着色料/保存料/増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料/酸化防止剤/発色剤/漂白剤/防かび剤・防ばい剤

    上の例の「ゲル化剤(ペクチン)」「着色料(紅麹)」がこの形です。用途と物質名の両方が分かります。

    一括名で書かれるもの

    一方、次の14の用途については、物質名の代わりに一括名で表示できます1。

    イーストフード/ガムベース/かんすい/酵素/光沢剤/香料/酸味料/チューインガム軟化剤/調味料/豆腐用凝固剤/苦味料/乳化剤/水素イオン濃度調整剤/膨張剤

    こちらは中身の物質名が分かりません。複数の添加物の組み合わせで効果を発揮することが多いもの、食品中にも通常存在する成分と同じものが、この扱いになります。

    実例があります。アルミニウムの入口だったミョウバンは、「膨張剤」という一括名の中に入ります。表示から判別することはできません。だから制度の側で、2018年に使用基準が作られました。

    表示されないもの

    3つあります1。

    表示が不要な食品添加物
    理由
    加工助剤 最終的に食品に残っていない
    キャリーオーバー 残っていても量が少なく、効果が発揮されない
    栄養強化の目的で使用されるもの (一部の食品は表示が必要)

    つまり、表示を全部読んでも「入っているものが全部分かる」わけではありません。ガイドラインの類型9が、ここに対応しています。加工助剤やキャリーオーバーがある食品に「不使用」と書けば、誤認させるおそれがある、と。

    数える、という手がかり

    ここまでを踏まえると、表示から確実に分かるのは次のことです。

    一括表示から分かること、分からないこと
    分かる 表示対象の添加物がいくつ入っているか/重量の多い順/用途名併記の8種は物質名まで
    分からない 一括名14種の中身/加工助剤・キャリーオーバー/それぞれの量

    量が分からないのは、実は大きい点です。日本では添加物ごとに一日摂取許容量が設定され、日本人の実際の摂取量も推定されています。許容量に対する割合が最も高かったもので17.2%でした。その数字は、個別の商品の表示からは出てきません。

    だから、できることは「数を減らす」より「加工食品の頻度を記録する」ほうです。ただしそれを変えると、添加物以外(食塩・脂質・食物繊維)も同時に動きます。

    制度が変わった、ということの意味

    「無添加」という言葉は、長いあいだ買い物の手がかりでした。その言葉にルールができたことは、手がかりを1つ失ったようにも見えます。

    ただ、置き換わったものがあります。「/」の右側は、以前からそこにありました。

    そして、この件で起きたのは弁当のフタル酸やパン・菓子のアルミニウムと同じことです。問題が特定され、制度が動きました。

    ガイドラインは、消費者庁が2022年に出したものです。そこに書かれている「人工・合成の用語は2020年7月に削除されている」「化学調味料は食品表示基準で使われたことはない」は、調べれば誰でも確かめられる事実でした。使われ続けていたのは、誰も確かめなかったからです。

    参考文献・参考資料

    1. 消費者庁「食品表示の内容を正しく理解するための“食品添加物表示に関するマメ知識”」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/food_additive/assets/food_labeling_cms204_210408_01.pdf
    2. 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」令和4年3月30日 https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms201_220330_25.pdf

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品の安全性や危険性を示すものでも、購入を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。表示の内容は製品ごとに異なります。

  • ひじきのゆでこぼしで、無機ヒ素は9割減る。鉄・カルシウム・食物繊維は7割以上残る

    ひじきのゆでこぼしで、無機ヒ素は9割減る。鉄・カルシウム・食物繊維は7割以上残る

    乾燥ヒジキをゆでこぼすと、無機ヒ素は9割程度減ります。そして鉄分・カルシウム・食物繊維は7割以上残ります1。

    農林水産省が家庭でできる調理法を調べた結果です。手順も具体的に示されています。30分水に浸す → 戻し水を捨てる → お湯に入れて沸騰後5分ゆでる → 水洗い。

    入口には、閉じられるものと閉じられないものがあります。ここには3つめがありました。減らせる入口です。

    同じ食品に、2つの結論が出た

    2004年7月28日、英国食品規格庁(FSA)がヒジキを食べないように英国民に勧告しました。理由は、FSAの調査で、発がんリスクが指摘されている無機ヒ素が多く含まれるという結果が得られたためです2。

    その2日後の7月30日、厚生労働省がQ&Aを公表します。結論が違いました。

    違いは、量を計算に入れたかどうかです。

    厚生労働省が示した計算2
    数値
    日本人の海藻摂取量 1日14.6g(平成14年度 国民栄養調査)
    そのうちヒジキの割合 約6.1%(生産・輸入・輸出量からの試算)
    ヒジキの推定摂取量 1日 約0.9g
    無機ヒ素のPTWI(WHO 1988年) 15µg/kg体重/週。体重50kgで107µg/日(750µg/週)
    FSAが測った最大濃度 水戻し後のヒジキで22.7mg/kg
    上限に届く量 毎日4.7g(週33g)以上を継続的に

    0.9gと4.7g。約5倍の差があります。

    日本人のヒジキ摂取量は1日約0.9gで、上限に届く4.7gまで約5倍の距離があることを示す図
    実際の摂取量と、上限に届く量。最も濃度の高いヒジキを想定した場合の試算です2。

    厚労省の結論はこうです。「ヒジキを極端に多く摂取するのではなく、バランスのよい食生活を心がければ健康上のリスクが高まることはないと思われます」。あわせて「海藻中に含まれるヒ素によるヒ素中毒の健康被害が起きたとの報告はありません」とも書いています2。

    そして「ヒジキは食物繊維を豊富に含み、必須ミネラルも含んでいます」という一文が続きます2。魚の水銀について、同じ厚労省が「魚介類を全く食べない集団では、高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇する」と書いているのと、同じ形です。

    やめることの代償を、一緒に計算しています。

    ほかの海藻は、別の話

    1つ、混ざりやすい点があります。

    Q&Aは「ヒ素は自然界に存在するため、他の海藻中にも含まれていますが、ヒジキとは異なり、毒性の低い有機ヒ素として存在しているとされています」と書いています2。

    問題になるのは無機ヒ素のほうです。海苔、昆布、わかめが同じ扱いになるわけではありません。

    また、ヒジキ中のヒ素に関する国際的な基準は設定されていません2。基準がないこと自体は、他の物質でも起きています。

    調理で、どれだけ減るか

    ここからが、実際に手が動く部分です。

    農林水産省は2014年度に、家庭でできる調理法ごとの無機ヒ素の減り方を調べました1。

    調理法と、無機ヒ素の減り方1
    方法 手順 減り方
    水戻し 30分水に浸す → 水洗い 5割程度減
    ゆで戻し 水に入れてゆでる。沸騰後5分間ゆでる → 水洗い 8割程度減
    ゆでこぼし 30分水に浸す → 戻し水を捨てる → お湯に入れてゆでる。沸騰後5分間ゆでる → 水洗い 9割程度減

    理由は単純です。無機ヒ素は水に溶け出すため、水洗い・水戻し・ゆでこぼしの工程で減ります1。

    そして、いちばん大事なのがこの一行です。

    ヒジキに含まれる鉄分、カルシウム、食物繊維は、「水戻し」、「ゆで戻し」、「ゆでこぼし」をしても、7割以上残ります1

    減らしたいものが9割減って、残したいものが7割以上残る。こういう結果は、めったに出ません。

    除去食では、減らす対象がそのまま栄養の供給源になっていました。金属制限食でも、制限する対象に鉄・亜鉛・銅が含まれていました。だから期限が要ります。

    ここでは、その衝突が起きていません。方法が分かれているからです。

    入口には、3つ目の扱い方がある

    蓄積の入口を整理すると、これまで2つに分けてきました。

    入口の扱い方
    例
    閉じられる たばこ、缶飲料、装身具
    閉じられない 主食のカドミウム、空気中のマイクロプラスチック
    減らせる ヒジキの無機ヒ素(調理で9割減)、水道水の鉛(流し始めを捨てる)

    3つめは、やめなくていいという点で決定的に違います。食べ続けながら減らせる。

    そして「解毒にいい食べ物」で人の試験があるものは限られていましたが、こちらは入る量を実測で減らす話です。何割減るかが、調理法ごとに出ています。

    今日やること

    乾燥ヒジキを使うとき、戻し水を捨てる。

    それだけで、水戻しの5割減がゆでこぼしの9割減に近づきます。手順が増えるのは、戻し水を捨てて、5分ゆでる、という部分だけです。

    そして、ヒジキをやめる必要はありません。日本人の摂取量は上限に届く量の約5分の1で、厚労省も農水省も「食べるな」とは書いていません。農水省の資料の見出しは「より安全に食べるために」です1。

    資料はこうも書いています。「食品を通じて摂取したヒ素による健康影響は認められておりませんが、ヒジキをより安全に食べるためには……」1。順番がはっきりしています。

    参考文献・参考資料

    1. 農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課「より安全に食べるために 家庭でできるヒジキの調理法」平成27年10月 https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/gyokai/g_kenko/busitu/pdf/hijiki02.pdf 関連ページ:ヒジキに含まれるヒ素の低減に向けた取組
    2. 厚生労働省「ヒジキ中のヒ素に関するQ&A」平成16年7月30日 https://www.mhlw.go.jp/topics/2004/07/tp0730-1.html

    本記事は公的資料の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品の摂取を勧めるものでも、避けるよう勧めるものでもありません。食事制限を受けている方は、個別の指示が優先されます。