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  • どの検査を受ければいいか、迷わないために

    どの検査を受ければいいか、迷わないために

    検査はそれぞれ違う問いに答えています。一つで全部が分かる検査はありません。

    健康について調べていると、いくつもの検査が出てきます。健康診断、遺伝子検査、腸内フローラ検査、アレルギー検査。

    検査はそれぞれ違う問いに答えています。一つで全部が分かる検査はありません。

    知りたいことがはっきりすれば、選ぶものも決まります。逆に、問いを決めずに受けると、結果を受け取ってから「これは何を意味するのか」で止まります。

    検査ごとに答えている問いが違うことを示す図。健康診断は今の異常の兆候、遺伝子は生まれ持った傾向、フローラは腸の構成、アレルギーは特定の免疫反応
    同じ「検査」でも、見ている対象と時間軸が違います。生まれつきのものが対象なのか、いまの状態が対象なのか。全身を見るのか、特定の部位を見るのか。

    健康診断 ── いま、対処が必要な兆候があるか

    健康診断は、症状が出る前の段階で、対処できる病気を拾うための仕組みです。40歳から74歳を対象とする特定健康診査は、高齢者の医療の確保に関する法律で保険者に実施が義務づけられています1。

    ここで重要なのは、測っている項目が決まっていることです。測っていない項目については、何も言えません。

    そして「異常なし」は健康の証明ではありません。基準範囲は、健康な人を集めて測ったときの中央95%が入る範囲として作られています2。健康な人でも20人に1人は外れる設計です。

    この検査が答えている問いの狭さは、別の記事で詳しく整理しました。

    遺伝子検査 ── 生まれ持った傾向。生涯変わらない

    遺伝情報には、他の検査結果にはない特性があります。日本医学会のガイドラインは、次を挙げています3。

    遺伝情報の特性(日本医学会ガイドライン)3
    特性 意味すること
    生涯変化しない 一度調べれば、結果は変わらない
    血縁者間で一部共有されている 自分の結果が、家族の情報にもなる
    あいまい性が内在している 下に説明します

    3つ目の「あいまい性」について、ガイドラインはこう説明しています。結果の意義の判断が変わりうること、予測される発症の有無・時期・症状・重症度に個人差がありうること、医学の進歩とともに有用性が変わりうること3。

    つまり、変わらないのは遺伝情報のほうで、その読み方は変わります。「生涯変わらない結果」と「生涯変わらない意味」は、別のことです。

    そして遺伝子が答えているのは、生まれ持った傾向です。いま何が起きているかは、この検査の対象ではありません。

    腸内フローラ検査 ── 腸内細菌の構成

    便から腸内細菌の構成を調べる検査です。何がどれだけいるかを見ます。

    ただし、ここには前提があります。「健康な腸内細菌叢」の定義が、まだ決着していません。正面から検討した2021年の総説は、定義できるかどうか自体が複雑な問いだと結論しています4。

    構成は測れます。ただし、その構成が良いのか悪いのかを判定する物差しが、まだありません。この状況は別の記事で整理しました。

    アレルギー検査 ── 特定の免疫反応があるか

    血液中の特異的IgE抗体を測るか、皮膚に少量つけて反応を見ます。免疫が関わる反応があるかどうかを、医学的に確認するための検査です。

    注意が要るのは、IgEが陽性であることと、実際に症状が出ることは別だという点です。だから医療の現場では、実際に少量から食べて確かめる食物経口負荷試験まで行います。

    一方、食物に対するIgG抗体を測る検査は、欧州アレルギー・臨床免疫学会のタスクフォースが2008年、食物アレルギーの診断ツールとして推奨しないという立場を示しています5。IgGは、その食品を食べていることを反映する正常な反応でもあるためです。

    並べてみる

    それぞれが答えている問い
    検査 答えている問い 答えていないこと
    健康診断 決められた項目に、対処が必要な兆候があるか 測っていない項目のこと
    遺伝子検査 生まれ持った傾向はどうか いま何が起きているか
    腸内フローラ検査 腸内細菌はどういう構成か その構成が良い状態かどうか
    アレルギー検査 特定の免疫反応があるか 免疫が関わらない不調の原因
    バイオレゾナンス検査
    (RESONA-LAB)
    4つの欄がある。食品不耐性(消化難)、体内蓄積、解毒機能、不足ビタミン・ミネラル6 疾病の診断。報告書自身が「本検査は疾病の診断や治療を目的とするものではなく、健康管理の参考情報を提供するもの」と記しています6

    並べると、ひとつの検査で全部が分かるものはないことが見えてきます。時間軸も違います。遺伝子は生まれつき、健康診断はいま、フローラは日々変わるもの。

    採るものと、待つ時間も違う

    答えている問いのほかに、実務的な違いもあります。

    検体と、結果が出るまで
    検査 採るもの 結果まで
    健康診断 血液、尿。採血を伴う 数日〜2週間程度
    遺伝子検査 唾液、口腔粘膜 数週間
    腸内フローラ検査 便 数週間
    アレルギー検査 血液、または皮膚(パッチテスト・プリックテスト) 血液は数日、パッチテストは判定に7日程度
    バイオレゾナンス検査 毛髪と口腔粘膜。採血を伴いません 返送から約1週間6

    採血の有無は、受けやすさに直結します。ただし採るものが違えば、答えられる問いも違います。血液でしか分からないことは、血液でしか分かりません。

    たとえばビタミンD・亜鉛・鉄・葉酸は血液の数値で線が引けますが、カルシウムとマグネシウムは血液では分かりません。骨や細胞内から補われて、血中の値が動かないためです。これは検査の優劣ではなく、栄養素の側の性質です。

    知りたいことから決める

    だから、順番は逆になります。検査を選んでから何が分かるかを知るのではなく、知りたいことを決めてから、それに答える検査を選ぶ。

    知りたいことと、それに答えるもの
    知りたいこと 見るもの
    いま、治療が必要な病気があるか 健康診断、医療機関の検査
    家系に多い病気の傾向があるか 遺伝子検査(遺伝カウンセリングを伴うもの)
    この食品で症状が出るのはなぜか アレルギー検査、経口負荷試験
    疲れの原因が鉄かどうか ヘモグロビンとフェリチン

    「なんとなく体調が悪い」のままだと、どの検査を受けても結果の読み方が決まりません。問いを具体的にするところから始めるほうが、結局は早く進みます。

    そして、検査で説明がつかないことは珍しくありません。そのときに次の検査を足すのか、記録して確かめるのかは、また別の判断になります。

    参考文献・参考資料

    1. 高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)第18条・第20条 e-Gov法令検索
    2. 日本臨床検査標準協議会 基準範囲共用化委員会「日本における主要な臨床検査項目の共用基準範囲 ―解説と利用の手引き―」2022年10月版 https://www.jccls.org/wp-content/uploads/2022/10/kijyunhani20221031.pdf
    3. 日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」2022年3月改定 2. 遺伝学的検査・診断を実施する際に考慮すべき遺伝情報の特性 https://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis_2022.pdf
    4. Shanahan F, Ghosh TS, O’Toole PW. The Healthy Microbiome—What Is the Definition of a Healthy Gut Microbiome? Gastroenterology. 2021;160(2):483-494. doi:10.1053/j.gastro.2020.09.057 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33253682/
    5. Stapel SO, Asero R, Ballmer-Weber BK, et al. Testing for IgG4 against foods is not recommended as a diagnostic tool: EAACI Task Force Report. Allergy. 2008;63(7):793-796. doi:10.1111/j.1398-9995.2008.01705.x https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18489614/
    6. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans

    本記事は各検査の位置づけの整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査の受検を勧めるものでも、否定するものでもありません。遺伝学的検査は、遺伝カウンセリングを含む体制のもとで受けることが推奨されています。

  • 「代謝が落ちた」と感じたとき、何を確かめるか

    「代謝が落ちた」と感じたとき、何を確かめるか

    二重標識水法で実際に測ったデータでは、20歳から60歳のあいだ、代謝は落ちていませんでした。体組成で調整した総エネルギー消費量は、この40年間ほぼ一定です。

    下がり始めるのは60歳以降でした。「30代から代謝が落ちる」という説明とは、正面からぶつかります。

    では、体重が増えたことや、疲れやすくなったことは何だったのか。「落ちた」と感じるものの正体と、代わりに何を確かめられるのかを順にたどります。

    年齢で一直線に落ちる、とは言えない

    代謝は年齢とともに下がり続ける。長くそう考えられてきました。

    2021年、生後8日から95歳までのデータを集めた解析が報告されました。結果は、その形をしていませんでした2。

    除脂肪量で調整したエネルギー消費量は、20歳から60歳まで安定していた
    脂肪を除いた体重(除脂肪量)あたりで比べたものです。1歳ごろに成人の約50%高い水準まで上がり、20歳ごろに成人の値へ下がる。そこから60歳までは安定し、低下が始まるのはそのあとでした。妊娠中も例外ではありませんでした2。

    成人期のあいだ、下がっていませんでした。下がり始めるのは60歳を過ぎてからです。

    日本の『食事摂取基準(2025年版)』にも、近い数字が載っています。同じ測定法を使った世界139の研究では、20〜70歳の範囲は、ほぼ全てが体重1kgあたり30〜40 kcal/日に収まっていました1。年齢が上がるほど下がる、という並びにはなっていません。

    では、なぜ「落ちた」と感じるのか

    感覚は外れていません。体重あたりで見ると、実際に少しずつ下がります。

    基礎代謝基準値(kcal/kg 体重/日)。日本人の実測データから求められたもの1
    年齢 男性 女性
    18〜29歳 23.7 22.1
    30〜49歳 22.5 21.9
    50〜64歳 21.8 20.7
    65〜74歳 21.6 20.7
    75歳以上 21.5 20.7

    ただし、18〜29歳と50〜64歳の差は男性で約8%です。体重60kgなら、1日あたり110kcalほど。おにぎり半分くらいの差で、体型が大きく変わることの説明にはなりません。

    そして、この8%の原因も年齢ではありません。この表は体重あたりの数字で、さきほどの解析は脂肪を除いた体重あたりでした。同じ体重でも脂肪の割合が増えれば、体重あたりの数字は下がります。

    つまり、下がって見える分のかなりは、体の組成が変わったことで説明されます。年齢は変えられませんが、こちらは変えられます。

    体組成計の「基礎代謝」は、測った値ではありません

    体組成計や健康アプリが基礎代謝量を表示します。あれは実測値ではなく、身長・体重・年齢・性別などから計算した推定値です。

    しかも計算式は一つではありません。食事摂取基準は主なものとして4つの式を挙げています1。式が違えば、同じ人でも出てくる値が変わります。

    去年より数字が下がっていても、体重や体脂肪率の入力が変わっただけのことがあります。1回の値ではなく、動き方で見るという考え方は、ここでも同じです。

    「食べていないのに太る」と感じるとき

    代謝の話とセットで出てくるのが、この訴えです。ここには、繰り返し確かめられた答えがあります。

    食事の記録は、実際より少なく出ます。食事調査で得られた摂取量と、実測した消費量を突き合わせた100の研究では、ほとんどで申告のほうが下回っていました。そしてBMIが大きいほど、その差が大きくなる傾向がありました1。

    嘘の申告ではありません。記録が難しいだけです。

    習慣的なエネルギー摂取量を±5%以内で知るために必要な調査日数は52〜69日
    日本人成人を対象とした研究の報告です。摂取量が2,000 kcal/日の人なら、1,900〜2,100 kcal/日の範囲に観察値の95%信頼区間を収めるために、これだけの日数が必要でした1。

    報告書は、摂取量と消費量は測り方がまったく違うため両者を比較する意味は乏しいとも書いています1。アプリの摂取カロリーから時計の消費カロリーを引いても、そこから分かることは限られます。

    かわりに挙げられているのが、体重とBMIの変化を見ることです1。摂取と消費の差は、最後にそこへ現れます。記録の誤差を積み上げるより、結果の側を測るほうが確かだ、という整理です。記録から自分について何がどこまで分かるのかは、別の記事で整理しました。

    医療で確かめられるのは、甲状腺

    「代謝」という総合点を測る検査はありません。ただし、甲状腺の働きは血液検査で確かめられます。

    甲状腺ホルモンの分泌が低下する病態を、甲状腺機能低下症といいます。日本甲状腺学会の診断ガイドラインは、その臨床所見として無気力、易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、体重増加、動作緩慢、嗜眠、記憶力低下、便秘、嗄声を挙げています。検査所見は遊離T4(FT4)が低値で、TSHが高値であることです3。

    症状のどれかが続いていて心当たりがあるなら、確かめる価値があります。

    ただし、この一覧を読んで「当てはまる」と感じただけでは、判断できません。こうした症状は、そもそも多くの人に当てはまります。決めるのは症状ではなく、検査の値のほうです。

    自分で確認できること

    先に1つ。「代謝の低下による体重増加」という一文は、いろいろな説明に登場します。検査結果の症状一覧にも、広告にも入っています。

    ただ、この記事の冒頭で見たとおり、二重標識水法で実測すると、20歳から60歳のあいだ代謝は落ちていませんでした。実測データと正面からぶつかる説明です。

    そして「代謝」という言葉自体が、エネルギー消費と、物質の作り変えという別の2つを指しています。肝臓が異物を処理して外へ出す反応も「代謝」と呼ばれますが、そちらは体重とは別の話です。同じ言葉で呼ばれているだけで、測っているものが違います。

    「代謝が落ちた」と感じたときに、見られるもの
    状況
    年齢 脂肪を除いた体重あたりで見ると、20〜60歳は安定していた
    体の組成(筋肉など) 体重あたりの数字が下がる主な理由。食事と運動で動く
    活動量 消費量のうち、日ごとに最も変わる部分
    食事 記録は実際より少なく出る。体重の変化のほうが確か
    甲状腺 TSH・FT4 で確かめられる
    体組成計の「基礎代謝」 推定値。式によって変わる

    年齢は変えられませんが、上の4つは記録できます。そして「代謝を上げる」という言い方で語られるものには、「免疫力を上げる」と同じ問題があります。上がったかどうかを何で判定するのかが決まっていないため、効くとも効かないとも言えません。

    体重が意図せず減っている、または短期間に大きく増えた。強い倦怠感が続いている。極端に寒がりになった、または暑がりになった。脈が速い、または遅い。これらは生活の工夫で動く範囲にありません。そして、上に書いたTSHとFT4で確かめられる側でもあります。

    年齢のせいにする前に

    「代謝が落ちたから」は、便利な説明です。原因がはっきりして、しかも自分では変えられないことになるので、そこで話が終わります。

    ただ、測られた結果はそこまで単純ではありませんでした。20歳から60歳まで、脂肪を除いた体重あたりで見た消費量は安定していた。変わったのは、体の組成と、活動量と、食事のほうです。

    40代・50代であれば、更年期のほうも同じ症状で重なります。どちらも、確かめる順番は決まっています。そして甲状腺は、血液検査で実際に確かめられます。検査が答えている問いはいつも狭いとしても、答えられる問いには答えが出ます。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 エネルギー(pp.53、63-66) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf
    2. Pontzer H, Yamada Y, Sagayama H, et al. Daily energy expenditure through the human life course. Science. 2021;373(6556):808-812. doi:10.1126/science.abe5017 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34385400/
    3. 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン2024」甲状腺機能低下症の診断ガイドライン(2024年11月21日改定) https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html

    本記事は公的な基準と研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・機器の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。甲状腺疾患の診断と治療は医師の判断によります。

  • 「腸活」で本当にやるべきことを、4つに分ける

    「腸活」で本当にやるべきことを、4つに分ける

    「腸活」は4つの別々の目的が混ざった言葉です。便通、お腹の張り、菌のバランス、肌や免疫。どれも「腸活」と呼ばれますが、確かめられる度合いがまったく違います。

    いちばん確かなのは食物繊維で、日本人は目標量に届いていません。いちばん曖昧なのが「菌のバランス」で、そもそも良い状態の定義が決まっていません。

    この4つを分けると、自分がどれをやろうとしているのかが決まります。

    分けると、今日から手をつけられるものと、まだ誰にも分からないものが、はっきり分かれます。

    4つに分けてみる

    「腸活」で目指されていることと、確かめられる度合い
    目的 いまの状況
    便通をよくする 公的な目標量があり、診断基準もある
    お腹の張りを減らす 測ると、感覚と実際の量が一致しないことがある
    菌のバランスを良くする 「良い状態」の定義が、まだ決着していない
    肌・免疫・全身の健康 確かめられている範囲が限られる

    便通 ── いちばんはっきりしている

    そしてここは、便通が「快適さ」を超える場所でもあります。ニッケルの場合、経口で入った量のうち腸から吸収されるのは1〜10%で、90〜99%は便として出ていきます2。肝臓が胆汁に出したものも、腸を通って便から出ます。4つのうち、出口の役割を持っているのはここだけです。

    4つのうち、数字で目標が置かれているのはここだけです。食物繊維で、30〜64歳の男性22g・女性18g。日本人の実際の摂取量は、その中央値で13.3g/日でした1。

    この目標量は理想の量ではなく、実行可能性を考慮して低く設定されたものです。年齢区分ごとの値も、健康利益から見た望ましい量との差も、そちらに整理しました。

    つまり足りていない幅がはっきりしている、数少ない栄養素だということです。他の3つには、この形の数字がありません。

    便通には、回数だけでなく、いきみ・硬さ・残便感まで見る診断基準があります。回数は6項目のうちの1つにすぎません。

    お腹の張り ── 測ると、感覚とずれる

    張りは、便通とは別の問題です。そして張っている感じと、実際にお腹の中にある量は、あまり一致しないことが繰り返し報告されています。

    姿勢や筋肉の反応、感覚の閾値が関わっています。ガスを減らすことだけを考えると、うまくいきません。

    菌のバランス ── 良い状態の定義が、まだない

    「良い腸内環境」が何を指すのか、まだ決まっていません。

    「健康な腸内細菌叢とは何か」を正面から検討した2021年の総説は、定義できるかどうか自体が難しい問いだと結論しています。判定する物差しが、まだありません。

    そして「善玉菌・悪玉菌」という日本で定着した区分も、学術的には批判されています。同じ菌種でも、株が違えば性質が変わり、共存する菌との関係でも働きが変わります。

    「菌のバランスを整えた」かどうかを確かめる方法が、いまのところありません。効果がないという意味ではなく、判定する基準がないということです。

    肌・免疫・全身 ── 確かめられている範囲は限られる

    腸と全身の関係は、研究が活発な領域です。ただし「腸を整えれば免疫力が上がる」という言い方にすると、確かめようがなくなります。「免疫力」という一つの指標が医療にないためです。

    何を測れば確かめたことになるのかが決まっていない主張は、効くとも効かないとも言えません。

    食物繊維は、サプリメントで置き換えられるのか

    同じ量を置き換えても、同じ利益が得られる保証はない。食事摂取基準にはっきり書かれています1。原文はこうです。

    目標量の算定に用いられた研究の多くは、通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメント等に由来するものではない。したがって、同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメント等で摂取したときに、ここに記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はない。さらに、食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメント等によって摂取すれば、ここに記されたよりも多くの(大きな)健康利益が期待できるとする根拠はない。

    二段構えになっています。置き換えの話が前半、食品から摂れる量を超えて足しても、より大きな利益が期待できる根拠はないというのが後半です。

    今日できること

    4つのうち、今日から動かせるのは食物繊維の量です。中央値13.3gと25gの差は、およそ12g。これは食品の量に置き換えられます。

    ひとつ注意があります。アプリや食事記録で「目標量に届いた」と出ても、それだけでは足りていない可能性があります。

    測定法の変更で食物繊維の成分値が変わった。白米0.3gから1.5g、食パン2.3gから4.2g
    日本食品標準成分表の七訂と八訂で測定法が変わり、同じ食品の成分値が上がりました(精白米 0.3g→1.5g、食パン 2.3g→4.2g、可食部100gあたり)。食品そのものが変わったわけではありません。一方、目標量は七訂相当の測定法で算定されています1。

    報告書は、八訂の成分表で計算する場合は成人では25g/日を目安とするのも一つの方法だとしています1。目標量ではなく25gを見ておけば、この食い違いを気にせずに済みます。

    ただし、一度に大きく増やすと張りや不快感が出ます。一度に一つだけ変えるという原則は、ここでも同じです。増やす量も、期間をかけて分けたほうが確かめやすくなります。

    血便がある、便が黒い、体重が意図せず減っている、急に排便の習慣が変わってそれが続いている、発熱を伴う腹痛がある。これらは食事の工夫で動く範囲にありません。食物繊維を増やしても、菌を足しても変わりません。

    分けると、やることが決まる

    「腸活」をひとまとめにすると、何をどこまで期待していいのかが分からなくなります。

    分けると、こうなります。便通には公的な目標量と診断基準があり、足りていない幅もはっきりしている。張りは、感覚と量がずれることを知っておく。菌のバランスは、まだ判定する物差しがない。全身の健康は、何を測れば確かめたことになるのかが決まっていない。

    そして腸は、肝臓が胆汁に乗せて送り出したものの通り道でもあります。便として出るか、腸に留まるかで、体に残る量が変わります。

    確かめられていないことと、効果がないことは別です。ただ、確かめられる場所から手をつけるほうが、手戻りがありません。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 炭水化物(食物繊維 pp.134-136) https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316464.pdf
    2. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

    本記事は公的な基準と研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。食物繊維の必要量は年齢・性別・状態によって異なります。消化器の疾患で治療中の方、食事制限を受けている方は、内容が個別に決められています。この記事の範囲の外です。

  • 「免疫力を上げたい」を、できることに置き換える

    「免疫力を上げたい」を、できることに置き換える

    「免疫力」という一つの数値は、医療の中に存在しません。健康診断にも、専門の検査にも、その項目はありません。

    つまり「免疫力が上がった」かどうかは、誰にも判定できません。上がったとも、上がらなかったとも言えない。そういう構造の言葉です。

    では医療は何を測っているのか。そして、感染しやすさについて実際に確かめられていることは何なのか。この二つを分けると、できることがはっきりします。

    測っているのは、別々の項目

    免疫は、多くの細胞と分子が役割を分担している仕組みです。そのため医療で調べるときも、目的に応じて別々の項目を見ます。

    免疫は測れます。ただし、一つの点数にはなりません。

    この構造は、他の場面でも出てきます。栄養素も、血液で分かるものと分からないものに分かれます。検査が答えている問いは、いつも思っているより狭い。

    「上げればいい」とも限らない

    もう一つ、「免疫力を上げる」という言い方には前提が入っています。方向が一つしかない、という前提です。

    免疫を抑える薬(免疫抑制薬)が治療に使われるのは、このためです。免疫は、強ければ強いほどよいものとして扱われていません。目指されているのは、必要なときに必要なだけ働くことです。

    「免疫力を上げる」という言葉は、この二方向を一方向に畳んでいます。

    眠る時間は、感染しやすさに効いていた

    総合点はなくても、確かめられていることはあります。そのひとつが睡眠です。

    睡眠時間が短い人は、同じ量のウイルスを鼻から入れられても、かぜを発症しやすくなっていました1。健康な成人164人の睡眠を活動計で7日間測ってから、全員に同じようにウイルスを投与した実験です。

    睡眠時間別のかぜ発症のオッズ比。5時間未満4.50倍、5〜6時間4.24倍、6〜7時間1.66倍
    7時間より長く眠っていた人と比べたときの、かぜを発症するオッズ比。事前の抗体価、年齢、性別、季節などとは独立した関連でした1。

    ただし、この「4.5倍」という数字はそのまま覚えないほうがいいものです。同じデータから推定できる範囲がかなり広く、「1倍を少し超える程度」から「18倍」まで幅があります。数字の幅をどう読むかは、別の記事で整理しました。

    幅は広くても、向きは動きません。全員が同じ量のウイルスを投与されているので、「よく眠る人は人混みを避けているから」といった説明では片づきません。

    ワクチンの効き方にも、差が出ている

    同じ研究グループが、ワクチンでも調べています。

    健康な中年成人125人にB型肝炎ワクチンを標準の3回接種し、活動計で睡眠を測りました。すると、睡眠時間が短い人ほど、2回目以降の抗体反応が低くなっていました。そして最終的に、臨床的に防御されるレベルの抗体に達しない可能性も高くなっていました2。

    ただしこちらは観察研究です。睡眠時間を割り付けたわけではないので、因果までは示していません。関連と因果を分ける話が、ここでも当てはまります。

    興味深いのは、この研究で予測に効いたのが睡眠の「長さ」だけだったことです。睡眠効率も、本人が感じる睡眠の質も、抗体反応を予測しませんでした2。検査上の睡眠指標と、休まった感覚が一致しないのと同じ向きです。

    では、何ができるのか

    ここまでを整理すると、確かめられていることと、そうでないことがはっきり分かれます。

    感染しにくさについて、確かめられていること
    状況
    睡眠を十分にとる ウイルスを投与する実験で、発症のしやすさに差が出ている
    ワクチンを受ける 抗体を作らせる方法として確立している
    手洗い・環境 曝露そのものを減らす
    特定の食品・成分で「免疫力を上げる」 「免疫力」という指標自体がないため、この形では検証できない

    最後の行は、「効かない」という意味ではありません。その言い方では確かめようがない、ということです。「エビデンスがない」と「効果がない」は別のものですが、ここではもう一段手前で、何を測れば確かめたことになるのかが決まっていません。

    表示に「免疫」と書かれていたら

    ついでに、金属の話も同じ形で確かめられます。2016年度の日本のパッチテスト陽性率は、ニッケル24.8%、金23.2%、コバルト7.9%、水銀5.3%、クロム2.3%。上位10項目のうち5つが金属でした3。

    これは「免疫力が低い」ことを示す数字ではありません。特定の物質に対して免疫が反応するようになっている(感作されている)人の割合です。しかも陽性の人のうち、実際に症状が出るのは一部だけだと学会は明記しています。

    免疫は「強い・弱い」の一本の軸ではなく、何に対して、どう反応するかの集まりです。だから項目ごとに検査があって、総合点がない。金属についても、陽性と症状は別の話になります。

    制度の側では、免疫に関する機能を表示している食品があります。ただしそれは、特定の成分について、特定の機能を届け出たものであって、「免疫力が上がる」という一般的な言明ではありません。

    何がどこまで届け出られているかは、確かめられます。機能性表示食品とトクホでは、根拠の強さが違います。その商品を人で試したのか、成分についての過去の研究をまとめたのか。そこまで分解すると、表示の一文の意味が変わります。

    一つの点数がない、ということ

    「免疫力」に一つの数値がないことは、不便に見えます。上がったか下がったかを確かめられないからです。

    同じ構造の言葉は、ほかにもあります。「代謝」にも一つの数値はありません。ただしそちらは、エネルギー消費量という測れるものが実在します。

    ただ、そのぶん目標が数字に置き換わりません。眠る時間を確保する、必要なワクチンを受ける、手を洗う。どれも地味ですが、実験で差が出ているのはこちら側です。

    感染をくり返す、治りが極端に遅い、口内炎や皮膚の感染が続く。こうした状態は、生活の工夫で動かす話ではありません。「免疫力」という総合点はなくても、免疫に関わる病態には実際に調べられる検査項目があります。

    参考文献・参考資料

    1. Prather AA, Janicki-Deverts D, Hall MH, Cohen S. Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. Sleep. 2015;38(9):1353-1359. doi:10.5665/sleep.4968 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26118561/
    2. Prather AA, Hall M, Fury JM, Ross DC, Muldoon MF, Cohen S, Marsland AL. Sleep and antibody response to hepatitis B vaccination. Sleep. 2012;35(8):1063-1069. doi:10.5665/sleep.1990 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22851802/
    3. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

    本記事は研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・サプリメント・製品の効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。ワクチンの要否と種類は医師の判断によります。免疫を抑える薬を使用中の方の感染対策は個別に決まるもので、この記事の範囲には入りません。

  • 「朝起きられない」に、診断基準と検査がある

    「朝起きられない」に、診断基準と検査がある

    朝、どうしても起きられない。昼を過ぎると動けるようになる。夜は眠れない。

    この並びは、しばしば生活習慣の問題として扱われます。

    同じ症状に対して、日本には診断基準と検査があります。

    起立性調節障害(OD)と呼ばれる病態です。

    診療ガイドラインは、これを本質的には身体疾患に分類されると記しています1。

    中学生の、およそ1割

    珍しい病態ではありません。疫学調査では、一般の中学生の約1割、小児科を受診する中学生の約2割を占めると報告されています1。

    症状は立ちくらみ、動悸、強い倦怠感、頭痛、腹痛と多彩で、慢性化や再燃をくり返す例では、不登校や登校困難につながることもあります。

    11項目のうち、3つ

    診断は、まず症状の確認から始まります。ガイドラインが挙げる身体症状は11項目です1。

    起立性調節障害の身体症状11項目のうち3項目以上で診断アルゴリズムへ進む
    立ちくらみ/失神/入浴時や嫌なことを見聞きしたときの気分不良/動悸・息切れ/朝起き不良/顔色不良/食欲不振/臍疝痛(へそのあたりの痛み)/倦怠感/頭痛/乗り物酔い。この11項目のうち3項目以上、または2項目でも強く疑われる場合に、診断アルゴリズムへ進みます1。

    ここで注目したいのは、「朝起き不良」が11項目のうちの1つでしかないことです。朝起きられないことだけを見ていると、他の10項目が視野に入りません。

    起立したときの動きで、4つに分かれる

    症状が揃ったら、次は検査です。新起立試験と呼ばれます。

    やることは単純で、10分間横になったあと立ち上がり、血圧が戻るまでの時間と、起立後の血圧・心拍数の変化を見ます1。特別な装置がなくても一般の小児科外来で実施できるよう設計されていて、午前中に行うと陽性率が高まるとされています。

    新起立試験で分かれる4つの型
    型 起立したときに起きること
    起立直後性低血圧(INOH) 立った直後に血圧が急に下がり、戻るのが遅い
    体位性頻脈症候群(POTS) 血圧は下がらないが、心拍数が著しく上がる
    遷延性起立性低血圧(DeOH) 立った直後は正常。3分以上経ってから血圧が下がる
    血管迷走神経性失神(VVS) 反射的に血管が広がり、心拍が下がる

    POTSについては、ガイドラインが特徴を書き分けています。立ちくらみよりも、頭痛や強い倦怠感が目立つとされています1。立ちくらみがなくても、POTSは外れません。

    先に、別の原因を外す

    同じ症状を起こす別の病態があります。ガイドラインは、除外すべきものを具体的に挙げています1。

    鉄欠乏性貧血が並んでいることは、覚えておく価値があります。倦怠感の原因として鉄を考える順番は、ここでも同じです。

    そして改訂第3版で新たに明記された項目があります。一部の薬剤が症状を誘発・増悪させることがあるという点です。ADHD治療薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、カルシウム拮抗薬、抗コリン薬、三環系抗うつ薬などが挙げられています1。

    自分で薬をやめる話ではありません。飲んでいるものがあるなら、それを医師に伝える理由になります。飲んでいるものを全部伝えるのは、ここでも効いてきます。

    つまり、ODと決まる前に確かめられるものが、いくつもあります。血液検査で分かるものも含まれています。

    「体の問題」と「心の問題」を、分けない

    ODは身体疾患です。同時に、心理社会的な要因も症状に関わります。どちらか一方ではありません。

    ガイドラインは、ODを身体疾患に分類したうえで、睡眠リズムの乱れ、運動不足、心理的ストレス、学校や家庭の環境要因が、発症や症状の増悪に関与することも記しています1。

    思春期は内分泌系・神経系・循環器系が急激に変化する時期で、そこに心理社会的なストレスが加わると、循環を調節する仕組みが追いつかなくなる。ガイドラインはそう説明しています1。

    身体か心か、という二択で考えないこと。これはODに限った話ではありませんが、この病態ではとくにはっきりしています。複数の要素を協調させて診る、という考え方が、ガイドラインの側から要請されている珍しい例です。

    体を動かさない時間が、病態の一部になる

    第3版で扱いが変わったものが、もう一つあります。デコンディショニングです。

    長期の臥床など、体を動かさない時間が続くことで循環の調節能力が落ちる現象を指します。海外のガイドラインでは「除外すべきもの」に挙げられていますが、日本の第3版では除外ではなく、ODの病態生理に深く関わるものとして記載されています1。

    症状があるから動けない、動けないから症状が続く。この循環そのものが、病気の一部として扱われています。

    基準を満たさなかったときも、終わりではない

    新起立試験を受けても、診断基準を満たさない場合があります。

    第3版は、この場合の対応も書いています。検査時にたまたま循環の異常が再現されないこともあれば、傾向はあるが基準に届かない例、新起立試験では評価が難しい型もあります。そのうえで、明らかな器質的異常がなくても、日常生活に支障をきたす起立不耐症状が続くなら、ODとしての包括的な対応を検討するとしています1。

    確定診断にこだわるよりも、症状の経過や生活習慣、心理社会的要因を含めた総合的評価を行い、その子どもに必要な支援を判断する姿勢の重要性が強調されている

    診断名がつかないことと、支援が要らないことは別だ、という立場です。

    受診するとき、何を持っていくか

    相談先は小児科です。新起立試験は一般の小児科外来で実施できるよう設計されています。

    受診のときに用意しておくと役に立つもの
    内容
    症状 11項目のうち当てはまるもの。いつから、どの時間帯に
    時間帯の記録 起床時刻、動けるようになる時刻、就寝時刻を1〜2週間分
    飲んでいるもの 処方薬・市販薬・サプリメントすべて
    生活の変化 いつから、何が変わったか

    検査は午前中のほうが陽性率が高いとされているので、受診の時間帯も相談してみてください。

    名前がつくことの意味

    名前がつくことの効き目は、その反対側を見ると分かります。

    名前のつかない症状の一覧は、9割の人に当てはまります。「朝がつらい」「立ちくらみ」「疲れやすい」だけなら、どの説明も同じくらい当てはまってしまう。

    この記事で見てきた診断基準は、当てはまりを数えるのではなく、起立時に血圧と心拍がどう動いたかを測っています。検査で数値を出し、他の疾患を除外して、初めて名前がつく。だから名前がついたあとには、やることが決まります。

    この病態について書いておきたいのは、診断がつくかどうかより前の部分です。

    朝起きられないことが「怠け」として扱われるとき、子どもは症状と評価の両方を抱えます。11項目の症状表と、立ち上がったときの血圧と心拍という測れるものがあることは、それ自体が支えになります。

    一方で、名前がついたあとに何をするかは、そこからの話です。ガイドライン自身が、身体・心理・社会を分けずに見ることを求めています。検査が答えている問いは、いつも思っているより狭い。ここでも同じです。

    参考文献・参考資料

    1. 石井和嘉子.「小児起立性調節障害診療ガイドライン改訂第3版」の概説. 日大医学雑誌. 2026;85(2):51-57. doi:10.4264/numa.85.2_51 https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/85/2/85_51/_article/-char/ja ガイドライン本体:起立性調節障害ワーキンググループ「小児起立性調節障害診療ガイドライン」(日本小児心身医学会編『小児心身医学会ガイドライン集』改訂第3版, 南江堂, 2025年) 学会の一般向け解説:日本小児心身医学会

    本記事は診療ガイドラインの整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。診断と治療方針は医師の判断によります。症状の項目に当てはまることは、診断がついたことを意味しません。服用中の薬を自己判断で中止・変更しないでください。起き上がれない状態が続く、失神をくり返す、日常生活に支障が出ている。これらは、記事の内容で判断する範囲にありません。

  • 食品添加物が心配なとき、何を見れば位置が分かるか

    食品添加物が心配なとき、何を見れば位置が分かるか

    日本では、添加物ごとに一日摂取許容量(ADI)が決まっていて、実際に日本人がどれだけ摂っているかも毎年調べられています。その結果は公開されています。

    「避けたほうがいい」かどうかを決める前に、自分が実際にどのあたりにいるかを見られる、ということです。推測で避ける必要はありません。

    ADIは、100で割って作られている

    同じ考え方で測られているものが、ほかにもあります。残留農薬は対ADI比で最大2.954%、カドミウムは耐容量に対して平均35%・95パーセンタイルで67%でした。並べると、距離が違います。

    日本では、添加物の安全性評価を内閣府の食品安全委員会が行います。動物を用いた毒性試験の結果をもとに、一日摂取許容量(ADI)が添加物ごとに設定されます1。

    ADIの作り方は、意外に単純です。

    動物実験で害の出なかった量を安全係数100で割って一日摂取許容量が決まる
    食品安全委員会の説明によれば、毒性試験から導き出される無毒性量を、安全係数100で割ってADIを算出します2。動物と人の違い、人どうしの個人差を見込んだ係数です。

    そのうえで厚生労働省が、薬事・食品衛生審議会で審議し、食品ごとの使用量と使用の基準を設定します1。ADIは目標ではなく、超えないようにする側の線です。

    実際に、どれだけ摂っているか

    基準を決めるだけでは、実際にどれだけ摂っているかは分かりません。そこで、摂取量の調査が継続して行われています。

    方法はマーケットバスケット方式と呼ばれます。スーパー等で200〜300種類の食品を実際に購入し、食品群ごとに混ぜて分析し、それに食品摂取量の調査データを掛け合わせて一日の摂取量を推定します1。表示ではなく、買ってきた食品の実測から積み上げる形です。

    推定された一日摂取量がADIに対して占める割合。最も高いトコフェロールで17.2%、リン化合物6.7%、プロピレングリコール1.1%
    2006〜2008年度の推定。ADIに対する割合が最も高かったのはトコフェロールで17.2%、リン化合物は6.7%(MTDIに対して)、プロピレングリコールは1.1%でした3。

    17.2%という数字の受け取り方には、少し注意がいります。ADI自体が無毒性量を100で割った値なので、ADIの17.2%は、動物実験で害の出なかった量の約580分の1にあたります。

    「複数を同時に摂ったら」はどうなのか

    ここは、当然出てくる問いです。ADIは物質ごとに設定されます。では、いくつも同時に摂ったときはどうなるのか。

    この点も検討されています。食品安全委員会の2006年度の調査報告は、複数の添加物を同時に摂ったときの影響について、実際に問題となる可能性は極めて低く、理論的な可能性の推定にとどまるとしたうえで、こう結論しています2。

    個々の食品添加物の評価を十分に行うことで、食品添加物の複合影響についても実質的な安全性を十分確保することが可能

    理由として挙げられているのは、医薬品との違いです。医薬品は体に作用を及ぼすことを目的としているため相互作用が問題になりますが、添加物はそもそも体に作用させることを目的としておらず、かつ使用基準の範囲内でしか使われないため、複合摂取時の相互作用は現れにくいとされています2。

    ただし、相互作用の実例はあります。清涼飲料水で、アスコルビン酸と安息香酸ナトリウムが反応してベンゼンが生じた例が知られています。現在の摂取レベルでのリスクは非常に低いと評価されていますが、「何も起きない」ではなく「調べたうえで、問題になる水準ではないと判断されている」ということです2。

    「添加物を減らす」が、実際に意味していること

    添加物を減らそうとすると、実際に減るのは加工食品の割合です。そして加工食品の割合が下がると、添加物以外のものも同時に動きます。食塩、脂質、糖、食物繊維。

    体調に変化があったとして、それが添加物によるものなのか、食塩や食物繊維によるものなのかは、この方法では分けられません。一度に一つだけ変えるという原則が、ここでも効いてきます。

    つまり「添加物を避ける」という言い方は、実際には食事全体の構成を変えることを指しています。目的が食事の質なら、そちらを直接見るほうが早く進みます。

    「E621」は、EUの番号である

    検査結果や輸入食品の表示に、E621、E102、E250といった記号が並ぶことがあります。これはEUの食品添加物番号です。

    EU規則1333/2008に基づき、欧州食品安全機関(EFSA)の評価を経て承認された添加物に付されます4。Eは「Europe」です。日本の表示制度には存在しない記号なので、そのままでは意味が取れません。

    最初の数字が、用途を表しています。

    E番号の範囲と用途
    範囲 用途 例
    E100番台 着色料 E102(黄色4号)、E123(赤色2号)、E124(赤色102号)、E127(赤色3号)
    E200番台 保存料・酸化防止剤・発色剤 E220(二酸化硫黄)、E249(亜硝酸カリウム)、E250(亜硝酸ナトリウム)、E251(硝酸ナトリウム)
    E500番台 pH調整剤・固結防止剤 E535(フェロシアン化ナトリウム)
    E600番台 調味料・うま味 E621(グルタミン酸ナトリウム)、E627(グアニル酸ナトリウム)、E640(グリシン)

    日本語の表示に直すと、見え方が変わります。E621は「調味料(アミノ酸等)」、E102は「着色料(黄4)」、E250は「発色剤(亜硝酸Na)」。日本の食品表示で毎日見ている名前です。

    なお、日本で実際に使用基準が動いた例もあります。ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム等)は、小児の上位層で上限を超えていたことが調査で分かり、2018年に菓子・生菓子・パンへ1kgあたり0.1g以下の基準が新設されました。

    つまりE番号が並んでいても、特別な物質が並んでいるわけではありません。普段見ている表示を、別の記号で書いたものです。そして前の節で見たとおり、日本ではこれらの摂取量が毎年推定されていて、一日摂取許容量に対する割合が最も高かったもので17.2%でした。

    検査結果に添加物の名前が出た場合

    まず、これは中毒の診断ではありません。そして、体内の添加物の量を測る一般的な臨床検査は存在しません。鉛や水銀のように、入口を1つに絞れるという構造にもなっていません。

    用途ごとの数字もあります。甘味料7種の対ADI比は0.002〜0.25%でした。

    表示の読み方には、決まった手順があります。原材料名欄の「/」の右側が添加物で、重量の多い順に並んでいます。ただし一括名で書かれるものの中身と、加工助剤・キャリーオーバーは表示されません。

    できるのは、何がどれだけ入っているかを見ることです。加工食品を食べる頻度、飲料の種類、間食の内容。記録すれば分かることであって、検査を追加しなくても手がつけられます。

    そして、結果に添えられた症状の一覧を見て、当てはまると感じたときは、その症状がそもそもどれくらいありふれているかを先に確かめてください。

    調べられていることと、いないこと

    この記事で確かめたのは、次の3つです。

    食品添加物について、調べられていること
    状況
    個別の安全性 物質ごとにADIが設定されている(無毒性量÷100)
    実際の摂取量 継続して推定されている。最も高いものでADIの17.2%
    複合影響 検討され、個別評価で実質的な安全性は確保できるとされている
    体内の量を測る検査 一般の臨床検査には存在しない

    避けるかどうかは、最終的にはその人が決めることです。ただ、「調べられていない」と「調べたうえで問題になる水準ではないとされている」は別のものです。この区別は、健康情報を読むときにくり返し出てきます。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「食品添加物 よくある質問(消費者向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/qa_shohisya.html
    2. 内閣府食品安全委員会「添加物に関する質問に川西徹委員がお答えします」 https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/tenkabutsu_anzen.html 引用元:食品安全委員会「平成18年度食品安全確保総合調査 食品添加物の複合影響に関する情報収集調査 報告書」平成19年3月
    3. 河﨑裕美, 高木繁行, 大西有希子ほか. マーケットバスケット方式による食品添加物の一日摂取量の推定(2006-2008年度). 日本食品化学学会誌. 2011;18(3):150-162. doi:10.18891/jjfcs.18.3_150 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjfcs/18/3/18_KJ00007729478/_article/-char/ja/
    4. Regulation (EC) No 1333/2008 on food additives(EU 食品添加物規則)。EUで評価・承認された添加物に付される番号体系 https://eur-lex.europa.eu/eli/reg/2008/1333/oj/eng

    本記事は日本の制度と調査結果の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の食品・製品の推奨や否定を目的とするものでもありません。食物アレルギーや特定の成分で症状が出る場合は、この記事の一般的な整理は当てはまりません。

  • 症状リストが当てはまったとき、どう受け取るか

    症状リストが当てはまったとき、どう受け取るか

    過去7日間に症状がまったくなかった人は、10.6%でした。残りの9割は、何かしら症状を抱えています。経験した症状の数は、中央値で5個。

    だから「慢性的な疲労感」「集中力の低下」「肌荒れ」「眠気」を並べたリストは、ほとんどの人に当てはまります。当てはまったことは、原因が特定できたことを意味しません。

    その症状が、そもそもどれくらいありふれているか。それを知っておくと、リストの読み方が変わります。

    1週間に、5個

    ニュージーランドで行われた全国調査があります。無作為に選んだ一般の人1,000人に、過去7日間で46項目の症状のうちどれを経験したかを尋ねたものです1。

    一般の人が過去7日間に経験した症状は中央値5個。症状がまったくなかった人は10.6%
    対象は治療中の患者ではなく、無作為抽出した一般の人です。上位5つは、腰痛38%、疲労36%、頭痛35%、鼻づまり・鼻水34%、関節痛34%でした1。

    症状があること自体は、日常の状態です。健康な人にも症状はあります。

    だから、よくある症状を並べたリストは当たる

    実例で見ます。RESONA-LABの検査結果報告書には、欄ごとに症状の一覧が添えられています3。

    報告書に載っている症状の一覧
    欄 添えられている症状
    食品不耐性 慢性的な疲労感、集中力の低下、眠気、肌荒れ、消化不良・腹部の違和感
    体内蓄積 集中力の低下・思考力の鈍化、疲労感や倦怠感、ホルモンバランスの乱れ、炎症の悪化
    解毒機能 思考がぼんやりする、すっきりしない朝が増える、代謝の低下による体重増加、免疫力の低下による体調不良
    ビタミン・ミネラル不足 免疫機能の低下、疲れやすさや倦怠感、肌トラブル、集中力低下、睡眠障害、立ちくらみ、筋肉機能の低下

    並べて気づくのは、4つの欄が、ほとんど同じ症状を挙げていることです。疲労感、集中力の低下、肌。

    どれか1つの欄に当てはまったのではなく、4つ全部に当てはまります。上の調査が示しているとおり、これらは9割の人が週に何個か経験しているものだからです。

    だから、この一覧の使い道は「自分がどれに該当するか」を決めることではありません。該当の有無は、そこからは決まりません。この記事の後半で扱う記録のほうが、答えに近づきます。

    疲労・頭痛・肌荒れ・眠気・お腹の不調といった、ありふれた症状を並べれば、たいていの人に当てはまります。

    リストに書かれている症状が、その原因で起きることは実際にあります。ただ、当てはまったことは、原因がそれだと示していません。他の原因でも同じ症状は出るからです。

    症状リストが当てはまることと、原因がそれであることは別。多くの原因が同じ症状につながる
    疲労は、睡眠不足でも、貧血でも、うつでも、感染症でも、単に忙しい週でも起きます。リストは「この原因ならこの症状が出る」を示しますが、逆向きには読めません。

    これは、健康情報を読むときにくり返し出てくる構造です。「50%減った」という数字を見たら元の頻度を探すのと同じで、症状のリストにも「元の頻度」があります。誰にでもある症状を並べているのか、それとも珍しい症状を挙げているのか。そこで意味がまったく変わります。

    名前がつくと、症状の見え方が変わる

    もう一つあります。原因を告げられること自体が、その後の体調の受け取り方を変えます。

    古典的な観察があります。職域の検診で高血圧が見つかり、本人に告げられた人たちを追跡したところ、その後の欠勤日数が増えました2。血圧の値が変わったからではなく、「高血圧である」と知らされたことのあとに起きた変化です。

    症状リストを読んだあとも、似たことが起こります。それまで気に留めていなかった感覚に注意が向き、記憶の中から該当する場面が拾い上げられます。期待や不安が症状の側に働く経路は、実際に測られています。

    では、どう見分けるのか

    リストに当てはまったとき、確かめられることが3つあります。

    1. 誰にでもある症状か

    疲労、頭痛、肌荒れ、眠気。これらは一般の人の3割前後が、この1週間に経験しています。当てはまったことに情報量は多くありません。

    逆に、頻度の低い症状が並んでいるなら、当てはまったことの意味は大きくなります。

    2. 順番が合っているか

    その症状は、原因とされているものより後から始まったのか。前からあったのか。

    前からあったなら、その原因では説明がつきません。ここは記憶があいまいになりやすいところなので、思い出せる範囲でかまいません。「去年の健診のころはどうだったか」といった目印を使うと考えやすくなります。

    3. 変えたら、変わるか

    いちばん確かなのがこれです。原因とされるものを一つだけ変えて、症状がどうなるかを見ます。

    やめるだけでは足りません。戻したときに症状が返ってくるかまで見て、初めて対応関係が見えてきます。一度に一つだけ変える、やめて、戻して、比べる。手順は同じです。

    記録が効くのは、ここ

    この3つは、いずれも記録がないと確かめられません。

    いつから、どんなときに、どれくらいの頻度で。日付と時刻が入っていれば、順番も変化も後から追えます。検査が答えていない部分は、この記録でしか埋まりません。

    逆に、記録がないまま症状リストと照らし合わせると、当てはまったという印象だけが残ります。

    リストで自己判断しないほうがいい場合

    次のような症状は、原因を探す段階にありません。ありふれた症状のリストと同じ枠には入らないものです。

    リストで判断してはいけない症状
    症状
    体重が意図せず減っている
    発熱が続いている
    血便がある、便が黒い
    皮膚や白目が黄色い
    今まで経験したことがない突然の激しい頭痛
    症状が日ごとに悪化している

    当てはまったところから、始まる

    症状リストに当てはまることは、悪いことではありません。気づくきっかけになります。

    ただ、そこは結論ではなく出発点です。当てはまった時点で分かっているのは「その症状が自分にもある」ことまでで、原因はまだ分かっていません。

    元の頻度、順番、変えたときの変化。この3つを確かめると、リストの中から自分に関係のあるものだけが残ります。

    参考文献・参考資料

    1. Petrie KJ, Faasse K, Crichton F, Grey A. How common are symptoms? Evidence from a New Zealand national telephone survey. BMJ Open. 2014;4(6):e005374. doi:10.1136/bmjopen-2014-005374 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24928596/
    2. Haynes RB, Sackett DL, Taylor DW, Gibson ES, Johnson AL. Increased absenteeism from work after detection and labeling of hypertensive patients. New England Journal of Medicine. 1978;299(14):741-744. doi:10.1056/NEJM197810052991403 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/692548/
    3. RESONA-LAB 検査結果報告書(人用・試供品サンプル)の記載による。報告書の見本は公式サイトで公開されています https://resona-lab.com/humans

    本記事は症状の受け取り方を整理したものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査・製品の効果を示すものでもありません。

  • 限られた診察時間を、自分の体の話に使うために

    限られた診察時間を、自分の体の話に使うために

    最初の一言で、その日の診察時間の使われ方が変わります。

    限られた診察時間を、自分の体の話に使うためのものを4つ挙げます。いちばん抜けやすいのは、飲んでいるサプリメントです。

    「この検査で異常と言われました」から始めない

    この一文から入ると、話はその検査についての議論になります。医師はその検査を知らないかもしれず、知っていても、その妥当性をどう説明するかに時間が使われます。

    そして、いちばん大事なことが後回しになります。あなたにいま何が起きているかです。

    伝え方を変えるだけで、同じ情報が違う働きをします。

    同じことを伝えるときの、二つの言い方
    言い方
    時間が検査の話に使われる 「この検査で肝臓が悪いと言われました」
    自分の体の話に使える 「半年ほど疲れが抜けません。肝臓のことが気になっているのですが、確かめられる検査はありますか」

    持っていくのは、四つ

    1. 症状の記録

    いつから、どんなときに、どれくらいの頻度で。「なんとなくだるい」より「先月から、午後になると集中が続かない日が週に3日ほどある」のほうが、次に何を調べるかを一緒に考えやすくなります。記録で何が分かり、何が分からないのかも、知っておくと役に立ちます。

    2. これまでの経過

    健康診断の結果票を持っていきます。肝臓と腎臓については、そこに答えの出ている項目があります。過去数年分を並べられれば、値が動いているのか横ばいなのかも分かります。

    3. 試したこと

    何を、いつから、どれくらい続けて、どうだったか。効かなかったことも情報です。食品を外して戻した記録があれば、それも持っていきます。

    4. 飲んでいるもの、すべて

    ここが最も抜けやすい項目です。処方薬、市販薬、サプリメント、ハーブ、健康食品。全部です。

    サプリメントを、必ず申告する理由

    日本のがん専門施設で行われた調査があります。16のがんセンターと40の緩和ケア病棟の患者3,461人から回答を得たもので、補完代替医療を利用していた人のうち60.7%が医師に相談せずに使っていました。そして利用者の5.3%が有害反応を報告しています1。

    申告が必要なのは、飲み合わせが実際に問題になるからです。セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)については、厚生省が2000年に注意喚起を出しています。肝臓の薬物代謝酵素を誘導し、併用した薬の血中濃度を下げるためです2。

    「サプリだから薬ではない」という理由で伝えないと、医師は不完全な情報で判断することになります。

    「確かめられる検査はありますか」と聞く

    この聞き方が効くのは、検査の側が科ごとに分かれているからです。

    たとえば金属アレルギーなら、確かめるのはパッチテストで、行うのは皮膚科です。背中に貼って48時間後に剝がし、その1時間後、24〜48時間後、120時間後に判定する——判定まで7日かかります3。手順が決まっている検査です。

    食物アレルギーなら、確定は食物経口負荷試験。鉄なら、ヘモグロビンとフェリチン。検査はそれぞれ違う問いに答えているので、「何を確かめたいか」を先に言えば、検査の側から選んでもらえます。

    そして、食事を大きく制限している場合は、それも申告してください。金属制限食のように医療の中で行われる除去にも、「必ず医師の指導のもとで行う」「2ヶ月続けて無効なら中止する」という条件が置かれています3。理由は、制限の対象に必須の栄養素が含まれるからです。自己判断の除去も、同じ条件の中にあります。

    この聞き方には利点があります。判断を医師に委ねつつ、自分が何を気にしているかは正確に伝わるからです。

    そして、確かめられるものは実際にあります。ビタミンDや亜鉛には学会の判定指針があり、血液で確かめられます。鉛と水銀も測定できます。一方で、血液では蓄えが分からない栄養素もあります。

    「全部測ってください」と頼むのは、あまりうまくいきません。項目が増えるほど、健康な人でもどこかが基準から外れる確率は上がります。気になっている症状を一つ挙げて、そこから決めてもらうほうが早く進みます。

    どこに行くか

    特別な事情がなければ、かかりつけ医か一般内科から始めます。症状に応じて、必要な科へ紹介してもらう流れが確実です。

    次のような症状は、検査結果を読んでいる場合ではありません。結果より先に来ます。

    検査結果より先に来る症状
    症状
    体重が意図せず減っている
    発熱が続いている
    皮膚や白目が黄色い
    尿の量が減った、むくみが続いている
    血便がある、便が黒い
    症状が日ごとに悪化している

    結果は、話を始めるための材料

    どんな検査結果も、それ単体で答えを出すものではありません。値は、症状や経過と合わせて初めて意味を持ちます。検査ごとに答えている問いが違うのも、同じ理由です。

    診察で効くのは、どこかに書かれた判定より自分の側にある記録のほうです。症状の記録、健診の推移、試したこと、飲んでいるもの。この四つが揃っていれば、話は具体的なところから始められます。

    参考文献・参考資料

    1. Hyodo I, Amano N, Eguchi K, et al. Nationwide survey on complementary and alternative medicine in cancer patients in Japan. Journal of Clinical Oncology. 2005;23(12):2645-2654. doi:10.1200/JCO.2005.04.126 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15728227/
    2. 厚生省医薬安全局安全対策課・生活衛生局食品保健課「セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)と医薬品の相互作用について」平成12年5月10日 https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1205/h0510-1_15.html
    3. 足立厚子「金属アレルギーの対処法〜全身型金属アレルギーを中心に〜」アレルギー 2020;69(3):169-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/3/69_169/_pdf

    本記事は医療機関で相談するときの整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の検査・製品の効果を示すものでもありません。受診の要否と必要な検査は医師の判断によります。服用中の薬を自己判断で中止・変更しないでください。

  • 解毒機能のA〜Eを、どう読んで何をするか

    解毒機能のA〜Eを、どう読んで何をするか

    レポートには、A〜Eの意味が書いてあります。A 理想的な状態/B 軽い改善が必要/C 低下している状態/D 早急な改善が必要/E 緊急に改善が必要。解毒機能を、どれだけ早く整えたほうがいいかの段階です。

    そして評価は1つではありません。総合評価とは別に、腸・肝臓・腎臓それぞれにA〜Eが付きます。どこが足を引っ張っているかは、そちらで分かれます。

    健康診断にも同じA〜Eがありますが、答えている問いが違います。健診のDは「要精密検査・治療」。こちらのDは「解毒機能の改善が早急に必要」です。

    5段階が、何を刻んでいるか

    解毒機能の評価基準(レポート記載)
    記号 状態
    A 解毒機能が理想的な状態
    B 軽い改善が必要な状態
    C 解毒機能が低下している状態
    D 早急な改善が必要な状態
    E 緊急に改善が必要な状態

    刻まれているのは、解毒機能をどれだけ早く整えたほうがいいかです。病名ではありません。

    レポート自身が冒頭でこう記しています。「本検査は疾病の診断や治療を目的とするものではなく、健康管理の参考情報を提供するものです」。Dが付いていても、病気が見つかったということではありません。

    腸・肝臓・腎臓は、別々に付く

    総合評価のほかに、腸・肝臓・腎臓のそれぞれにA〜Eが付きます。3つが同じとは限りません。総合がDでも、内訳を見ると1つだけ低い、ということが起こります。

    レポートが記している、それぞれが低下したときに現れるもの
    低下すると
    腸 栄養吸収不良、免疫力低下、全身の炎症、脳機能や肌にまで影響する。全身健康の要とされています
    肝臓 解毒力が弱まり、疲労感、消化不良、皮膚トラブルが現れ、全身に毒素が蓄積する
    腎臓 老廃物や余分な水分の排出が滞り、むくみ、高血圧、貧血などの全身症状が現れる

    3つとも「出す」に関わりますが、担当している出口が違います。腎臓は尿として、腸は便として。そして肝臓は、尿から出せないものを胆汁に乗せて腸へ送り出す側です。

    だから順番があります。肝臓が送り出しても、腸の通過が滞っていれば出ていきません。3つの評価が違うときは、出口に近いほうから見ます。

    同じA〜Eでも、答えている問いが違う

    健康診断の結果にも、A〜Eの判定がついています。記号は同じですが、測っているものが違います。

    同じA〜Eが、それぞれ答えていること
    答えている問い Dの意味
    健康診断 いま、治療や精密検査が必要な異常があるか 要精密検査・治療1
    この検査 処理して外へ出す働きが、どの状態にあるか 早急な改善が必要な状態

    健診の判定区分は、A異常なし/B軽度異常/C要再検査・生活改善/D要精密検査・治療/E治療中です1。

    どちらも「早く手を打つほうがいい順」ですが、対象が違います。健診が並べているのは疾患の疑い。こちらが並べているのは解毒機能の状態です。検査ごとに答えている問いが違うのは、ここでも同じです。

    レポートが挙げている、整え方

    レポートは、解毒機能を整える方法として3つを挙げています。

    解毒機能を整える方法(レポート記載)と、詳しく書いた記事
    レポートの記述 詳しく
    不足栄養素を補う 検査で測るビタミン・ミネラルは、排出経路に関わる栄養素です
    不耐性食品を避けた食生活 全部やめてはいけません。1品目ずつ確かめます
    蓄積が多いモノを避ける 金属は入口が分かっています。大型の魚、古い水道管など

    3つとも、入ってくる側と、材料の側です。「解毒機能を直接鍛える」という項目は入っていません。

    処理そのものは、常時動いている工程です。止めたり再開したりするものではなく、材料が足りているかと、出口が詰まっていないかで変わります。

    記号から、最近の生活を振り返る

    レポートには「解毒機能不全による影響」として、思考がぼんやりする、すっきりしない朝が増える、代謝の低下による体重増加、免疫力の低下による体調不良、が挙げられています。

    読むと当てはまる感じがします。ただしありふれた症状を並べたリストは、たいていの人に当てはまります。当てはまったことは、原因がそれだと示していません。

    使い道があるのは、そちらではありません。総合評価の記号ではなく、腸・肝臓・腎臓の3つのうちどれが低いかを見ます。

    3つとも「出す」に関わりますが、担当している出口が違います。だから見る順番が決まります。

    低かった欄と、先に見る場所
    低かったのは 先に見る
    腸 便通の回数と形。基準は週3回未満です
    肝臓 お酒の量と、飲んでいる薬・サプリの数
    腎臓 水分の量と、むくみが出る時間帯

    3つが同じ記号のときは、出口に近いほうからです。肝臓が胆汁に出したものは、いったん腸に置かれます。そこが滞っていれば、上流を動かしても行き場がありません。

    今日できるのは、低かった欄を1つ選んで、その行の項目を1週間だけ記録することです。記号は月単位でしか動きませんが、便通も、酒量も、水分も、今日から数えられます。

    参考文献・参考資料

    1. 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」ほか、健診の判定区分(A〜E)の一般的な運用による https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001231392.pdf

    本記事は検査レポートの記載事項の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。検査は疾病の診断や治療を目的とするものではなく、健康管理の参考情報を提供するものです。特定の製品・サプリメントの効果を示すものでも、使用を勧めるものでもありません。

  • 金属の蓄積に、今日から手を打つ方法

    金属の蓄積に、今日から手を打つ方法

    パラジウム、銀、プラチナ、カドミウム、金、水銀、鉛、アルミニウム、ニッケル。検査に並ぶこの9つは、日本人の生活の中で体へ入ってくる入口の順に近い並びです。

    有名なのは鉛・水銀・カドミウムの3つですが、残る6つにも根拠があります。パラジウム・銀・プラチナ(白金)・金・アルミニウム・ニッケルは、日本皮膚科学会のガイドラインが、体に入って症状を起こす金属として名指ししている顔ぶれです5。入口は、歯科治療、装身具、眼鏡フレーム、化粧品、たばこ。

    そしていちばん使える事実は、こちらです。溜まった量は固定ではありません。厚生労働省は水銀について、「体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月」と書いています4。入口を変えれば、体内の量は動きます。

    なぜ、この9つなのか

    重金属というと、水俣病やイタイイタイ病の水銀・カドミウム、あるいは鉛が思い浮かびます。金やプラチナが並んでいると、場違いに見えます。

    ところが皮膚科の側から見ると、並びが変わります。日本皮膚科学会の『接触皮膚炎診療ガイドライン2020』は、金属が皮膚からだけでなく「生体内に吸収されることにより」全身に症状を起こす型を「全身型金属アレルギー」として扱い、原因になりうる金属を挙げています5。

    検査に並ぶ9つの金属と、学会ガイドラインが挙げている感作源5
    金属 ガイドラインが挙げている主な入口
    パラジウム 眼鏡フレーム、腕時計、電気製品。歯科金属
    銀 装身具、メッキ、貨幣、食器。歯科用
    プラチナ(白金) 貴金属装飾品、貴金属回収作業、メッキ。歯科用
    金 貴金属装飾品、貴金属回収作業、メッキ。歯科用
    水銀 化粧用クリーム(保存剤としてまれに)、消毒剤、乾電池。歯科用(アマルガム。2034年に世界的に廃止)
    アルミニウム 化粧品、歯磨き、ベーキングパウダー、医薬品、顔料。食品側は上限も摂取量調査もあり、2018年に基準ができた
    ニッケル バックル、腕時計バンド、イヤリング、ネックレス、メッキ、乾電池
    カドミウム (皮膚のガイドラインでは汚染金属として扱われる。入口は主食と、たばこ)
    鉛 (同上。入口は職業上の取り扱い、古い塗料、古い水道管)

    9つのうち7つが、日常の持ち物と口の中に入口を持っています。これが、金やプラチナが並んでいる理由です。

    ガイドラインははっきりこう書いています。「歯科金属はパラジウム、金、水銀、錫などを含有することが多く、時にニッケル、クロム、コバルトなども含む」5。日本の保険診療で広く使われてきた銀歯は金銀パラジウム合金で、ガイドラインの付表にも、この合金名がそのまま載っています5。

    ここで分かるのは、入口がどこにあるかだけです。症状が出るかどうかは別で、金属アレルギーの診断はパッチテストなどによって皮膚科で行われます。

    溜まった量は、固定ではない

    「蓄積」という言葉は、一度入ったら出ていかないような印象を与えます。実際は違います。

    厚生労働省は、魚介類の水銀についての注意事項の中で、同じ文を3回繰り返しています。「体内に取り込まれた水銀は代謝、排泄されます。その体内に取り込まれた量が半分にまで減少する期間は約2ヶ月です」4。

    だから同じ文書は、妊娠に気づくのが遅れた場合について、「妊娠に気づいた段階から水銀の摂取量をコントロールすることで一定の効果が期待される」と書いています4。

    ただし、この速さは物質によってまったく違います。カドミウムは腎皮質での半減期が20〜50年、鉛は血液で約28〜36日ですが骨に移った分はずっと長い。溜まる場所が違うからです。

    入口を変えれば、体内の量は動きます。これが、蓄積の欄を見たときにいちばん効く事実です。溜まっているかどうかを心配するより、どこから入っているかを1つ特定するほうが、実際に量を変えます。

    入口は、金属ごとに違う

    検査の説明資料は、蓄積の入口として次を挙げています。それぞれ、公的な基準や調査がどこまであるかが違います。

    挙げられている入口と、公的な基準・調査の有無
    入口 入るもの 公的な基準・調査
    大型の魚 メチル水銀 妊婦向けの摂食目安(魚種ごと・g単位)4
    水道水 鉛、トリハロメタン類 水質基準。鉛0.01mg/L以下、総トリハロメタン0.1mg/L以下6。浄水器側の表示も法定
    主食(米・小麦・大豆) カドミウム 耐容週間摂取量に対して平均35%
    歯科治療 パラジウム、銀、金、水銀 JIS規格で組成が決まっている
    装身具・眼鏡・腕時計 ニッケル、パラジウム 学会ガイドラインの感作源リスト5
    化粧品・日焼け止め 酸化チタン、酸化亜鉛(ナノ粒子) 塗る形では角層より奥へ入ったという報告が大半ではない。EUは25%まで安全としている
    たばこ カドミウム、ニッケル 1本に1.8〜2.8µg、20本で2〜4µgの吸入。吸入は肝臓を通らない
    缶 ビスフェノールA 溶出は業界自主基準で規格の1/250以下。ただし日本に耐容量はない
    プラスチック容器 フタル酸エステル類 2025年6月からポジティブリスト制度が完全施行。物質ごとにTDIもある
    プラスチック(微細) マイクロプラスチック 健康リスク評価そのものが未了
    撥水加工・フライパン PFAS 日本のTDIは20 ng/kg体重/日
    職業上の取り扱い 鉛ほか 鉛中毒予防規則による法定健康診断1

    なお鉛については、日本を含む多くの国で、環境や食品からの曝露がこの数十年で大きく減っています。CDCの報告も、環境と食事からの鉛曝露が過去30年で大幅に減少し、集団の血中鉛濃度も相応に下がったことを前提に書かれています2。

    並べると分かるのは、基準の細かさが入口によって全然違うことです。魚は魚種ごとにg単位で目安がある。PFASは数字が1つある。プラスチックは評価自体が終わっていません。

    鉛と水銀は、実際に医療で測れる

    労働衛生の分野では、鉛を扱う作業者に定期的な測定が義務づけられています。鉛中毒予防規則第53条に基づくもので、検査項目には血液中の鉛の量と、尿中のデルタアミノレブリン酸の量が含まれます1。体内に入った鉛の量を、数値で追う仕組みが動いています。

    水銀については、厚生労働省が「一般に体内の水銀濃度は毛髪で測定します」と書いています4。同時に、「妊婦であっても毛髪の水銀濃度等を測定することは必要ないと考えています」とも書いています。測る方法が確立していることと、全員が測る必要があることは別だ、という立場です4。

    そして同じ文書は、日本人の平均摂取量を示しています。1日あたり8.2µg。妊婦を対象とした耐容量の57%です4。うち88.1%(7.18µg/日)が魚介類からでした。

    「出す」より先に、入口を見る

    キレート剤は、金属と結合して尿から排出させる薬です。これは中毒と診断がついた場合の治療薬で、診断のないまま使われて死亡した例が報告されています2。

    汗については、尿に匹敵する排泄が報告されている一方で、測り方が確立していません。市販の「デトックス」をうたう食品やプログラムについては、そもそも有効性を評価した無作為化比較試験が行われていません3。効くかどうか以前に、確かめられていません。

    一方、体が常時行っている処理のほうは、経路が分かっています。医学の教科書は胆汁を「腎臓でろ過または排泄できない脂溶性物質の主要排泄経路」とし、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています。

    魚を、やめないでください

    水銀と聞いて最初に浮かぶのが魚です。ここで「では魚をやめよう」と進む前に、公的な注意事項が誰に向けて何を言っているかを見ておく価値があります。

    厚生労働省は、魚介類と水銀について注意事項を公表しています。ただしこれは妊婦に向けたものです。同じ文書に、こう書かれています。

    今回の注意事項は胎児の健康を保護するためのものです。子供や一般の方々については、通常食べる魚介類によって、水銀による健康への悪影響が懸念されるような状況ではありません。

    さらに同じ文書は、「魚介類を全く食べない集団では、高度不飽和脂肪酸が欠乏し、小児の知能低下や成人の心臓病のリスクが上昇することが報告されています」とも記しています4。

    魚を減らせば安全、とは言い切れない。公的な文書自身がそう書いています。

    妊娠中の方への目安

    妊娠している方、その可能性がある方については、魚種ごとに「1回約80gとして週に何回まで」という目安が示されています。キンメダイやメカジキは週1回まで、キハダ・ビンナガ・ツナ缶は通常どおりで差し支えない、といった区分です4。

    そして注意事項自体が、「本注意事項は、妊婦の方々に水銀濃度が高い魚介類を食べないように要請するものではありません」と書いています4。減らすのは特定の魚種を食べる回数で、魚をやめることではありません。

    添加物の欄が該当した場合

    体内蓄積の欄には、重金属とは別に添加物の項目があります。こちらには、金属とは違う点が二つあります。

    ひとつは、体内の添加物の量を測る一般的な臨床検査がないこと。鉛や水銀のように、入口を1つに絞れるという構造にはなっていません。

    もうひとつは、摂取量の側が継続して調べられていることです。日本では添加物ごとに一日摂取許容量が設定され、実際の摂取量も推定されています。2006〜2008年度の調査では、許容量に対する割合が最も高かったもので17.2%でした。

    できるのは、加工食品の頻度を記録することです。ただしそれを変えると、添加物以外(食塩・脂質・食物繊維)も同時に動きます。何が効いたのかを見るには、そこも踏まえる必要があります。

    確かめたいときは、何を伝えるか

    気になる曝露に心当たりがある場合は、確かめる価値があります。たとえば、鉛やその化合物を扱う仕事をしている。古い建物の改修に関わっている。輸入品の民間薬や食器を日常的に使っている。

    医療機関で伝えるのは、「検査で異常と言われた」ではなく「この曝露に心当たりがあります」のほうです。曝露の内容と期間が分かれば、必要な検査を選んでもらえます。

    原因不明の腹痛、手足のしびれ、貧血、集中力の持続的な低下。これらが続いているなら、金属の話とは別の枠です。入口を減らしても動きません。

    入口を1つ決めて、2ヶ月待つ

    結果には「蓄積による体の影響」として、集中力の低下、疲労感、ホルモンバランスの乱れといった症状が添えられています。読むと当てはまりますが、これらはもともと、一般の人の3割前後が今週経験している症状です。当てはまったことは、原因の特定にはなりません。

    使えるのは、そちらではありません。上の入口の表から、自分に当てはまるものを1つ選ぶほうです。

    口の中に金属が入っているか。眼鏡フレームや腕時計が肌に当たり続けているか。たばこを吸うか。缶飲料を毎日飲むか。大型の魚を週に何回食べているか。どれも、思い出すのではなく、今日その場で確認できます。

    そして選んだ1つを変えたら、2ヶ月です。厚労省が水銀について書いている半減期がその長さで、そのあいだ入口を変えていれば、体内の量は半分に近づく側にあります4。1週間で結果を見ようとすると、何も起きていないように見えます。

    出す側についても、経路は分かっています。医学の教科書は胆汁を「腎臓で排泄できない物質の主要排泄経路」とし、そこへ出されるものに重金属を名指しで挙げています。そして腸が詰まっていれば、胆汁に出されたものは行き場がありません。入口を1つ閉じることと、出口を動かすことは、同時にできます。

    そして、閉じるのでも閉じないのでもなく、減らせる入口もあります。乾燥ヒジキの無機ヒ素は、ゆでこぼしで9割減ります。鉄・カルシウム・食物繊維は7割以上残ります。食べ続けながら減らせます。

    なお日本人が許容量にいちばん近づいている金属は、主食から入るカドミウムです。平均で耐容週間摂取量の35%、95パーセンタイルで67%でした。これは主食なので、入口を閉じる対象にはなりません。閉じられる入口と、閉じられない入口を分けることが、最初の作業です。

    入口ごとにどこまで数字があるかは、入ってくるものと、出す力に一覧で並べています。

    そのうえで、測る前に始める「排出」には、効果が確かめられていないものと、診断なしに使えば命に関わるものが混ざっています。結果を受け取ったあとに確かめる項目のなかで、ここがいちばん実害に近い場所です。

    参考文献・参考資料

    1. 鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)第53条(健康診断) https://laws.e-gov.go.jp/law/347M50002000037/
    2. Centers for Disease Control and Prevention. Deaths associated with hypocalcemia from chelation therapy–Texas, Pennsylvania, and Oregon, 2003-2005. MMWR Morbidity and Mortality Weekly Report. 2006;55(8):204-207. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16511441/
    3. Klein AV, Kiat H. Detox diets for toxin elimination and weight management: a critical review of the evidence. Journal of Human Nutrition and Dietetics. 2015;28(6):675-686. doi:10.1111/jhn.12286 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25522674/
    4. 日本皮膚科学会接触皮膚炎診療ガイドライン改定委員会「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌 2020;130(4):523-567.(全身型金属アレルギー、表12「種々の金属による病型・症状とその感作源」、付表5「アレルゲン金属と使用可能な歯科金属との対応表」) https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/130_523contact_dermatitis2020.pdf
    5. 水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)。鉛及びその化合物 0.01mg/L以下、総トリハロメタン 0.1mg/L以下 https://laws.e-gov.go.jp/law/415M60000100101/
    6. 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品部会「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」平成17年11月2日(平成22年6月1日改訂) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf パンフレット:これからママになるあなたへ

    本記事は公的資料と研究状況の整理であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。特定の製品・サプリメント・治療の効果を示すものでも、実施を勧めるものでもありません。キレート剤を含む医薬品は、医師の診断と処方のもとで使用されるものです。自己判断で入手・使用しないでください。